一所懸命。
その昔、武士がたまわった『一か所』の領地を命がけで守り、それを生活の頼りにして生きたことに由来した言葉である。
昨今では、物事を命がけでやるという意味に転じ、「一生懸命」とも書かれるようになったが、由来元は一所懸命である。
日々国政で一所懸命に「対決より解決」の姿勢を貫く国民民主党。

Tech Team Journalでは、今回3記事に渡り、玉木雄一郎氏に国民民主党の代表として考えている岸田政権のデジタル政策への本音や、昨今のテックトレンド、DX、デジタル人材の育成と活用などについて伺った。
本記事では、DX、デジタル人材の育成と活用、そして玉木雄一郎氏が考える「日本の未来」について伺った。
同日インタビューの記事:
岸田政権のデジタル政策への本音と積極的AI活用への提言<国民民主党代表 玉木雄一郎 独占インタビュー>
同日インタビューの記事:
国民民主党代表 玉木雄一郎 人生における7つのルール<Professional 7rules>
目次
代表選挙のデジタル投票を初めて実施
国民民主党のデジタル政策を見る上で、足元=自党のデジタル化はどうなっているのかが気になった。質問したところ即答で返ってきた『ならでは』がスマートフォンでの投票だ。
「党の代表選挙をデジタル化して、スマホ投票で行いました。(旧国民民主党時代の)2018年にやったのが公党初です。もちろん紙でもできるようにしました」
2018年、党首選に初めてスマホ投票を導入(たまきチャンネルより)
「スマホ投票を国政選挙にも取り入れたほうが、若い人の投票率も伸びると言われますが、国会議員の先輩方の頭が固くてなかなかできないんですよ。ですので、せめて自分たちの選挙では、スマホ投票をしようと思いました。
一定のセキュリティを確保しながら、どこからでもできるスマホ投票を、実際に使って代表を選びました。ですので、私はスマホ投票で選ばれた代表なんです(笑)」

今年9月に行われた国民民主党代表選挙のデータで興味深いのは、紙の投票もできる中でスマートフォンを選んだ党員が多かったという点だ。若者に限らず、高齢者も過疎化で投票所が集約され足を運べなくなるケースも増えてくる。
そうなると、スマートフォンでの投票は少子高齢化時代において全世代的なインフラとして必要不可欠となっていくのかもしれない。
「スマホ投票が民主主義のインフラとして必要になる。セキュアなシステムとして、きちんとつくることが必要となります。それを党として実践しているのが国民民主党です」
デジタル格差について
上記のように、選挙のデジタル化、インフラ基盤のデジタル化は必要不可欠である。しかし、一方で年配層を中心にデジタル格差が広がっているのも事実だ。これに関して玉木氏は「次第に狭まってくる」という見解を示した。
「まず学校教育の中で、これからデジタルネイティブの世代は、リテラシー教育・向上も含めて、さまざまな形で使いこなせるようになっていきます」

そのような中で取り残されている層は二つある。一つは高齢層、もう一つは低所得者層だ。玉木氏はどちらも解決策があると言う。
「高齢層に関しては、最初はわからなくても、人に手伝ってもらって一度使ってみるとうまくやるんです。
最初はマイナポイントをもらえるという切り口など、お金でインセンティブを与える形でもよいと思います。それで、『便利だよね』と実感してもらうことを、国民運動としてやる。
そのためには今がチャンスなんです。健康保険などのマイナンバーへの紐付けが間違っていることが問題になりましたが、『マイナポータルにログインして探してみませんか。わからない場合は役場で聞いてください』と。それで、『間違いを見つけた人には5,000ポイントあげるよ』という ”詫び石戦略” でやればいい。そうすれば喜んでみんなデジタルに親しんでいくのではないでしょうか。まずはそういった形でやっていくのがよいと思います。」

