今や、生活の“最”必需品といって間違いないスマートフォン。お財布を忘れてもなんとかなりますが、スマホを忘れると何も回りません。本人認証アプリで身分証明書の代替品とする流れもあって、大げさな表現ではなく、いよいよスマホ無しで生きていけない社会になりました。

当然社会の写し鏡であるフィクションの世界も、スマホ無しでは話が進まなくなってきました。

そんな“スマホの扱いを考え直したくなる”映画、“スマホ無しの生活は考えられない”映画を、例によって年に新作400本程度と平均より少し多く映画を見ているわたしが、3選ご紹介いたします。

『デスパレート・ラン』

『デスパレート・ラン』(2023)
監督:フィリップ・ノイス
出演:ナオミ・ワッツ、コルトン・ゴボ、Sierra Maltby
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5月12日に日本で劇場公開された、ナオミ・ワッツ主演のワンシチュエーションサスペンス。ほぼ映画の時間内と劇中の進行が同じというリアルタイム型の映画です。

ナオミ・ワッツ演じるシングルマザーのエイミーは、親子関係に思い悩む典型的なキャラクター。そんなエイミーが高校生の息子と言い争いをした後、ランニングに向かいます。息子は高校に通っているはず……。

そんな中で、息子の通う高校で銃器を持った男が立て籠る事件が起きたことを知ります。とはいってもエイミーはランニングコースの森の中、手元にあるのは1台のスマホのみ。はたしてエイミーの息子は無事なのか。エイミーはスマホを駆使して情報収集に挑みます。

正直言ってエイミーはスマホ上級者、年齢設定から考えると筆者より上の年代のはずですが、テクは明らかに上です。いろいろ勉強になる映画です。もちろんこんな状況に巻き込まれないようにするのが一番なのですが。

『search/サーチ』(&『search/#サーチ2』)

『search/サーチ』(2018)
監督:アニーシュ・チャガンティ
出演:ジョン・チョー、デブラ・メッシング、ジョゼフ・リー、ミシェル・ラー、サラ・ソーン
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すべてがPCとスマホの画面内だけで展開することが大きな話題になった『search/サーチ』。日本では続編の『search/#サーチ2』が劇場公開中です。

1作目は父と娘の物語。行方の分からなくなった娘の痕跡を追って、父親がPCとスマホにしがみつきます。父親が追いかける側なのでデジタル面では四苦八苦する描写も多数あり、そういう意味でも等身大の物語と言えるでしょう。

一方で、突飛な作りの映画ではあるもの、ミステリーとしてなかなかフェアに作られています。ちゃんと落ち着いて映画を追いかけていくと、真相に辿り着ける映画になっているんです。

同じスタッフ(監督・製作・脚本・編集などをシャッフル)で作られた『search/#サーチ2』は、関係がうまくいっていない母と娘が主人公。今回は、行方不明になった母を娘が追いかけます。ティーンエイジャーの娘はバリバリのデジタルネイティブで、一作目の父親の四苦八苦が嘘のように、あれやこれやとガンガン進んでいきます。ちょっとハッキングに近い描写もあって、40代の筆者も怖い思いを抱きました。

ちなみに1作目の出来事が実際に起きた世界線で『search/#サーチ2』の物語は展開されるので、順番通りのご視聴をお薦めします。

作りがとても特徴的ですが『デスパレート・ラン』も『search/サーチ』(&『search/#サーチ2』)も、描いているのはアメリカの現代社会の影の部分です。

『スマホを落としただけなのに』(&『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』)

『スマホを落としただけなのに』(2018)
監督:中田秀夫
出演:北川景子、千葉雄大、バカリズム、要潤、高橋メアリージュン、酒井健太、原田泰造、成田凌、田中圭、筧美和子
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日本からもスマホ映画が作られています。それが『スマホを落としただけなのに』とその続編『囚われの殺人鬼』。『リング』シリーズの中田秀夫監督作品ということでバリバリのスリラーになっています。文字通りスマホを落としたことから、とんでもない事件に巻き込まれ、自身のアイデンティティや秘密の暴露に繋がっていき、最後はシリアルキラーとの対決にまで至ります。

小説では希薄だった物語のつながりが、映画ではキャラクター設定をいじることで、濃密な2部作になっています。原作は3作目まであるのですが、映画は2で終わりのようです。(ネタバレになるので伏せますが)犯人役の俳優の怪演も良かったので、続きに期待してしまいます。

サスペンス映画は、しっかりしたシナリオがあれば成り立つこともあって、低予算で作られたり、監督キャリアの最初期のジャンルに選ばれたりすることも多々。“スマホ”という材料を映画に活かす最初の一歩目として、サスペンスジャンルの3作品を選出しました。これで大体、“スマホ”の活かし方も分かってきたと思われますので、そろそろ違うジャンルに拡がるのもいいのではないでしょうか?

実際に“スマホが結んだ恋物語”などは、あり得る話ではないかと思うところです。

(文:村松健太郎

presented by paiza

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