食品と医薬品を事業の柱とする明治ホールディングス株式会社(以下、明治HD)。グループ全体でビジネス改革に取り組む同社にとって、一つの要となっているのが自社のDX組織です。エンジニアの採用にも力を入れ、SIerやベンダーに丸投げせず自走できる組織作りにも注力しています。
明治グループのDXを推進する執行役員・グループDX戦略部管掌の古賀 猛文氏に、エンジニアリング組織の構成やマネージメントで注力している点を伺いました。
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古賀 猛文氏 プロフィール
1987年に明治乳業株式会社に入社。2011年に明治に事業再編された後、2017年に情報システム部長に就任。その後、DXを含めた業務改革を推進。とくに、2019年7月から2022年4月まで、会計関連の証憑を完全ペーパーレス化するプロジェクトの責任者として、プロセスの改善をリード。2022年4月にはデジタル推進本部長、2023年6月には明治の執行役員、2024年4月には明治HDの執行役員およびグループDX戦略部門管掌。
目次
グループDX戦略部が100人規模の大所帯である理由
――事業会社で100人規模のDX組織は非常に大きい印象を受けます。どのような役割の方々が所属しているのでしょうか?
古賀:当部門には、セキュリティ、インフラ、社内リテラシー向上の推進、デジタルマーケティング関連のアプリ開発、グローバル対応、商品取り扱い店舗の検索システム開発など、11のグループが存在します。
食品事業会社である「株式会社 明治」(以下、明治)では、2023年に「商品取扱店舗検索システム」を開発しました。このシステムでは、キーワードやカテゴリー、ブランド、エリアから、明治の商品が購入できる店舗を地図付きで検索できます。
少ない人員でお客さま対応の速度や品質を向上させることを目的に開発したのですが、2024年9月末時点で導入から1年で94万アクセスを達成しました。それまで電話やメールで受けていたお問い合わせ件数の150倍以上の案内が可能となり、潜在顧客を当システムによって顕在化し、購入機会を拡大できました。
食品業界で提供される類似システムの中でも、当社の「店舗サーチ」はトップクラスだと考えています。
このシステムは、お客さまサポートスタッフ及び現地営業担当者の負担軽減を目指す「守りのDX」として導入しましたが、結果として新たな顧客接点を生む「攻めのDX」にもなりました。
また、少し前のことですが、明治では、牛乳販売店舗向けに提供している発注システムを独自の専用端末からWebベースに移行したんです。これにより、スマートフォンなどからも発注が可能となり、利便性が向上しました。このようなシステムも当部門が担っています。
マネージメントの信念は「技術力を伸ばす」「パワハラを許さない」

――グループDX戦略部のマネージメントをする際の信念を教えてください。
古賀:大きく2つあります。まず一つ目は、技術力を身に付けてもらいたい。とくに、特定のジャンルにおいて技術を極めてもらいたいということです。
私たちはユーザ企業です。これは若手スタッフにとって将来的な話になりますが、私や水口さん(グループDX戦略部長 水口 貴英氏)のような立場になれば、さまざまな技術テーマについて決裁を行わなければなりません。
このようなとき、明治グループの業務を知っていることは前提として、技術的な内容が分かっていなければ適切な決断が下せません。だからといって、私のために部下にIT関連の専門用語を翻訳させるのでは悪いなあと思います。
私自身もVisual Basicを使って自分の作業効率を上げるためのツールを作成しています。今ではPythonも勉強中ですし、AWS認定クラウドプラクティショナーの勉強もしています。ただ、実際に取得すると若手に余計なプレッシャーを与えてしまうかもしれないので、資格を取るかどうかは検討中ですが(笑)。
――もう一つの信念は何でしょうか。
古賀:もう一つはハラスメントについてです。とくに、パワーハラスメント(パワハラ)に関しては、絶対に許さないと伝えています。

――パワハラを強調されるのはなぜですか。
古賀:セクハラやマタハラなど他のハラスメントは、絶対にしてはいけないという線引きが比較的明確です。一方、パワハラは「部下のため」などと、それらしい理由付けがされることがあり、適切な指導との境界があいまいな一面があります。
また、指導を受ける側の視点で見ても、業務上必要かつ適正な範囲で行われた指示や指導に対してパワハラと感じてしまうケースがあります。マネージメントをする立場としては、慎重に対応すべき難しい課題だと考えています。
他のハラスメントを軽視しているわけでは決してありません。しかし、部下のためという理由で行き過ぎた指導をしてはいけない。パワハラの難しさを知り、慎重に行動してほしいのです。
――スタッフの目線に立ったマネージメントを意識しているのですね。
古賀:上司は、部下の邪魔をしてはいけません。たとえば、私のところにSIerから売り込みがあり、それをなんとなく部下に伝えてしまうと、部下はまじめに調査してレポートを作成しなければならなくなります。そうした無駄な時間を部下に使わせたくないのです。
明治グループのデジタル人財向け制度「MDM」

