JTB CIO/CISO 黒田恭司さん

JTBといえば旅行業。そのような印象をもつ人も多いと思うが、2022年に企業ブランドの刷新を図り、「交流創造事業」としてリブランディングしている。

顧客・事業パートナーに新しい価値を提供するため、JTB内においてもビジネスの変革は避けて通れない。その変革をリードする常務執行役員 CIO/CISO 黒田恭司さんに、仕事のこだわりを伺った。

黒田さんはどのような信念をもって、新しいJTBのITチームを率いているのだろうか。

JTB CIO/CISO 黒田恭司さん

黒田恭司さん プロフィール
1992年日本アイ・ビー・エム入社、ITエンジニアとして官公庁の顧客を担当し、さまざまな大規模プロジェクトでグループリーダー・プロジェクトマネージャー、統括プロジェクトマネージャーを歴任。デリバリー品質マネジメント・コロナ禍の働き方変革リード・リスキリングのリーダーやサービス部門のビジネス責任者などを歴任する。2023年から現職。外部活動として、一般社団法人 日本情報システムユーザー協会(JUAS)理事も務める。趣味はゴルフと釣り。

Rule1. PMのProfessionとして:チームで小さな成功体験を共有する

JTB CIO/CISO 黒田恭司さん

プロジェクトの大小にかかわらず、チームメンバーのパフォーマンスを上げて成功に導いていくのが、プロジェクトマネージャー(PM)の役割。

当たり前のことですが、チームメンバーと協力することは非常に大事です。チーム全体の成功をメンバーでシェアすることで、モチベーションが上がったり、うまくエンゲージしたりします。

もちろん失敗やトラブルもあるんですけれど、それを越えながら小さな成功をつむぐ経験をメンバーと共有し、メンバー同士でリスペクトしあえる環境をつくらないといけませんね。

Rule2. トップとして、自分の行動が他人に与える影響を考える

JTB CIO/CISO 黒田恭司さん

自分がプロジェクトのトップであることを考えると、自分の発言・行動が他者に影響を与えることを頭に入れて行動しなければいけません。これは仕事の側面だけでなく、プライベートの側面でも同様です。みんなにリスペクトされるような行動を心がけないといけません。

リーダーシップをどう言葉として表現するか、態度として見せるか常に意識して行動するよう心がけています。それぞれの担当者の視点で、どういうインプットをもとに、なぜそう判断したのかをしっかり聞いて、自分の視点からもその判断に対する考察を含めて、自分の答えの理由をできるだけ分かりやすく伝えたいと思っています。

問題ある行動や課題について、メンバーに気付きを与えられるようなコミュニケーションを意識しています。

Rule3. 第三者の視点をもつ

プロジェクトマネージャーの研修で私がよく話すことの一つとして、さまざまな場面での交渉事がうまくいかないケースが必ずといっていいほどあると思うんです。

プロジェクトマネージャーであれば、自分のチームメンバーも含めた多くのステークホルダーとの交渉事は日常茶飯事ですが、私自身の経験からもうまくいかないこともたくさんありました。そうしたときには、私は必ず第三者の視点を持ち込むようにします。相手(例えばお客様やユーザー)の視点と自分の立場での視点の両方を俯瞰的にみるようにすることです。

たとえば、第三者(他者や世の中の人)に「これはリーズナブルですか?」と自問して、第三者の視点をもつことができれば、問題の解決につながることも多く、最終的にお客さまにご納得いただく道筋にもなります。

JTB CIO/CISO 黒田恭司さん

エンジニアの中には没頭没入しがちなタイプもいるとは思います。広い目で見るのが苦手なのは、仕事の大半が「自分だけでモノをつくっている」時間になっているからではないでしょうか。

ただ、上位職になってくると、指導する立場になりますよね。プロジェクトマネージャーや上位のアーキテクトになってくると多くの場面で説明責任が問われ、一介のエンジニアの視点だけではうまく表現できないことも出てきます。

第三者の視点をもつには、自分で「なぜこのプログラムをつくったのか、どういう工夫をして、それはどんな効果をもたらすのか」を日頃から考えるのがよいのではないでしょうか。

