最高のものをつくるために、妥協のない道を選ぶ。かつて憧れたスティーブ・ジョブズのように、株式会社NAGARA 代表取締役CEOの岡田一輝さんは、組織をさらなる高みへ導くための決断を下します。創業時から学生メンバーたちとともに歩んできたチームを、新たに採用した正社員中心の組織へと変革させていく。それは、未来を見据えた選択でした。
こうした痛みを乗り越え、プロフェッショナルな組織へと脱皮した新生NAGARA。彼らの今の武器は、少数精鋭で効率的な開発体制を構築し、驚異的なスピードで開発を回す確固たる思想です。
2032年には時価総額1,500億円を目指し、現在1,000以上の介護関連ソフトが存在するなか、1つのプラットフォームで完結できる未来を作る。そんな大きな夢に向かって、彼らの本気の勝負が始まります。

目次
起業直後、50社の投資家と対峙した3か月。社会的認知を資本へ変える
──DCONでの優勝をされたあと、会社としての成長スピードはさらに加速していったように見えます。
岡田:DCONの優勝をきっかけに、社会的な認知が一気に高まり、NHKにも取り上げていただいたりしました。何より、投資家の方々と出会える機会が増えたのがありがたかったですね。私たちのビジネスモデルは、最初にまとまった資金調達が必要だったのですが、2025年5月から7月の3か月間で50社以上の投資家にお会いして、パートナーを選ぶことができました。
──資金調達と並行して、引き続き『ながらかいご』の開発も進めていたかと思いますが、その過程はいかがでしたか。
岡田:当初は、開発チームに「こんな感じで」と伝えたものをぱっと作ってもらうという、非常にアジャイルな開発をしていて、要件定義も詰め切れていませんでした。それを現場へ持っていって、介護士の方々から「画面がタッチしづらい」「介護士は高齢の人も多いからもっと簡単にしてほしい」といったフィードバックをいただき、とにかく致命的な部分から直して、また見てもらうというラリーを繰り返していました。

転換期を迎え、組織を屈強に。創業者たちの苦渋の決断
──さらに起業をされて、2025年10月に資金調達が完了してからは、組織が大きく変化していったそうですが、どのような変化があったのでしょうか。
岡田:正式に起業したのは2025年7月ですが、資金調達が完了した10月が、組織としての大きな転換期になりました。当時は金沢大学などのメンバーも加わって、総勢20名前後の学生たちが関わってくれていました。
ただ、先ほどもお話ししたように、アジャイルすぎる開発手法で詰めが甘かった部分も多く、プロダクトを有償化できるレベルに引き上げるためのリソースが不足していたんです。そこで10月からは資金を使い、業務委託として手伝ってくれる人を増やし、開発組織の基盤を整えていきました。
──組織を変えていくにあたって、葛藤などはありませんでしたか。
岡田:2025年の12月から翌年2月にかけてもまた大きな変化があって、介護業界や開発実務の経験がある正社員を採用したんです。それまでは、業務委託などであくまでアドバイザーとして手伝ってもらっていた経験豊富なプロフェッショナルに、いよいよ実動部隊として入ってもらうことになりました。
その過程で、逆に創業期から副業として手伝ってくれていた学生メンバーたちには、採用した正社員中心の組織へと切り替えていくことを受け入れてもらいました。非常に心苦しくはありましたが、組織を大きく成長させるためには、避けては通れない判断だったとも思っています。こうした変革を経て、組織をより屈強にすることができました。