――明治グループには、デジタル人財向けの社内制度・MDM(Meiji Digital Mind)があるそうですね。
古賀:会社の持続的成長を目指した資格制度で、2023年度より明治で開始しました。ゴールド、シルバー、ブロンズの3段階に分け、社内資格として人事データベースに記録している制度です。
ゴールドは「ビジネス寄り」と「データ解析寄り」の2種類があり、それぞれ2026年度までに100名の取得を目標としています。また、シルバーについては2026年度までに500名が取得することを目指しています。
制度の初期に資格を取得した人の知識が陳腐化してしまう可能性もあるため、内容は随時ブラッシュアップしていく方針です。
――デジタル人財に関する内部資格制度は、非IT系の人財を対象にしている印象がありますが、MDMはいかがでしょうか。
古賀:たしかに非IT系の人財を意識しています。臨時雇用やパートスタッフも受験可能ですが、グループDX戦略部のメンバーからも取得者が出ています。また、2024年度下期からはいくつかの教育プログラムをグループ会社にも展開しています。
――そのあたりは、DX部門が明治HDに移管したことで実現可能になった施策と言えますね。
古賀:そうですね。事業ごとに求められるスキルは異なる可能性がありますが、すでにMeiji Seika ファルマ株式会社やKMバイオロジクス株式会社(ともに明治グループの医薬品事業会社)でも受験が始まっています。
グループ全体でできることは、できるだけ一体となって進めていきたいという考えです。これこそが、DX部門を明治HDに移管した意味の一つだと思っています。
明治が求めるのは幅広い技術領域のエンジニア

――大きな組織があり、さまざまな方が活躍していることがわかりました。とくにこれから、「こういうITエンジニアなら明治で活躍できるだろう」といった技術やスキルの領域について教えてください。
古賀:ホストコンピュータのシステムをAWSに移管できたものの、まだAWSにリプレースできる社内システムはいくつもあります。ミドルウェアやデータベースをクラウドに移行するだけでコストが抑えられるケースもあります。
DBエンジニアをはじめ、AWSの技術や、他システムをAWSに移管した経験のあるエンジニアは活躍する可能性が高いと思います。
昔はアプリケーション側で制御していましたが、現在ではインフラ側に移行してきた技術が多くあります。たとえば、アクセス制限については、以前はユーザーマスタを作成しアプリケーションで制限していましたが、今はActive Directory(AD)がその役割を担っています。これはインフラ寄りの作業と言えます。
システムやサービスの役割において、インフラの仕事はますます増えています。
一方で、アプリケーションを開発できるエンジニアも以前と変わらず必要です。社内には100を超えるシステムが稼働しており、それらのほとんどが連携しています。アプリ開発の仕事も非常に多いのです。
まとめると、「ITに関連する技術を持つ方なら、どなたでもウェルカム」です(笑)。
「やりたい」を「できる」に変えられるエンジニアを求めて

――明治グループで活躍したいと考えているエンジニアに向けて、メッセージをお願いいたします。
古賀:明治らしい価値、すなわち健康価値の実現が会社として掲げるメッセージの一つですが、これをDXでさらに良くしていくことが、私たちDX部門のミッションです。
その実現に向けては、まだ道半ばと感じています。明治の企業理念に共感してくださるITエンジニアの方がいらっしゃれば、ぜひ一緒に取り組んでいきたいとお伝えしたいです。
私たちは「デジタルで『やりたい』を『できる』に変える」価値観のもと活動している集団です。この価値観にも共感し、同じ目標に向かって歩んでいただける方を求めています。
また、新しいスキルを貪欲に学び、こちらが伝えることを一度しっかり受け止めた上で、積極的にチャレンジしていただける人材を歓迎します。
DX・業務改革は一人では絶対に成し遂げられません。周囲をうまく巻き込み、協力を得ながら成果を上げられる方にぜひ来ていただきたいですね。