なぜこうしたのか? ということを説明できるようになればいいと思うんですけれど、それは周辺の環境によって鍛えられていく部分も多いと思います。

だから自分のチームでは、自身の仕事について説明するような機会を提供します。「今回はどのような工夫をしましたか?」「今までつくってきたものとは、何が違いますか?」などを整理し、人に伝える機会があると、変わってくるのではないでしょうか。その上で、本人が自ら考えられるようになるといいですね。

Rule4. リスクマネージメントのバランス感覚と柔軟性を備える

JTB CIO/CISO 黒田恭司さん

プロジェクトを回していくとき、スタートしてから終わるまでリスクマネージメントはずっと続くんです。それはプロジェクトが成功する重要なマネージメント項目であり、リスクについては影響度や発生確率などをレーティングして定量化します。

普段からセルフマネージメントとして、自分の周りに何か起こったときに大丈夫かな? と思ったり、情報が十分でない場面で判断しなければならないときに何を重要視するか、などを意識したりすることで、リスクマネージメントのバランス感覚を鍛えるようにしています。

すべてのリスクを事前に取り除ければいいですが、実際はさまざまな制約からそんなことはできません。ときには自分の経験と勘で問題を先送りにすることだってバランス感覚だと思うんです。最終的に結果に結び付けばいいわけですからね。たくさんの経験、実践を積んで、その人なりのプロジェクトマネージャーとしての価値観も踏まえたバランスってものが形成されるように思うんです。

また、リスクを判断する上で、周囲がどう感じているかをキャッチするのも、バランス感覚の養い方のコツです。すべてがデジタルに表現されていればいいですが、それを補ううえで、関係者が本当にどう思っているのかを把握することはとても重要で、事実を引き出す、本音のコミュニケーションが大切ですね。人によっては言葉の裏側にあるものが読み取れているか。難しいですが、愚直に理解できるまで聞いてみたり、壁打ちしてみたりするのがいいと思います。

Rule5. リーダーシップとデリゲーション(権限委譲)を考える

リーダーシップは本当に大切で、「これがないとどんな仕事もできないよ」と教えられてきたんです。1~4までに、リーダーシップにも関係する私なりの大切なことについてお伝えしました。

それを踏まえて、組織として成長するには、次のリーダーを育成しなければいけませんよね。そこで出てくるのが権限委譲。デリゲーションです。権限委譲といっても単に仕事を押しつけるわけではありません(笑)。育成の観点で、デリゲーションは大変重要なアクションであり、適切なコーチングをもって実現できると良い成果に結びつくと思っています。

リーダーとして行動する場合にはコミットメントや前向きな発言・考え方を示すことが大切になります。これは、自分が教えてもらってきたことでもありますし、これまでの経験の中で重要性を感じてきた要素でもあります。しかし、次のリーダーを育てるにあたっては、リーダーの経験を体験してもらう必要があり、権限を持って行動してもらわなければなりません。

定期的に次のリーダーを誰に見定め、どのように育成しようかということを考えています。

Rule6. ときに厳しく、ときに楽しく仕事をする

JTB CIO/CISO 黒田恭司さん

PMうんぬんは関係なく、仕事というものはときに厳しく、ときに楽しいものだと思うんですね。厳しいばかりでは息切れしてしまいますし、楽しいばかりの仕事もほとんどありません。

だからこそ、厳しくもあり、楽しくもありという状況を楽しめることが大切だと思います。僕自身がそれをできないと、メンバーも周囲の人も苦しんでしまうと思うんですよ。

この歳になっても学ぶべきことは尽きません。知に対する欲求、自分を常にアップデートすることの優先順位を保ちつつ、今日より明日、明日よりも明後日自分が成長していたいと思いますし、そのためにはあえて難しいこと、困難なことにも挑戦したいですね。出来そうなことよりも、出来なさそうなことを、あえて選択したいなと。口で言うほど簡単じゃないですけどね。

Rule7. 新しい出会いを求めて、人と交流する

自分たちと同じ領域の人だけでずっと仕事をしていると、学ぶことが限定的になってくる傾向があります。新しいものを得られにくくなるんですよね。内向的になったり、組織が内向きになったりします。

社内であっても自分の領域とまったく違う領域の人と交流すること。私のみならずチームの方にはそういった行動を普段から心がけるよう言っています。同じ領域でも社内でなく社外の人との交流が刺激になったり、新しい考え方やアイデアが浮かぶきっかけになったりすることも多いと思います。

(取材/文:奥野大児、撮影:つるたま

―<presented by paiza>

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