私平田は、株式会社MIXIで「家族アルバム みてね」という写真・動画共有アプリのエンジニアリング組織の部長をしています。
現代のビジネス環境は、急速な変化と不確実性に満ちています。アジャイル変革だけでなく、ほとんどの変革プロセスにおいても、不確実性は避けて通れないものです。では、どのようにしてこの不確実性に立ち向かい、成功への道を切り拓くのでしょうか?
この記事では、解像度を上げ、雑音を排除し、モチベーションをコントロールするための具体的な方法について探っていきます。
目次
平田 将久 プロフィール
株式会社MIXI Vantageスタジオ みてねプロダクト開発部 部長。
2011年にミクシィ(現:MIXI)に新卒入社し、エンジニアとしてSNSの「mixi」を担当。2013年に転職し複数企業でエンジニアとしてプロダクト開発、チームのスクラム導入、組織変革などのマネジメント業務に携わった。米国シリコンバレーのスタートアップ企業でプロダクト開発やDX変革のリードを経て、2022年12月にMIXIに再入社。現在、みてねプロダクト開発部部長として「家族アルバム みてね」におけるエンジニアリング組織全体のマネジメントに従事。
解像度を上げる

問題解決の第一歩は、課題の解像度を上げることです。解像度の低い状態の課題は、あいまいで具体性に欠けるため、適切な対策を見つけるのが難しくなります。
世の中の課題リストは解像度の低い状態のものがほとんど
多くのビジネス課題は、初期段階では解像度が低い状態で存在しています。「売上が伸びない」「顧客満足度が低い」など、一般的な課題表現は具体性に欠けます。これらの課題をそのままにしておくと、効果的な解決策を見つけることは難しいでしょう。また、解像度が低いまま管理されたり、コミュニケーションの場に取り上げられたりすることで、問題の本質を見失い、誤った方向に進んでしまうリスクも高まります。
たとえば、コンサルティングにおいて、クライアントが「業績が悪い」と訴えるとき、単純に「売上を上げたい」という解釈をしてしまうことがあります。しかし、実際の問題は複雑で、多岐にわたる可能性があります。このような場合、問題の本質を見極めるためには深い洞察が必要です。
また、ある製造業の企業が「生産効率が悪い」という課題を抱えているとします。この課題だけを見れば、単純に「生産ラインを改善すればいい」と考えるかもしれません。しかし、実際に問題を深掘りすると、いくつかの要因が絡み合っていることがわかります。まず、労働者のスキル不足が一因である可能性があります。また、機械設備の老朽化やメンテナンス不足も影響しているかもしれません。さらには、生産計画が適切に立てられておらず、材料の供給が遅れていることも考えられます。
「生産効率が悪い」という解像度の低い情報が会議の場に取り上げられると、会議参加者が誤った認識を持つリスクもあります。たとえば、生産ラインの改善だけが議論され、労働者のトレーニングや機械のメンテナンスが見過ごされることがあります。これにより、現場では「トップダウンで行われる的外れな変革だ」と感じてしまい、社員のモチベーションが低下し、経営陣との信頼関係が損なわれる可能性もあります。これを防ぐためには、課題を深掘りし、具体的な要因を特定して解決策を議論することが重要です。
このように、問題を解像度高く分析することで、具体的な改善策を見つけることができます。たとえば、労働者のスキル向上のためのトレーニングプログラムを導入し、定期的な機械メンテナンスを行うことで、生産効率を劇的に改善することが可能になります。また、生産計画を見直し、材料供給のタイミングを最適化することで、さらに効率を高めることができます。
解像度を上げるために
それでは課題の解像度を上げるにはどうすればいいかを考えていきます。
とにかくヒアリングをこなし、インサイトを把握する
まずは多くのヒアリングを行うことが有効です。一人だけではなく、複数人に対して、時間が足りなければ複数回に分けてヒアリングを実施します。その際、しっかりとログを取ることも重要です。要約しながらメモを取るのではなく、発言されたことをそのまま変更せずに記録することで、「業績が悪い」という言葉に対して「売上を上げたい」という勝手な解釈がログとして残るのを防ぎます。
また、当事者に対してヒアリングを行うことも重要です。一次情報でなければ解像度の低い、あるいは間違った情報になってしまうためです。
ビジョンの整合性をチェックする
ヒアリングの際には、ありたい姿(ビジョン)についての整合性を保つことも重要です。とりあえず課題を解決できても、解決した後の状態が望むものでなければ、変革自体が無意味にされてしまうかもしれません。
変革を妨げる雑音を排除する

