各社が採用に苦労するインフラエンジニア。即戦力を採用しようにも対象者が少なく、企業間での獲得競争は収まる気配がありません。
即戦力の獲得が難しくなればなるほど注目されるのが、未経験者や経験が浅い若手の育成です。とはいえ、自社内で育成しようにもノウハウや人的リソースが足りないという企業も多いのではないでしょうか。
インフラ基盤構築を主としたSI事業で知られる株式会社BFTでは、自社に蓄積されたノウハウを生かして数多くのインフラエンジニアを育成。実践形式の「自分で考え、試行錯誤する」プログラムで、業務で必要となる知識や姿勢を身につけることができるといいます。他社にも技術研修プログラムとして提供しており、難しいと言われるインフラ領域のエンジニア採用・育成課題を解決に導く手段として高く注目されています。
今回は、代表取締役社長の小林道寛氏、教育サービス推進部 課長の古閑俊廣氏に、インフラエンジニアの採用から育成、そして仕事のやりがいや魅力についてお話を伺いました。
代表取締役社長 小林道寛氏
1991年3月に國學院大學文学部哲学科卒業。同年4月に株式会社フジミックに入社。親会社フジテレビジョンの情報システム局にて、親会社やフジテレビグループ会社のシステム構築や運用を経験。
2004年に株式会社BFTへ入社。エンジニア部門のマネージャを経験した後、取締役に就任。2015年に代表取締役社長に就任。システムづくりの現場を離れてからは「人とシステムをつくる会社」をつくり続けている。
SI技術本部 教育サービス推進部 課長 古閑俊廣氏
主に金融系、公共系情報システムの設計、構築、運用、チームマネジメントを経験。
現在はこれまでのエンジニア経験を活かし、ITインフラ教育サービス「BFT道場」を運営。「現場で使える技術」をテーマに、インフラエンジニアの育成に力を注いでいる。
実践型ITインフラ研修 BFT道場
SI事業のノウハウがBFTならではの教育事業の強みに
――はじめに御社の事業内容について、簡単にお伺いできればと思います。
小林道寛氏(以下、「小林」):まず、当社の企業理念として「人とシステムを作る」を掲げており、その理念に基づきITインフラの設計・構築をメイン事業に、さらにそこで得たノウハウをもとに教育事業もおこなっています。
SI事業は、金融や公共、航空系など大規模なシステム基盤を中心に、特定のSIベンダーに依存せず幅広く案件を請けさせていただいています。そのため、教育事業で扱うテキストも特定の領域の仕事に寄ったものではなく、幅広い視点と経験から作成していることがひとつの強みかと思います。
――エンジニア組織の体制についても教えてください。
古閑俊廣氏(以下、「古閑」):現在、社員全体で約400名ほどおりまして、そのうち9割近くはインフラエンジニア職となります。残りの1割がアプリケーション開発者が少数、あとは営業やバックオフィスとなります。
営業はSI事業と教育事業と分けておらず、どちらかをフックにして両方をつなげられるよう、少数精鋭で動いてもらっています。
育成を前提とした採用、自ら学ぶ人材をどう見極めるか
――次に採用について伺います。一般的にインフラエンジニアの採用は難しいと言われることが多いと思います。社員の9割がインフラエンジニア職ということでしたが、御社ではどのような採用方法をとられているのでしょうか?
小林:前提としてですが、わたしたちはモノづくりの会社なので、主体性を非常に重要視しています。それは、お客さまに言われた通りそのままシステムを作るだけでは、ほとんどの場合うまくいかないからです。
率直に言えば、システムづくりに携わる人は、「素直でいい子」ではないほうがいいと考えています。お客さまの期待を超えるものをつくるには、相当強い主体性がなければ実現できません。もっと言えば、エンジニアとしてその部分にこだわり、個性として持ち合わせていてほしいとも思っています。
――普通は、特に新卒採用ですと「素直でいい子」が好まれるような気がするのですが……
小林:もちろんそういったタイプの方を否定しているわけではなくて、あくまで当社の見方にはなります。ただ、多少素直じゃない部分があるくらいのほうが、システムづくりにおいてはいい成果を出せると考えています。あんまり言うと、既存社員に怒られるかもしれませんが(笑)。
そしてもうひとつは、目的をしっかり持っているかどうかですね。面接でインフラエンジニアになる目的をしっかり語ってくれる人を採用するというのは意識しています。
――スキル面では何か基準はありますか?
