全国に21,000以上の店舗を展開する、私たちの生活に馴染み深いコンビニエンスストアのセブン-イレブン。2023年11月には創業50周年を迎え、1日あたりの総来客数は概算で約2,000万人にもおよぶ。国内のセブン-イレブンを直営およびフランチャイズ方式で運営している会社が、株式会社セブン-イレブン・ジャパンだ(以下、SEJ)。
株式会社セブン‐イレブン・ジャパン 執行役員 システム本部長 兼 株式会社セブン&アイ・ホールディングス グループDX副本部長の西村さんに、SEJの組織について話を聞いた。
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西村 出 さん プロフィール
株式会社セブン‐イレブン・ジャパン 執行役員 システム本部長 兼 株式会社セブン&アイ・ホールディングス グループDX副本部長。大手企業グループにおいて20年以上にわたり金融、不動産等業務パッケージ企画、エネルギー分野の新規クラウド事業立上げ、大規模合併会社システム統合コーディネート等幅広いIT分野での実績を経て14年よりセブン&アイ・ホールディングスのシステム企画部(当時)に出向。
19年4月にSEJへ転職し、20年9月システム本部長、21年3月執行役員就任、現在に至る。セブン‐イレブンでは、業界先駆けとなるインバウンドシステム企画、SFDC上での本部業務のシステム化推進、さらにはクラウドを活用した災害時の状況把握システム『セブンVIEW』構築、次世代デジタル基盤『セブンセントラル』構築などをリード。その取り組みは、民間企業のDXの先進的事例として多くのメディアで取り上げられている。 2021年にDXの取り組みが評価され、全世界企業から選ばれる第1回GoogleCustomerAwardを受賞。
目次
セブン-イレブン・ジャパンのDXを推進するシステム本部の取り組み

SEJにおいて、あらゆるシステムをつくっているシステム本部は、社内のDX全体を担っている。システム本部に所属する社員は約200名の組織規模で、それに加えて外部の協力会社が数多く関わっている。さまざまなシステムをつくるなかで、現在注力しているものを西村さんに聞いた。
「次世代の店舗システムやセブン-イレブンアプリ、それらを支える各種マスターの再構築に力を入れています。クラウドをフル活用し、再構築を進めているところです。店舗システムの再構築は、構想から3〜4年かけて進めています。これにより、さまざまな利便性が高まったり、データ利活用が進んだりします」
SEJでは、デジタルデータ基盤となる『セブンセントラル』をGoogle Cloud上に構築している。21,000を超える店舗のPOSデータをリアルタイムに分析できると同時に、堅牢なセキュリティを求め、Google Cloudが最適と判断した。
もともとITを積極的に導入してきたが、セブンセントラルによって、さらなるデータ活用が可能になった。SEJにおいて、DXへ積極的に取り組んでいくことを示す象徴的なシステムだ。セブンセントラルは、リアルタイムに情報を収集・分析し、活用している。
「セブンセントラルでは、21,000を超える店舗のPOSデータを収集し、リアルタイムに1秒間で何千ものトランザクションを処理しています。さらに、それと付随するデータを1分台でサービス側に渡しています」
こう西村さんが語るように多くのデータを扱っており、1日に約3テラバイトものボリュームを平均的に処理しているという。
地域を支える社会インフラとして、災害時の状況把握システム『セブンVIEW』を独自開発
2021年3月、SEJは災害対応の基本理念や対応方針、具体的な体制や手順を定めた「大規模災害に対する事業継続基本計画(BCP)」を大幅に改定した。
コンビニエンスストアは地域の重要な「社会インフラ」とも呼べる存在だ。SEJは災害時におけるこれまでの経験から、迅速な営業再開には災害状況の包括的な可視化が必要だと痛感し、対策を進めてきた。
「私たちは営利企業ですが、それだけではなくて社会インフラとしての使命があると思っています。自然災害の多い日本においては、災害時にもいつもと同じように買い物できることが重要です。そこでシステム本部では、2015年にITを活用した災害時の状況把握システム『セブンVIEW』を開発しました。これにより、災害時にグループ全体で店舗や物流の状況をリアルタイムに把握し、共有できるようになっています」
『セブンVIEW』の“VIEW”は、「Visual Information Emergency Web」の略称だ。言葉のとおり、災害時の情報をリアルタイムにWeb上で見える化できるシステムになっている。誰もが簡単に操作できることを重視し、インターフェースには多くの人が利用したことのある「Googleマップ」を採用している。

