先日、デヴィッド・フィンチャーの『ザ・キラー』という映画を観ました。主人公は殺し屋で、彼が暗殺を行う際にザ・スミスを聴いている姿が印象的でした。

なぜザ・スミスを聴くのか? ザ・スミスを爆音で聴いていたから狙撃に失敗したのではないか? などの素朴な疑問は脇においておくとして、彼は作業用BGMとしてザ・スミスを聴いていたわけです。

映画を観終えたあと「そういえば、作業用BGMってみんな何を聴くんだろう」と思い立ち、人に尋ねるならまずは自分から癖を開陳しようと思い立って本コラムを書いています。

結論からいうと、そんなもん自分の好きな音楽聴けばいいじゃんなのですが

ちなみに私の職業はグラフィックデザイナー・ライターで、「デザイナーが飛んでどうしようもないので何とかしてください。明日までに」などといった地雷処理案件を毎週のように手掛けております。

その傍ら音楽バーの店長も兼任しており、週に2回、年間で1,000時間くらいレコードを選盤してかけています。このようなカマしを世間では権威付けといいますが、作業用BGMの世界には権威もクソもありません。自分が集中できたり、テンションが上がったりするBGMこそが最強です。

なのでこれから挙げるのは、私個人が仕事に「使える」作業用BGMだと勝手に認定した非公式プレイリストなので、それほど参考にならないかもしれませんが、ごく一部の奇特な方のお役に立てれば幸いです。

最強の作業用BGM1 / マックス・リヒター『On the Nature of Daylight』

まず1曲目は、マックス・リヒター『On the Nature of Daylight』。まるで寺の中にいるような静謐さが、例え地雷案件であろうとも怒りを沈めてくれるとともに、集中力をアップさせてくれる名曲です。

本曲は、空に浮かぶばかうけが世界各地に突如現れ、ばかうけの中にいる異星人とのほのぼのコミュニケーションを描いた傑作映画『メッセージ』にも印象的に使われています。

映画の中に出てくる異星人は時間の概念がなく、On the Nature of Daylightもまた始まりと終わりがありません。もちろん曲は終わるのですが、リピートしてみれば無限ループが可能であることがわかるでしょう。そう、締切と同じく、終わりが来てもまた始まりがやって来るのです。

無限ループが可能、インストなので声に耳をもっていかれないことが高得点を叩き出したことにより、今回の選出につながりました。

最強の作業用BGM2 / ハンス・ジマー『Cornfield Chase』

ハンス・ジマーの『Cornfield Chase』は、映画『インターステラー』で印象的に使われた楽曲です。

ハンス・ジマーはチェロをギターみたいにならしたり、「とにかくデカい音出したれや」と迫力でもっていったりする曲もいいんですが、幻想的で緊張感のある曲もすばらしい。

ちなみにトゥルー・ロマンスの『You’re so Cool』でもよかったものの、マックス・リヒターとの繋がりを考えて本曲がランクイン。曲自体は2分7秒しかありませんがループすれば問題ありません。

本曲を聴きながら「ブラックホールに近づけば観測者側から見た締切を伸ばせるのでは?」と宇宙の神秘について考えてみれば、自然と仕事も捗るというものでしょう。

最強の作業用BGM3 / 『シン・ゴジラ』

おおっと、ここでいきなり映画本体がランクインしてきました。あくまで個人的ではありますが『シン・ゴジラ』を仕事中に流していると仕事が捗るといった観測結果が出ております。

『シン・ゴジラ』がなぜ作業用BGMに優れているか、それは上映時間がきっちり120分(正確には119分)であることです。人間の集中力の限界は90分といわれていますが、私はだらだらと仕事をするタイプなので、グローリー丸の捜索から寝・ゴジラを凍結させるまで作業をしていると、ちょうどいい感じで集中力が切れます。