野崎:岡田は、物事をどこまでも考え尽くし、その選択の先に何があるのか、何を準備すべきなのかを緻密に組み立てて動ける人間です。私はずっと自分の感覚で生きてきた人間だったので、こうした変革の中で彼のすごさを実感しました。
少数精鋭で効率的な開発チームを構築。1人で回す驚異のスクラム体制
──組織の変革を経て、現在のNAGARAの開発体制はどのようになっているのでしょうか。
岡田:学生時代のとにかくスピード重視でつくっていたアジャイル開発から、現在は少数精鋭チームによるスクラム開発へ移行しました。優先順位の高いタスクから確実に手をつけるというアジャイルのよさを残しつつ、開発の変更履歴はドキュメントとして管理できる堅牢な体制ができています。ちなみに現在、コードを書いているメンバーは事実上1人しかいないんですよ。
──今までたくさんのメンバーがいた開発チームを1人体制に変更されて、開発スピードは落ちていないのでしょうか?
岡田:そうですね。以前と遜色なく、むしろそれ以上のスピードで実装が進んでいます。なぜそれが可能かというと、優秀な開発部長のもとで、生成AIのClaudeが開発をしているからです。
人間が「何をつくりたいのか」「どのような設計にすべきか」といった思想と判断に責任を持った上で、AIに的確な指示を出す。これにより、AIという加速器を限界まで回しているような状態となっています。
──開発業務でもAIを駆使する時代がすでに来ているかと思いますが、ITエンジニアに求められる能力や素養は、今後どのように変化していくと思われますか。

酒井:AIという強力なツールが登場したからこそ、逆に「何をつくりたいか」を人間側が正しくコントロールする能力が問われていると感じます。技術の裏側にどのような仕組みがあるのかを知っていなければ、AIに正しい指示を出すことはできません。何より、AIが生成した成果物でも、バグやトラブルなどの責任を負うのは人間です。AIというツールに使われるのではなく、ツールを従えて責任を持てる視点こそが、これからは不可欠になるかと思います。
野崎:世間では「AIの進化により、仕様書さえあればエンジニアはいらなくなる」というエンジニア不要論もささやかれていますが、そんなことはないと思います。長期的な保守や運用ができる余地を残した設計や、致命的な手戻りを防ぐための思想などは、人間にしかできません。
また、ソフトウェアを利用するのはどこまでいっても人間です。人間が感じる面倒くささや、現場の痛みを解決するには、人に対する深い理解と、プロダクトに関する思想が必要です。「自分はこのような思想のソフトで世界をよくしたい」と考えられるような人がよいのではないかと思います。
岡田:必要なのは「愛」だと思いますね。プロダクトや技術を愛せる人が、一番強いかと思います。単純な技術力に関しては、今やAIの力を借りればすぐにレベルアップできるでしょう。だからこそ、今後は「AIを使ってさらにおもしろいことがしたい、そのためには自分ももっと学ばなければ」と素直かつ謙虚に熱狂できる人と一緒に働きたいですね。そのような素質を持ったエンジニアの方は積極的に採用したいと思っていますので、ぜひ今すぐNAGARAの門を叩いてほしいです!(笑)
時価総額1,500億円と1つのソフトで完結できる未来を目指す
──最後に、NAGARAが未来に見据えている今後の展望と、具体的なマイルストーンについて教えてください。

岡田:直近の目標としては、2026年末までに全国100施設以上への『ながらかいご』の導入を目指しています。組織としては、ここから正社員の営業メンバーを4名、開発メンバーを2名採用する計画を立てているんです。金額的な話をすると、2032年には時価総1,500億円を超えるユニコーン企業になれるよう計画しています。
これを実現するために、2027年からは、セカンドプロダクトの設計に着手する予定です。『ながらかいご』は、あくまで介護施設の介護士という特定のペルソナに向けた課題解決ソリューションです。ただ、この1年間どっぷりと介護業界に浸かったことで、我々も業界全体の理解が深まりました。次は介護施設だけでなく、デイサービスや訪問介護、看護師やケアマネージャーなども含めた、介護に関わるすべての人たちの課題を地続きで一挙に解決するようなシステムをつくり上げたいと考えています。
現在、日本の介護業界には、1,000を超える介護関連ソフトが存在しています。そのなかで、私たちは1つのプラットフォームだけで完結できる未来を目指しているんです。この夢を実現するために、日本一の成長速度で、圧倒的なユーザー体験を届け続けたいですね。