セブンVIEWはSEJでの活用に留まらない。セブン&アイグループ全体に加え、省庁や自治体、各界研究者との連携も進めている。
「いままでの官民連携では、官のデータを民が活用することが多かったのですが、セブンVIEWでは、民のデータを官が活用している部分もあります。われわれのデータを省庁や自治体などに提供して、断水をいち早く感知し、早期の復旧につなげています。こうした取り組みが実現するようになったのも、DXに取り組んできた成果だと思います」
2023年2月、具体的な取り組みとして、SEJと東京都水道局によるセブンVIEWの実証実験がおこなわれた。
セブン-イレブンの店舗に置かれたセブンカフェマシンに搭載された断水を知らせるアラート機能を活用し、情報を収集。セブンVIEWとTDPF(東京データプラットフォーム)の連携を通じ、東京都水道局が断水データを確認する。そのデータをもとに東京都水道局が計画断水のデータを照合し、断水の場合は早期復旧対応につなげるという実証実験だ。
創業50周年を機に掲げた「4つのビジョン」
1974年5月の国内1号店オープンに始まり、セブン-イレブンは、これまでに数多くのヒット商品や画期的なサービスなどを生み出してきた。
進化を続けるなか、SEJ創業50周年を機に「明日の笑顔を 共に創る」という理念と、「健康」「地域」「環境」「人財」という4つのビジョンを掲げている。
【セブン‐イレブンが描く未来のための『4VISIONS』】
- 価値ある商品・サービスを通じて、健康な社会を実現する
- 地域と共に生きる社会を実現する
- 環境に配慮した循環型社会を実現する
- 多様な人財が活躍し、幸せな社会を実現する
「これらのビジョンを実現するためには、ITやDXが必要です」と西村さんは語る。
ITを活用し、4つのビジョンを通じて、目指す姿である「明日の笑顔を 共に創る」に向かって進んでいく。
多様な人材が働く組織
SEJはシステム本部の組織戦略として、人材のバランスを意識している。その理由は、よりよいシステムをつくり、DXを進めるためだ。
「以前はインフラやセキュリティをベンダーさまにお任せしたことで、ベンダーロックインが起きてしまっていました。そうした状況を改善するために、われわれ自身がアーキテクチャや開発に踏み込んで、ベンダーさまと一緒に新たなパートナーシップを結んでいける組織にしていこう、と進めました。
ITを専門とする中途社員の採用を進めると同時に、加盟店さまの店舗経営をサポートしていたメンバーや、商品開発に携わっていたメンバーも在籍しています。ITだけ理解できていればいいわけではなく、実際の業務も理解できているからこそ、よりよいシステムをつくっていけます。しっかりとバランスを取りながら組織を構成していくことが大事です」
西村さんが着任してからシステムのモダン化を進めており、多様性にあふれた組織を目指していく。
「われわれは大企業ではありますが、お客さまや加盟店さまのために1つになれる会社です。役割ごとにうまく連携しながら、1つになれる強さは全員が持っています」
社員全員が企業理念に共感しているからこそ、キャリア入社者がいる組織でも1つになれる強さがあるのだろう。
最新技術を活用しながら、ITやDXによって顧客の利便性などに貢献

SEJのシステム本部では、どのような人材が活躍しているのだろうか。
「われわれの組織では、自分の仕事が直接ステークホルダーの皆さまに影響を与えます。緊張感もありますが、実現したときのやりがいも非常に大きいです。そうした影響力の大きいシステムに関する仕事をしたいというマインドを持っていると、フィットすると思います。
SEJはコンビニエンスストア事業が軸になるので、ITやDXによってお客さまの利便性などに貢献していきたい。たとえばセブン-イレブンアプリやリテールメディアをさらに進化させ、多様性をITで実現したいと思ってくれる人が活躍できると思います」
SEJでは、発注業務や商品企画にAIを活用するといった最新技術の活用も進めている。2023年から加盟店向けの発注支援システムとして、需要予測AIを全国展開。このシステムは、セブンセントラルと連携して各種データから販売数を予測する。現時点では、オリジナルフレッシュフードは対象外だが、将来的な対象商品の拡大に向けて挑戦をしている。
「SEJには、データを利活用する文化が以前から根づいています。そこに寄与するAIへの理解度は、経営層を含めて非常に高く、積極的に活用を進めています。AIをフル活用し、SEJ本部のさまざまな業務生産性を何倍にも上げてスケールしていきたいと考えています」
50年以上の歴史を持つSEJ。そのなかで積み上げてきた組織文化や技術によって、これまでに誰も経験したことのない便利さを提供してきた。「明日の笑顔を共に創る」ため、新たなチャレンジをし続けていく。
