みなさんは、「テストエンジニア」というロールにどのようなイメージを持っているでしょうか?
以前このTechTeamJournalで、テストエンジニアやQAエンジニアのお仕事は「単純作業としてのテスト」ではなく、さらに創造的なものですと書きました。
参考:本当はおもしろい“テスト・QAエンジニア”のお仕事 – Tech Team Journal
こうした記事の他にも、テストエンジニアはいろいろなものに例えられます。組織によっては「最後の砦」と表現されたり、「ゴールキーパー」と言われることもあります。
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テストエンジニアはゴールキーパーに例えられていた
実際に、2006年に公開されたこちらの記事(Part1 ソフトウエア・テストがなぜ重要なのか | 日経クロステック(xTECH))では、テストエンジニアをゴールキーパーに例え、以下のように説明されています。
サッカーでは,メンバー全員が「攻め」だけではなく「守り」もできなくてはなりません。この,サッカーで言う「守り」がソフトウエア開発におけるテストに当たります。守りの専門職であるゴールキーパーがテスト担当です。
たしかに、開発者によるテストのあとでテストエンジニアがテストを行い、問題なければリリースされる、という組織も多くあるでしょう。そうした組織においては、テストエンジニアがバグを見逃してしまった場合はそのままリリースされる=失点するわけなので、ゴールキーパーと表現することもうなずけます。
しかし、そこから15年以上が経過した今、テストエンジニアの位置づけは当時のままなのでしょうか?
それぞれ求められるものが変化した、ゴールキーパーとテストエンジニア
私は小さいころにサッカーをしていた経験があり、実際にプレイするのを止めてからもプロサッカーをみることは好きで続けています。また、ソフトウェアテストや品質保証の仕事に10年以上従事しています。
そうした視点からは、ゴールキーパーとテストエンジニアにはこの10年〜15年で共通する変化があるように思っています。それぞれ、求められるものがより高度に、幅広く変化しているということです。
■ただ守るだけではなく、攻めのスタートを担うようになったゴールキーパー
かつてサッカー日本代表のゴールキーパーとして活躍した、川口能活氏をご存知でしょうか。サッカーにあまり詳しくない方でも、名前は聞いたことがあるかもしれません。現在は選手を引退していますが、日本代表のゴールキーパーコーチを務めるなど、ゴールキーパーとしてプロフェッショナルなキャリアを歩んできた方です。
また、川口能活氏は2022年に早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に入学しており、社会人修士として修士論文を書いています。タイトルは「現代サッカーにおいて役割の変化した GK の新たな育成方法」。ここからもわかるように、現代サッカーではゴールキーパーの役割が変化しています。
その変化について、論文中では
現代サッカーに於ける GK の役割が、以前の「ゴールを守る」だけの考え方から、「11 人目のフィールドプレ イヤー」「攻撃と守備に積極的に関わる」といった志向に大きく変化している。
と述べられています。ゴールキーパーは失点を少なくするだけでなく、ゴールから前に出てパス交換に参加したり、ドリブルやパスを繋いで最終的に得点するまでの一歩目=攻撃の起点としてのプレーが求められているのです。このような、守備に加えて攻撃の起点になるスキルを持ったゴールキーパーのことを「現代型ゴールキーパー」と呼びます。
■ただテストするだけでなく、攻めの姿勢で品質向上を求められるようになったテストエンジニア
テストエンジニアは、かつては「開発者が作ったシステムを最後にテストする役割」だと捉えられることもありました。事前に作成しておいたテストケースを元にリリース手前の状態のシステムを操作し、問題を見つけて開発者に報告を行う、といったやり方です。
しかし、時代とともにソフトウェア開発をとりまく状況が変化しました。Webやモバイルの浸透とともにソフトウェアのリリースサイクルが高速化しています。そうなると、開発後にテストエンジニアがテストをして多くの問題が見つかるような状態では、リリースが遅くなってしまいます。
そのため、現在では開発サイクルの早い時期からテスト活動を行うシフトレフト等の考え方が一般的になりました。結果として、テストエンジニアにも攻めの姿勢が求められるようになっています。
ここで言う攻めの姿勢とは、ある程度できあがったシステムに対して効果的なテストをするだけでなく、開発者による実装中、あるいはそれ以前のドキュメントの段階でバグを見つけられるようにすることです。
たとえば、一般に「QAエンジニア」と呼ばれる職種に関連したスキルを「テストエンジニア」「パイプラインエンジニア」「QAエンジニア」の3側面で捉えるQMファンネルというものがあります。
ここでは、テストエンジニアは
テストやレビュー、メトリクスの測定など製品やサービスの評価技術のエキスパート
と表現されています。

引用:品質を加速させるために、テスターを増やす前から考えるべきQMファンネルの話(3D版) | PPT
単純に「できあがったものをテストする人」ではなく、レビューのように開発前の段階でバグの元を検知する技術や、品質に関連するメトリクスを測定しそこからの判断を行うなど、より広いスキルが求められるようになっている、といえるでしょう。
テストエンジニアは現代型のゴールキーパー
ゴールキーパーに求められるものの変化と、テストエンジニアに求められるものの変化。これらはよく似ているように見えます。テストエンジニアは、かつての「守る役」から、現代の「守りだけでなく攻めにも貢献」するいわば「現代型のゴールキーパー」と言ってよいでしょう。
この変化は、テストエンジニアにとっても、開発組織全体にとっても重要です。テストエンジニアは単にテストをしてバグを見つけるのではなく、より上流の工程にも参加し、品質向上にコミットする存在となっています。
現代型ゴールキーパーとしての働きができるテストエンジニアは、開発組織において欠かせない存在となるでしょう。
(文:伊藤由貴)