小林:ITスキルは見ていないに等しいですね。正直なところ、即戦力が採用できた例はこれまで500名ほど見てきた中でも数名しかいません。大学のサーバを構築して運用したことがあるだとか、アルバイト先の会社でシステム運用を担当していたとか、そういうレアケースだけです。ほとんど全員を入社後に育成するつもりで採用しています。情報系の学部を出ている人でも即戦力とはまた違いますし、現在の日本でインフラエンジニアの即戦力採用は難しいと思います。
アプリケーション開発においては、実務に通用するレベルでプログラムを書ける人というのはたくさんいます。しかし、インフラでは本当に出会ったことがないですね。
そういった背景もあって、自ら学べるか・勉強する習慣があるかどうかも重要なポイントになってきます。「勉強することもとても多いし、高い知力やときには根性も要求される難しい仕事だよ」というのは採用面談で正直に伝えるようにしています。
もちろん、インフラエンジニアの仕事は、多くの企業のシステムを支える重要な仕事で、ロマンもやりがいもあるということも同時にお伝えしています。
――難しい仕事だというのを選考時に伝えるんですね。
小林:「スキルは入ってから育成します」というと「会社に育ててもらえる」と捉えてしまう方もいるので、そこはストレートに伝えます。最初はたとえ稚拙でもいいんです。とにかく考えて進んでみることができるか。それができれば、いずれどんどん形になっていきますから。
――さきほど「情報系の学部」というワードも出てきましたが、採用時に専攻は見ているんでしょうか?
小林:ほぼ見ていないですね。当社では面接と言わず、面談と呼んでいるのですが、専攻よりもその面談の中で、こちらの質問に一問一答ではなく話を広げられるかどうかのほうが大切だと考えています。もちろんわたしも話を盛り上げるための材料として、どういったことを大学で学んできたのかなど、事前に書類を読み込んで臨むようにはしています。
古閑:選考時に見るのとは別の話ですが、入社後の伸び方に傾向はあるかもしれません。
情報系をはじめ理系出身であれば、最初からロジカルシンキングで技術を吸収する方が多いですね。一方、文系の方であれば、IT系の知識は入社時は劣るものの、コミュニケーション能力が高い方が多く、人に聞いたり頼ったりしながら吸収して伸びていきます。もちろん、それは最初のうちの話で、何年か経てばみんな一人前のエンジニアになっていくのですが。
――ここまで挙げていただいたような観点で採用をしていると、入社後の活躍も期待できそうですね。
小林:そうですね。当社で取り扱うと決めたZTA(ゼロトラストアーキテクチャ)製品の紹介を新卒1年目に任せたことがありました。わたしたちは当初「新卒1年目だけでやり切るにはかなり難しいだろう」と思っていました。ところが、そのメンバーはNISTの解説文書を見つけて読み、アーキテクチャを理解した上で資料を作ってきたんです。わたしが質問したことにもしっかりした回答が返ってきて、それにはさすがに驚きました。
他にも社内システムを入社1年目で開発、全社への展開をおこなったメンバーもいます。初めての言語でプログラムを書いたり、データベースへアクセスしたり、大変だったと思いますがチームで開発をやりきってくれました。それぞれ得意・不得意の分野はもちろんありますが、「やったことないからできない」ではなく「とにかくやってみる」の精神を持ってくれていると感じました。
新人研修は社内公募でつくり「自分で考えて実践する」を徹底
――次に、エンジニアの教育についてお聞きします。さきほど入社間もないメンバーの活躍についても伺いましたが、即戦力採用ではない中でどのように育成されているのか気になります。
古閑:当社の新人教育は、毎年公募で手を挙げてくれた若手〜中堅くらいの社員約10名ほどが、教育担当として研修の設計、計画・実行までを担う形になっています。
年によって多少違いはありますが、大きく変わらないのが大部分が実践型の技術研修という点です。序盤にマナー研修と、「インフラとは」「ネットワークとは」といった基本知識をインプットする座学はしますが、それを終えたらあとはずっと手を動かしながら身につけていきます。
教育担当となったメンバーで研修の計画は立てるものの、スケジュールを引いてWBSを作成するのは、研修を受ける側に自分でやってもらいます。たとえば、Linux研修であれば、Web3層構造のシステムを作りましょうという課題があって、それをどれぐらいのスケジュールでできるか、まず自分でWBSを作ってもらいます。
講師役の人が手取り足取り設定方法やインストールの仕方について教えるというのは一切しません。「Linuxをインストールします」「パラメーターはこれです」といった要件だけはテキストに書いてありますが、どうやってそれを実現するかはすべて新人自らが考えます。
――なるほど。一般的に新人研修でイメージされるものとは随分違う印象を受けました。
古閑:そうですね。手を動かす部分だけでなく、講師とのレビューのスケジュールも設定して、自分の言葉で報告もしなければなりません。研修ではありますが、実際のプロジェクトにかなり近い形で進めていくことになります。Linux、WindowsのOSのインストールや設定、あとはネットワークの設計・構築を実機でやる研修内容になっています。
とにかく試行錯誤をしてもらって自分でやりきる力をつけてもらうのが大きな目的です。
――採用時に見極めているとは思いますが、中には研修についていけなくなってしまう方もいるのではないですか?
古閑:技術研修は厳しい内容にしつつ、技術や仕事を嫌いにならないようにというのは非常に気を配っている部分でもあります。できなかったことができるようになるおもしろさや、自分でできた達成感を得てもらうために褒めるところはしっかり褒める。そうやってある程度は楽しめるように方向性を定めて、進め方も工夫しています。
自分で考えさせるとは言え、もちろん先輩社員のフォローや、メンター役の社員の手助けもあります。そのために関係性の構築もしっかりやります。研修内容についてだけでなく、いろいろなことを話せるようになって、気軽に相談してもらえる仲になるとスムーズに進むことも多いです。ここは講師役の技量も問われますね。メンターは公募で集まったメンバーがそのまま担当するので、日々新人をフォローしながら一緒に進めていきます。それもあって毎年ほぼ全員が研修をクリアできています。
――研修期間はどのくらいですか?