変革のプロセスにおいて、不安を煽る情報や不確実でマイナスな情報など必要のない雑音を排除することが重要です。雑音は、変革を推進する人や組織のモチベーションを下げてしまいかねない、問題解決の妨げとなる要因です。
担当窓口の結論
変革領域の責務を追っている部門がある場合、その窓口担当の方は全社でも知見がある人であると認識されているはずです。一方で窓口担当の方が変革責務を持っていない場合もあります(むしろ現状を維持しないと都合が悪い場合もある)。窓口担当の方が「それはできないんです」と言っていたからといって、できないと思い込んではいけません。
噂
噂や社内の風評も、変革を阻害する要因となり得ます。噂があるということは大勢の人がその認識を持っている場合が多いです。たとえば、「Aという変革は過去行われたことがあるけど全然だめだった」という噂があったとしたら、再びAという変革の案が会議の場で出たとしても、「過去にやってだめだったからだめですね」という意見に大半の票が入ってしまいます。その言葉が尊敬する人や上層の人から発せられた場合、その影響力はさらに大きくなります。
しかし、これらに惑わされず、実際の社内外のデータや事実、論理に基づいて判断を下すことが重要です。
変革をドライブさせる
変革を推進する上で、自身やチームのモチベーションを維持し、高めることが不可欠です。また、モチベーションだけではなく、実際に物事を前に進めることも重要です。
実現可能性のマッピング
| 解決実現性 | 難易度・コスト | |
|---|---|---|
| 課題A | 可能 | 低 |
| 課題B | 最高 |
物理的に不可能でなければ、大抵のことは実現可能です。重要なのは、不可能に見えることでも、試みる価値があるという姿勢を持つことです。
上記の図では課題Bは「不可能である」と明確には言わなかったとしても、あたかも不可能であるかのように会議の場で取り上げられたりします。しかし実際には難易度や投資が必要なだけで不可能であることではないこともあります。
変革アクション実行の意思決定
変革を進める際には、その一歩が今よりも良い結果をもたらすのか、あるいは取り返しのつかない事態を招くのかを冷静に判断する必要があります。

図のように変革案A、B、Cそれぞれがあったとします。
A案は初期的には逆効果になりかねないリスクのある変革案ですが、長期的には絶対にやったほうがいいと判断される案です。このA案というのは、現場の多くの人からは反対される可能性が非常に高いため、モチベーションが下がって頓挫するリスクもありますが、長期的な思考を大切にし、実行力を失わないようにする必要があります。
B案はアクションの効果が薄いけど良くはなるという案です。変化に対する投資の大きさ次第ではありますが、今より良くなるのであれば、「効果が薄いのでは?」という声には惑わされず、素早く実行する決断をすべきときもあります。
C案はA案と逆パターンです。短期的には良くなるけど長期的には逆効果になってしまうリスクがあります。これはやらないほうがいい、と判断されがちですが、未来は常に不確実なものです。長期的に良くなるか悪くなるかは予測はできても正確にはわかりません。したがって、細かく効果を測定し、効果がマイナスになり始めたときに即座に中断して元通りに戻せば良い、という判断もできます。
すべての変革アクションに共通して、可逆性があるものは、スピーディーかつ大胆に実行の意思決定をすると良いと考えられます。
とにかく素早い一歩を踏み出す
最後に、とにかく素早く行動することが重要です。不確実性の中でも、迅速に行動することで、解像度が高まり、次の一手を確実に進めることができます。たとえその一歩が完璧でなくても、行動することで次のアクションのヒントが得られ、最終的に成功への道が開けるのです。
とりあえずヒアリングを入れてみる、とりあえず今日中に叩き案を作ってみるなど、先行きが見えないしチームでも共通認識が取れていないからこそ、早めの一歩を踏み出すことが効果的です。一歩を踏み出すことによって解像度がどんどん上がっていき、正しい筋道も見えてきます。
これにより、「やり方がわからないから不安だ」という変革に対してマイナスのマインドセットが徐々に除去されていき、変革をドライブさせることができます。
慣れていない変革プロジェクトの叩き案は、共同作業で作ったり、合議で進めることが難しいことが多いです。一番解像度が高いアイデアを持っている人がまず素早くアウトプットをすることで、他のチームメンバーの「見えていないからやりづらい」という状況を打破できます。
まとめ
現代のビジネス環境では、変革のスピードと確実性が成功の鍵となります。課題の解像度を上げ、雑音を排除し、モチベーションを維持することで、変革プロセスを効果的に進めることができます。不確実な状況でも、迅速に行動し、継続的に改善を図ることで、最終的に成功へと導くことができるのです。まずは小さな一歩を踏み出し、その経験から学びを得て、次のステップへと繋げていきましょう。
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(文:平田将久)
