「今の仕事で結果を出せていなかったり、思うような仕事を獲得できなかったりするのは、きっと自分のスキルがまだ足りないからだろう。石の上にも三年というし、諦めずに頑張らなくちゃ」……そんなふうに思っていませんか。

自分よりずっとアドバンテージがある人が羨ましくなる仕事をしているのを見るにつけ、「私だって、あの人のように○○だったら、あのくらいの結果は出せるのに」と羨んだり、足りないものばかりを数えたりしていませんか。

もしかしたら、うまくいかないのは、何かが足りないからではなく、勝負しようとしている場所が悪いせいかもしれません。たとえば、騎馬民族の村で馬に乗れても「普通」だと思いますが、現代日本で馬に乗れる人はレアなので価値があります。「馬に乗れる」という同じスキルでも、重宝される場所もあれば、見向きもされない場所もあるでしょう。

もちろん、成長するための努力は必要です。しかし、思うような仕事をして結果を出すには、今自分が持っているスキルの価値を最大化できる場所を選ぶことが重要です。

低身長がコンプレックスだった友人が「小柄」を武器に大成功


「自分を変えなくても、勝負する場所を変えることで輝ける」と私が考えるようになったのは、“小柄スタイリスト”として活躍する友人のHappYさんの影響が大きいです。

彼女はもともとファッションが好きでしたが、身長144cmと超小柄なのでサイズが合う服が全然なく、試着室で何度もため息をついてきたと言います。出産後は乳幼児を連れて買い物に行っても試着ができないので、ネット通販で服を買うようになりましたが、モデルはみんな身長が高い人ばかり。着用イメージが違いすぎて、参考になりません。

似合う服が買えないことが小柄さん共通の悩みだと気づいた彼女は、「だったら、自分が買ってみてどうだったか、どうコーディネートすれば素敵に見えるか、小さいサイズの服や靴を買える場所の情報を発信すれば、喜んでくれる人がいるに違いない」と考えました。

超小柄だからこそ、小柄さんのリアルな悩みもニーズも手に取るようにわかります。これは平均身長の人にはできないことでしょう。コンプレックスを強みにしてから、彼女の人生はどんどん変わっていきました。

Instagramでの発信を見た阪神百貨店から声をかけられ、小柄さん向けにファッション講座やトークショーを開催したり、小柄さんのお買い物に同行を仕事として確立させたり……。現在は、Instagramのフォロワーは3.6万人になり、電子書籍「144cmでもできた! 超小柄さんのスタイルアップコーデ術」を出版するなど、活躍の場を広げています。

彼女の身長が144cmであるという事実は変わっていません。しかし、捉え方を変えて、コンプレックスを強みにし、勝負する場所を変えた(小柄さんに特化した)ことで、望む仕事を手に入れられました。

もし、彼女が「小柄だからこそ輝ける場所」を選んでいなかったら、今のような成功はしていないでしょう。自分の価値を最大化できる場所を見極めることがいかに大切かを実感しました。

取材して文章を書ける力をビジネス領域のコンテンツ制作に


私はもともと旅が好きで文章を書くことも得意だったため、ライターとして旅行系の記事を多く書いてきました。以前は海外の政府観光局や自治体が主催するプレストリップ(取材旅行)にも参加して取材し、トラベルメディアに寄稿していたのですが、コロナ禍で状況が一変しました。

私にとって「取材」は、未知のものに触れ、見聞きし体験してインプットした情報を、自分の中にあるフィルターを通してアウトプットする作業です。旅好きということもあってトラベルライターは天職だと思っていましたが、海外どころか県外に出るのもけしからんという雰囲気の中で、できることはほとんどありませんでした。当然、収入も大幅減です。

そこで私が「うまくいかないのは自分のスキルが足りないせいだ、もっと文章力を磨こう」という思考に陥らずに済んだのは、自分の価値を最大化できる場所を見極めることが大切だとHappYさんから学んでいたからだと思います。

私の強みは、対象物(場所・もの・人)の魅力を見つけられることと、インプットした情報を自分フィルターでろ過し抽出されたエッセンスを文章にできること。そういった強みを発揮できるのは、なにも旅行系取材だけではありません。

私が自分の価値を最大限に発揮できる場として選んだのは、ビジネス領域のコンテンツ制作でした。最初は「ビジネス経験に乏しい私にできるだろうか」と不安もありましたが、見聞きした情報を自分のフィルターでろ過して文章にすることはずっとやってきたことなので、それぞれの業界特有の知識を身につけさえすれば十分に戦えると考えました。

また、ビジネス領域の記事を書くうえで、正社員として長く働いた経験がないことがコンプレックスでしたが、これも捉え方を変えれば、中の人にとっては当たり前すぎて気づけない魅力をすくい取れる強みになり得ると気づいたのです。

勝負する場所を変えたことで、「取材して文章を書く」という基本スキルは同じでも、仕事が増えていきました。企業のコンテンツ制作は潤沢な予算がある場合が多く、原稿料も以前より大幅に上がり、一つひとつの仕事に時間と熱量を注いで向き合えるようになりました。

おかげでクライアントにも満足してもらえて継続受注につながり、署名記事を見た別の会社から仕事のオファーが入ることもあり、よいスパイラルに身を置けていると感じています。私が旅行系だけに固執していたら、今の状態は手に入らなかったでしょう。

「自分を変える」よりも「勝負する場所を変える」


HappYさんや私はフリーランスなので、請ける仕事を変えることが(メンタルブロックを外す必要があったとはいえ)比較的容易だったのかもしれません。もし会社員で、今の仕事で結果を出せていないと感じているなら、「次の企業に行く」のも一つの解だと思います。

「まだスキルが足りない、もっとできるようになってから……」と思うかもしれませんが、「よし、十分に実力がついたぞ!」と思える日はいつ来るのでしょうか。5年経っても10年経っても、上には上がいるはずですし、自分もどんどん年を取っていきます。

実力を伸ばす努力を放棄していいわけではありませんが、今の仕事で結果が出てないなら「自分を変える」より「勝負する場所を変える」ほうが結果につながりやすいです。とくに、すでに一定のスキルが身についていて伸びしろが少なくなってきている人であれば、その傾向が強いと思います。

仕事で結果を出したい、思うような仕事を獲得したいなら、自分が(まだ)できないことに目を向けるよりも、勝負する場所を変えること。新しい場所では、コンプレックスでさえもあなただけの強みになるかもしれません。

(文:ayan

presented by paiza

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