現在日本では、農業者の高齢化が深刻な社会問題となっています。この危機的な状況に歯止めをかけ、農業の未来を明るいものにしようと立ち上がったのが、スタートアップ企業の株式会社Happy Quality(本社:静岡県浜松市、以下ハッピークオリティ―)です。

もともと競り人をしていた宮地社長がハッピークオリティーを立ち上げたのは2015年のこと。卸売市場の売上減少を体感し、農業現場が衰退していく状況を食い止めなければならないという思いからでした。
今回は、スーパーエンジニアの古田祐樹(ふるたゆうき)さんと、資金調達に活躍した北川万規衣(きたがわまきえ)さんにお話を伺いました。
ハッピークオリティーの主力エンジニアとして研究・開発を任されているのが、古田さん。同社の農業体験を経て、1年半前に大手医療機器メーカーから異業種のハッピークオリティーへ転職をされました。
資金調達に活躍した北川さんは、農学部出身。大学および大学院にて農業経済を専攻。農業の現場に役立つ仕事をという思いから政府系金融機関で農業者向け融資の担当として勤務。その後、同社に転職し、農業発展を支援し続けています。
目次
トマトが甘くなる AI 自動灌水技術。灌水(水やり) の自動化による品質向上と人件費削減効果に期待
――ハッピークオリティーでは、農業をテクノロジーで支え、農業人口の衰退を食い止めるため、さまざまな取り組みを進めていると伺いました。最近の開発においては、どのような取り組みがあるのでしょうか?
古田:
AIがトマトを監視して、自動で灌水をするシステムを開発しました。先日、テレビでも取り上げていただきました。
具体的には、トマトの健康状態を専用のカメラやセンサで監視し、AIが葉の状態や環境値 (温度など) を分析して最適な水分量を学習。養分の含まれた水を自動で与える灌水(かんすい)制御システムです。

さらに、灌水量をギリギリまで減らすことでトマトに適度なストレスをかけ、糖度を向上させる効果も。このAI自動灌水システムは、水やりを自動化することで労働時間と人件費を削減。そのうえトマトの品質向上にも貢献する農業支援サービスとして新しい可能性を開拓しています。

開発の理由は大きく2つあります。
灌水制御自体が品質や収量に直接起因するという重要性と、人による細かい手作業だった灌水量や回数調節は、手間もかかり熟練者の考えが伝承され難かったということの2つです。
これらの課題に対し、AI技術を活用した自動灌水技術による農業支援の展開は、農業の高収益化にもつながり、新規就農のハードルを下げる解決策として期待されています。
GABA・リコピンのダブル成分の機能性表示食品「ハピトマ」
――AI自動灌水技術以外にも、トマトの栽培に関するテクノロジーに力を入れていると伺いました。具体的にどのような技術や取り組みがあるのでしょうか? また、主力商品の「ハピトマ」には、どのような特徴があるのでしょうか?
古田:
弊社の主力商品である「ハピトマ」は、生鮮食品では日本初のGABA・リコピンのダブル成分の機能性表示食品です。
リコピンが豊富な「フルティカ」という品種を、AIなどの技術を使い1年中安定栽培しています。皮が口の中に残りにくく、ゼリーの飛び出しも少なく食べやすいという点も魅力です。サイズは、大玉のトマトよりも小さく、ミニトマトよりも一回り大きいです。

さらに「ハピトマ」の年間平均糖度は8度以上で、糖度は6~10の5段階に分けられ、全てのトマトを機械で検査しています。

――一粒一粒すべて検査するとは、徹底していますね。わたしも取材に先だって味見をさせていただきましたが、糖度の違いによって酸味がこんなに違うんですね!
農業の未来を明るく|Happy式マーケットインモデル
――直近4億5千万円もの資金調達に成功したそうですが、これはどのような点が評価されたのでしょうか?
北川:
アグリテックを活用した高品質・高単価なトマトの安定生産、パートナー農家からの全量高単価買取と品質保証を行う「Happy式マーケットインモデル」を提供していることが、投資家から高く評価されています。パートナー農家が栽培したトマトは全量買取し、品質管理からパッキング、販売に至るまで弊社で行います。売り上げも年々増えており、直近では4億円超を達成しています。農家からの買取価格も、一般の農家よりも2〜3倍高い水準を維持しており、作る人の想い、届ける人の願い、買う人の満足、すべての人の幸せを叶える「しあわせ品質」を保証しています。

全量買取システムが可能になったのは、商品を作る前に、流通の需要を調べて、売れる商品に合わせた作物栽培の技術を開発しているからです。特にトマトのように年間を通して作ることが難しい野菜は、安定して作る方法を研究して、商品を開発する必要があります。この研究・開発により、トマトを年中安定して供給できるようになったため、バイヤーから支持されています。
――これからの農業の発展には、テクノロジーが欠かせないものになりそうですね。今後の展開について教えてください。
北川:
現在、静岡県内のパートナー農家にトマトを生産していただいておりますが、需要に対して供給量が大幅に不足しています。今後全国展開を加速させることで、より多くの雇用を生み出したいと考えています。
また、今後は栽培技術のシステム化をトマト以外にも広げていく予定です。イチゴをはじめ、幅広い作物に応用するなど、マーケットインの考え方としてニーズがあるところに着目していきます。
これからも農業の発展に貢献し、食卓においしい野菜と幸せをお届けするために、技術の開発に努めてまいります。
(取材・文:さつき うみ)