集中力について補足すると、諸説ありますが人間には15・45・90分が集中できる区切りだという法則もあるそうです。これを本作に当てはめた場合、15分は蒲田くんが街中で大暴れし、45分は名前はともかく矢口プランが提唱され、90分では急拵えの詰め所でゴジラに一矢報いるべく計画が練られるシーンで休憩をとるとベストだといえるでしょう。

ちなみにBGMに流す映画は、何回も観てほぼ台詞もソラでいえるような作品がオススメです。また自分の集中力の持続時間が70分であれば『鉄男』にするなどといったように選ぶのも悪くありません。

最強の作業用BGM4 / ディスカバリーチャンネル『担当者が寝る』シリーズ

長時間のプレイリストを組むのが面倒くさい人には、ディスカバリーチャンネルがYou Tubeで公開している『作業用宇宙』動画が最適です。何せタイトルに「作業用」と銘打たれているので間違いありません。

現在出ている動画は『【作業用宇宙】7時間で出る宇宙の答え【担当者は45分で寝】』と『【作業用宇宙2】7時間であなたは宇宙の一端を知る【担当者は先に寝】』の2本です。いずれもタイトルを打ち込んでいる途中で担当者が寝落ちしたのか中途半端に終わっていたり、1本目で宇宙の答えが出ているのに2では7時間かけても宇宙の一端しか知れなかったりといったグッドポイントに趣を感じずにはいられません。

いずれも7時間超なので、1日中仕事をしているときにオススメの番組ですが、唯一、めちゃくちゃおもしろいという弱点があるので宇宙に興味がある人はプライベートで観てください。

ディスカバリーチャンネルには、ほかにも元イギリス陸軍大尉のエド・スタフォードがチキチキ・サバイバルを繰り広げる『【8時間耐久】エドと一緒に秘境生活しよ?過去の名サバイバルイッキ見合宿[ディスカバリー夏祭り特別企画]』や、ベア・グリルスがイカれた水分補給をするシーンを集めた『【ベア】異常水分補給集 / ディスカバリーチャンネル』などがありますが、こちらは宇宙よりも意識をもっていかれるため仕事時には避けるのが無難です。プライベートで観ましょう。

最強の作業用BGM5 / ANNnewsCH『お盆休み 交通機関下りの混雑ピーク 高速は朝から激しい渋滞 東名などで31km(2023年8月11日)』

ANNnewsCHがYou Tubeになぜか投稿している『お盆休み 交通機関下りの混雑ピーク 高速は朝から激しい渋滞 東名などで31km(2023年8月11日)』は、2023年のお盆休みの交通情報が切り抜かれた動画です。

個人的に交通情報は「家で仕事をしている限りはまったく必要ない情報」「声のトーンが一定で馬耳東風できる」ことから作業用BGMとして最強だと思うのですが、いかんせんハイウェイラジオは家では聴けません。

「俺は一生仕事中に1620kHzに周波数を合わせることはないのか」と意気消沈していたところ、本動画を見つけて狂喜乱舞した記憶があります。現在の再生回数は7365回ですが、その中の500回くらいは私です。

radikoなどで聴取できるNHKラジオの気象情報・交通情報も悪くはないのですが、現在進行形の情報は耳を引っ張られる可能性があります。ですが「過去の交通情報」なのがいい。何の役にも立たないコンテンツが鮮やかに反転し、集中力アップの手助けになるお役立ち動画になるのだから世の中何が起こるかわからないものです。

一定のテンポが繰り返され、リピートでき、耳から入る情報が仕事の邪魔をしない点においても、交通情報は作業用BGMの頂点だといってもいいでしょう。

以上、ごく私的な作業用BGM5選でしたが「ぜんぜん集中できねぇじゃねぇか」「これはBGMの定義に当てはまらないのではないか」などの苦情は一切受け付けないことをここに強く、気持ちとしては文字サイズ36ポイントくらいの大きさで誓います。むしろ、ほかにオススメがあれば教えてください。

(文:加藤広大

― presented by paiza

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