「続いて低所得者層です。これから教育環境のデジタル化がどんどん進んでいきますが、自宅でWi-Fiによる高速通信ネットワークに接続できない場合が出てきます。
我々は全国どこでも無料のWi-Fiを国が整備して、高速なネット接続を、生きる権利として保障する「地域どこでもWi-Fi」という政策を掲げています。
経済的な理由で接続環境が用意できない人をしっかりサポートしていくのが大事です」
そのような中で気になるのが国会のデジタル化だ。つい先日も河野太郎デジタル大臣が答弁の際にスマートフォンを使用して注意を受けた。
「まずは、オンライン国会を実現できるようにしたほうがいいですね。
これは憲法にも関わるのですが、憲法56条には、国会の『出席』について記述があります。ただ私が所属している憲法審査会で、必ずしもリアルな出席ではなくてもよいということを、憲法解釈として確定しました。それで、国会のルールを決めている議院運営委員会に申し入れをしたのですが、そこから動かないですね。
普段はリアル出席すればよいのですが、再びコロナや関東大震災みたいなことが起きて、物理的に集えないけど国会機能を維持しなければならないときに、オンライン国会でも憲法上は問題ないという解釈まではクリアしました。
そのルールを、デバイスはどのようなものを置くかも含めて、具体的に定めておくことが必要です」
人材不足をどう解決していくか
非デジタル化を推奨したところで時代はデジタル化の一途を辿っており、遅かれ早かれデジタル化は全方位で進んでいく。
日本においても有能なIT人材、エンジニア、起業家が増えている印象だ。一方で優秀な人材は取り合いとなっており、需要と供給という点において「人材不足」となってしまっている。
人材不足は企業の生産性に直結し、それは経済全体へも影響する。この点はどのように考えているのだろうか。
「今後はAIを活用する時代です、と言いながら、ITエンジニアも含めて、圧倒的に人材が足りなくなるのは見えているんですね。
ここは国として、計画的にIT人材やエンジニアの育成計画を策定し、逆算して、大学やいろいろなところで『この年は日本全体でこれくらいの数を養成しよう』と決めて取り組むべきです。
もちろん個人が文系、理系を選べるけれど、インセンティブをつけて、理系に進んだら学費が少し安くなるなどといったことも含めて政策的に誘導して、優秀なITエンジニアやデジタル人材の育成を、国家戦略として進める必要があります」

「その上で、我々は『教育国債』の発行を提案しています。人材育成に関しては、使い道を教育や科学技術に限定した国債の発行で、まとまったお金を集中的に人材育成に回していく。とりわけITエンジニアなどのデジタル人材を育成する奨学金を無料にするなど、さまざまなインセンティブを与える。
そういった人たちが育って社会に出たら、日本でもビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグが出てくるかもしれない。リターンとして、十分戻ってくると思うんです。
デジタル人材に対する投資は、リターンが見込めます。国債を発行して、一時的に借金をしてもまったく問題ない。逆にそれくらいしないと、今は年金や医療介護のお金ばかりがたくさんかかって、若い人材の育成にお金が回らなくなっています。
これが日本衰退の一つの原因です。
むしろ国債を発行して、それをお金持ちの高齢者に買っていただいて、その富を若い人たちに移転していくような政策と、計画的な人材育成が大切です」

一方でデジタル化は現在人間が行っている仕事の一部を奪うことにもなりかねない。生成AIが登場して約一年、この話題は活発に議論されるようになっている。
「今後はいい意味でも悪い意味でも人口が減っていくので、省力化は不可欠だと思います。
日本の場合は人口が減ってくるので、その中で足りないところをAIなどのデジタルが補っていけば、働いている人を弾き飛ばすことなく、調和しながら、一人ひとりの所得を下げずにデジタル化に移行できるはずです。
AIやデジタルと共存する成功モデルを、ぜひ日本でつくりたいですね。痛みを伴わずにうまく足りない人材を補いつつ、よい形でのソフトランディングが日本ならできると思うんです。そのモデルを示すべきです」
医療分野のさらなるデジタル化
ここまで教育や人材、デジタル格差などについて伺ってきたが、これらから漏れる部分で重要と考える分野についても問うた。回答は医療だった。
「日本は皆保険制度なので、病気になるとみんな病院にかかっているので、生まれてきてからの医療データがあります。
たとえば匿名化した上で、1969年5月1日に3612グラムで生まれた男の子が人生の中でどういった病歴を辿るかは、集めようと思えば集められますが、データのフォーマットが一致しないので、なかなかビッグデータとして使えない。
これをできるだけビッグデータとして解析できるようにして、場合によっては遺伝情報などと組み合わせたら、かなりピンポイントでカスタマイズした予防的な対処ができるはずです」