古閑:新人研修期間は3カ月です。インフラエンジニアに限らず、多くのエンジニア職はお客さまへの報告や提案も必要になってきますので、人前で話す機会を持つためにLT会などもやります。自分の言葉で発信できる力は思っている以上に重要です。
そして7月からは実際の現場に入っていきます。基本的には、当社のメンバーがリーダーを務めている案件や、当社のメンバー複数名でこれから体制を作ろうという案件に入ってもらいます。
――研修を終えて入ってきた新人メンバーに対する、現場からの声はいかがですか?
古閑:研修内容は毎年集まったメンバーが決めているため多少の変動があります。ただ、自分たちが案件に入ってした苦労と同じ苦労を下の世代がしないように研修をつくるという思いを持っていることは共通しています。そのため配属直後に任される業務に適した内容になっています。
一方、ベテランのエンジニアからすると、もう少し先を見据えて調査能力や思考力をもっと徹底的に鍛えてほしいという意見もあります。その点は毎年改善しながらやっていますね。
――社内公募で新人研修をつくるやり方は創業時からですか?
古閑:いえ、初期のころは、よくある決まった内容を教育担当者が教えるスタイルでした。ただ、ここ数年で「先輩が後輩に教える文化を大切にしたい」という考え方が出てきて、今の方法に変わりました。
この研修のやり方のよいところは、新人が実践に近い研修を受けられるだけでなく、手を挙げた若手社員の成長機会にもなっているところです。教える側は改めて猛勉強しますし、人に教えるという経験は、技術の定着にも役立ちます。両者の育成の場といってもよいと思います。
リピーターも多い課題解決力のベースを培う研修サービス
――ここからは、他社向けの研修サービスについても伺えればと思います。研修内容は自社で実施しているものと近いのでしょうか?
古閑:当社の教育事業は大きく3つのサービスに分かれています。詳しくはこちらのページをごらんいただければと思いますが、たとえば、『チョイトレ』という月額10万円で50講座ほどを100名まで受け放題のサービスは、新人・若手の方を中心にミドル層のリスキリングにご活用いただくこともあります。
そして『トレプラ』というサービスが、当社の新人教育をほぼそのまま他社に提供しているものです。おっしゃるとおり、そのままですと脱落者が出てしまう場合があり得るので、講師がしっかりとフォローしていきます。開始時の意識づけが非常に重要で、研修の意図や目的、研修を通して課題解決能力を身につけることが大事であるといったことをお客さまの教育窓口の方を含めてしっかりお話をさせていただきます。
――実際に利用されている企業からの評判はいかがですか?
古閑:好評をいただいていて、リピートされる企業さまも多いですね。特に新人教育で利用するケースが多いので毎年決まった時期に依頼があります。
やはり自分で考えて、解決をして、それを報告もしてという力が身につけられる点を評価いただいているようです。報告のいろはといいますか、実務において絶対に必要となる課題解決力の下地ができあがる研修になっているのは確かだと思いますね。
「システムづくり」にプラスアルファ、BFTが発信を続けるワケ
――最後に、御社に興味を持って応募を検討されている方へメッセージをお願いします。
古閑:エンジニアという仕事は、技術でお客さまの抱えている課題を解決する仕事だと思っています。それはSI事業も教育事業も同じで、お客さまの困りごとが自分たちの働きによって解消して、満足してもらったり感謝されたりするのは大きなやりがいでもあります。
また、さきほどもお伝えしたとおり、特にSI事業では金融や公共など、大規模な案件が多く、社会に与える影響も非常に大きいです。自分の仕事が世の中を支えているという実感がありますね。
小林:当社は、大企業でもなく、制度が十分に整っているわけでもありません。ただ、社会に対して何かを発信して、社会全体がデジタル技術に対して選択の自由を持つことができればいいと考えている人にはぜひ来ていただきたいです。
エンジニアは、ただシステムをつくるということをしているだけでも仕事としては成り立ちます。でもわたしたちはそこにプラスアルファ、もう少し何かやりたいと考えているんです。だから教育事業もやっていますし、本を書いたりメディアに投稿したりもしています。当社のそういった活動に意義を見いだせて、社会全体がよくなることに共感をしていただける方だとうれしいですね。
もしかしたら一見無駄に思えることもあるかもしれません。それでも長い目で見ると自ら何かを発信するというのは絶対に人の成長につながります。一流と言われている方たちは、その多くが発信力の高い人です。当社のメンバーにもぜひそこを目指して欲しいと思っています。そういった人材を育てたい思いもあるので、社員への働きかけはもちろん、わたし自身も常に「発信していこう」と心がけています。
意欲がある方にとっては、成長できる環境ですし、どんどんチャレンジもできる会社だと自負しています。
――情熱を感じるメッセージでした。ありがとうございました。