新型コロナウイルスの影響が少しずつ収束し、国内外からの観光客が増えてきているようです。とくに2023年のゴールデンウィークには、エンターテイメントなどの楽しみ方に対する支出がかなり回復したと感じられます。もちろん、物価の上昇といったマイナスの要素は存在しますが、消費が活性化することは一般的にはポジティブな現象です。
しかし、その一方で海外旅行にはまだ手軽には行けません。そこで、私が提案したいのは、世界各地の名所を大々的に描いた映画の鑑賞です。これはまさに“観光映画”とも言えるもので、現在公開中の『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』などは、アクションの舞台が世界中に広がっており、それを追いかけるだけでも非常に楽しいものがあります。
今回は、フランスが世界に誇る美術館「ルーブル美術館」をテーマにした映画をご紹介します。日本、アメリカ、フランスからそれぞれ一作品ずつ選びました。たびたび日本でも展示会が開催される「ルーブル」の魅力を、映画を通じて体験してみてはいかがでしょうか?
目次
『岸辺露伴 ルーブルへ行く』
5月26日から劇場公開される高橋一生主演作品。2020年から3年連続、NHKで年末に放映されてきたドラマ「岸辺露伴は動かない」から、メインキャスト&メインスタッフが引き継ぐ形で完成した一本です。
ご存知の方も多いと思いますが、原作は荒木飛呂彦によりロングランヒットコミック「ジョジョの奇妙な冒険」。本作は、そのスピンオフ作品です。特殊能力をもった天才漫画家・岸辺露伴が遭遇する“怪異”を描きます。原作はときに劇画的な画風や効果線、擬音のあるテンションの高い物語。しかし、映像化に当たってテンションを下げ、その分“怪異譚”の部分を拡げたものになりました。
独特の品の良さと知性を兼ね備えた高橋一生が実に魅力的です。また原作には登場しなかったヒロイン・泉京香(飯豊まりえ)がよい味を出しています。ドラマを見ていなくても楽しめる一本ですので、いきなり映画に挑んでもいいと思います。
『ダ・ヴィンチ・コード』
ダン・ブラウンの同題小説を『アポロ13』主演のトム・ハンクス、監督のロン・ハワードのコンビで映画化したサスペンス大作。物語はルーブル美術館館長の死から始まり、ダ・ヴィンチの作品に込められた暗号を解き明かしながらキリスト教史上最大の謎に迫ります。
2003年に発刊された原作は、日本でもベストセラーとなりました。海外ミステリー作品の翻訳版の出版は珍しくありませんが、これはミステリーファンだけでなく一般層にも大いに受けて、一大ブームになりました。
ベストセラーから映画公開に至るまで、当時映画館のアルバイトだったわたしは、何とも言えない熱量をはらんだ空気感をよく覚えています。フランス各地を舞台にしたこともあって、ジャン・レノやオドレイ・トトゥ(『アメリ』のタイトルロール)などフランス人キャストもそろっています。
『ルーブルの怪人』
監督:ジャン=ポール・サロメ
出演:ソフィー・マルソー、ミシェル・セロー、フレデリック・ディファンタール、ジュリー・クリスティ、ジャン=フランソワ・バルメ
2001年の作品とちょっと前の話ですが、フランス映画からも一本選ばなくてはいけないでしょう。主演は『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』などハリウッド大作でも活躍するフランス映画界のビッグネーム、ソフィー・マルソー。
お話としてはちょっとスーパーナチュラルな方向の映画なので好き嫌いは分かれるかもしれませんが、ルーブル美術館が“がっつり”映るので、贅沢感があります。ルーブルでスーパーナチュラルな方向となると、意外と『岸辺露伴 ルーブルへ行く』に通じる部分もあると言えるかもしれませんね。
これらはフィクションですが、ドキュメンタリー映画で2003年の『パリ・ルーブル美術館の秘密』や、コロナ禍前にルーブルで史上最多の来館者数を記録した展覧会を映画化した2020年の『ルーブル美術館の夜 ダ・ヴィンチ没後500年展』など、ルーブル公認のドキュメンタリー映画もあります。
世界最高峰の美術館ではありますが、近年のルーブルは比較的映画に寛容なようです。さらに、ダ・ヴィンチなどビッグネームにフォーカスした映画に範囲を拡げるとさらに作品は増えます。
(文:村松健太郎)