「生活習慣病であれば、早めにダイエットをして痩せましょうとか。遺伝的な部分もありますが、大病を防いだり、より正確で適切な治療ができたりします。
結果として医療費を抑えられるし、なにより個人の健康寿命を伸ばすことにデジタル技術が使われたら、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)が上がりますよね。
今後は、今までなかなか政治が関与しづらかった教育と医療の分野で、デジタルをフル活用すべきです」
人に関するデータは、一番貴重かつ膨大なデータだ。これからの高齢社会の中で、医療費と介護費は増えていく。
「その費用を賄うために、若い人の社会保険料をどんどん上げるとなると、頑張っても若い人は報われなくなってしまいます。
ですので、医療分野のデジタル化と効率化によって医療費を抑えて、なにより健康で、お医者さんにあまりかからなくてもよくなるように、いかにサポートできるか。これができたらみんなハッピーですよね。
ここにこそ、デジタルの能力をフル活用してもらいたいです。ただ残念ながら、今はデジタル庁があっても、厚生労働関係のデータだと所管が厚生労働省になります。本当の意味でのデジタル化の司令塔機能をきちんとつくって権限を強化して、取り組むべきデジタル化を、スピード感を持って強力に進めていきたいです」
日本は明るいのか、暗いのか
最後に締めとしてベタではあるが『明るい日本』をどう目指すかという広義な質問を行ったが、玉木氏は笑顔でこう答えた。
「日本は明るいですよ。みんなが暗い暗いと言うから暗くなってしまうんです」

「今年も名目GDPは4.4%成長すると内閣府が予測しています。ドイツはマイナスです。先進国の中でも円安になっているので、ドルベースで見るとドイツに抜かれたと言いますが、ドイツはマイナス成長で、日本はプラス成長です。
だから、そう悲観することはありません。私は若い20代の人たちとも話をしますが、よいスタートアップ企業もどんどん出てきています。
逆にまったく新しい時代、AI時代の経済ををつくって、それを技術とデジタルで乗り越えていくこともできつつあるので、期待しています。我々世代の人間や政治はそれを邪魔しないで、それらが花開くような社会をぜひつくりたいです」

また、玉木氏は言語の壁がデジタル化で低くなる中でのグローバル化の可能性についても言及した。
「もう一つ期待しているのは、今は言語の壁がどんどん低くなっていて、Zoomでも他言語の翻訳表示ができたりするようになってきています。コミュニケーションがより円滑になってくると、究極の明るい未来は世界平和ですよ。
上の世代は戦争ばかりするけど、若い世代はSDGsも含めて世界全体の課題を、同じ世代がみんなで共有して、一緒に力を合わせて解決できる。
地理的な、あるいは言語の差を乗り越えて、本当にデジタルが繋いでいける。ランゲージ・ディフィカルティーズなどのいろいろな困難を乗り越えて、本当の意味で人と人が繋がっていく社会を、デジタル化によってできればよりよい社会になるはずです。
あまりイデオロギーや宗教などで揉めない日本ならば、多様な価値観や個性を繋いでいくハブの機能を文化的にも果たせるはずです。
本当の意味で、デジタル社会のラブ・アンド・ピースみたいなものを実現できて、それを主導できる立場に、日本の若者はいます。だからそういった価値観や使命を持って、今後は世界のデジタル社会をリードしていくデジタル人材やデジタルリーダーが出てくると思いますし、期待したいですね」
取材後記

冒頭の「一所懸命」という言葉は、玉木雄一郎氏のホームページトップに記載されている「ふるさとが好きだから、一所懸命」より拝借した。
もともと領地を命がけで守ることに由来する言葉であるため、ふるさととの相性も抜群だ。
これからの国民民主党、および玉木雄一郎氏の「対決より解決」NEXT STEPにもぜひ期待をしたい。
