フルリモートで、音声コミュニケーションツール「VOICHAT(ボイチャ)」の開発メンバーとして働いている40代のエンジニアです。

最近ではオフィス回帰の流れが話題になることも多いですが、「リモートワークを続けたい、できればフルリモートで」と思っているエンジニアは多いのではないでしょうか。
私自身、エンジニアはリモートワークとの親和性が非常に高いと思っていますし、リモートでできる仕事のために出社したいとは思いません。

しかし、「リモートでもオフィスでも何も変わらない」「フルリモートを認めない会社は無理解」というわけではありません。
まだまだ実績の少ない働き方を続けたいのであれば、エンジニア側にも会社に納得してもらえるだけのアウトプットが求められます。

この記事では、オフィスワーク・ハイブリッドワーク・フルリモートの経験をもとに、フルリモートで働くためのポイントを述べていきます。

エンジニア経験22年!オフィス・ハイブリッド・フルリモートをすべて経験

まずは自己紹介を兼ねて、私の今までの経歴と働き方をざっと振り返ります。

①オフィス勤務 約17年

新卒で入社してから17年、同じ会社でオフィス勤務をしていました。
請負やSASによる開発業務が主で、チームの人数は案件によって2~20人でした。

②オフィス→フルリモート→ハイブリッドワーク 約3年

40歳を前に、最後のチャンスだと思い、転職しました。チームの人数は数名。
まもなくコロナ禍でフルリモートになり、その後、水・木のみ在宅OKというハイブリッドワークに移行しました。

③フルリモート(現職) 約1年半

曜日を固定したハイブリッドワークを非効率に感じ、やはりフルリモートで働きたいと再度転職しました。
現職のVOICHAT(ボイチャ)株式会社には物理オフィスがなくフルリモートで、開発チームは5人。自社サービスである「VOICHAT」上でコミュニケーションを取っています。 

エンジニアはリモートワークとの親和性が高い職種

私は新卒から17年はオフィス勤務でしたが、その終盤のころ、「全国にいるエンジニアが社内ポータルサイトでテキストコミュニケーションを取りながら開発する」という進め方のプロジェクトを経験しました。
当時はリモートワークという発想もなく、全員が各地のオフィスに出社していましたが、直接会わなくても仕事ができることに衝撃を受けたのを覚えています。

実際にリモートワークを体験したのは、コロナ禍になってからですが、在宅の働きやすさを実感するとともに、あらためて、エンジニアは働く場所の影響を受けにくい、直接会わなくても仕事が回る職種だという確信を得ました。

サーバーや機械を触るような作業以外はPCがあればどこでもできますし、1人の作業も多いので、チームメンバーとの連絡が非同期のテキストでもとくに困りません。急ぎの際は電話もあります。
リモートワークのメリットは各所で言い尽くされているのでここでは省略しますが、曜日を固定してのハイブリッドワークにストレスを感じたこともあり、エンジニアには、必要なときだけ出社する原則フルリモートが最も適していると感じました。

また、コロナ以前は、離れているメンバーに口頭で説明したい場合は、ファイルや画面キャプチャをメールなどで送って電話で別途説明する必要がありました。
今は画面共有しながら話せるツールもあるので遠隔でのコミュニケーション効率も飛躍的に向上し、ますますリモートワークしやすくなっています。

エンジニアがフルリモートを継続するための鍵

リモートワークしてもいいなら、フルリモートがいい。
でも、経営陣の意向で、ハイブリッドワークしかできない。
あるいは、フルリモートはできているけど、できれば出社してほしいという圧が強い。
そんな状況にあるエンジニアは多いと思います。

しかし、リモートワークという概念が地球上に広まってから、わずか数年。
会社側がいきなりフルリモートOKとは言えないのも、仕方のないことです。
図らずもリモートワークのパイオニア世代になってしまった私たちは、自分で道を切り拓いていくしかありません。

■「リモートワークはサボる」問題の本質

そもそも、なぜリモートワークを歓迎しない会社が多いのか。
それは、「働く」の定義の問題です。

「優秀な人が定時で仕事を終わらせて帰れば0円なのに、スキル不足の人が残業すれば残業代が出る」というジレンマは、たびたび話題になるオフィスの問題点です。
また、裁量労働制でも、オフィスに出社しない日は休みと見なされます。

つまりオフィス出社では、原則として労働時間(拘束時間)が報酬の対価。
成果(品質)に対する評価は、インセンティブやボーナスで表される仕組みです。

リモートワークにあたって避けて通れない「リモートワークはサボる」問題の本質は、労働時間の保障を求める企業と成果だけを見てほしい働く側とのズレにあります。
働く側がいくら成果を主張しても、会社からすると今の論点はそこではない、ということになるのです。

■営業職に学ぶ、会社にフルリモートを納得させるアウトプット

オフィス出社を続けてきた長さを考えれば、労働時間、つまり確実に在席していることを確認したがる企業側の姿勢は、一概に「古い」と責められるものではありません。
新しい習慣であるリモートワークを定着させるには、成果だけでなく労働時間に相当するものを提示していく必要があります。
フルリモートとなると、なおさらです。

ここで参考にしたいのが、外回りの営業職の働き方です。
直行直帰が許され、出先での行動を逐一報告しろと言われることもない営業職は、フルリモートと共通する部分の多いワークスタイルです。
成果と労働時間の両面で、営業職とエンジニアを比較して考えてみました。

成果のアウトプット

営業職には、「営業成績」という成果を客観視できるわかりやすい指標があります。
とはいえ、営業成績が悪いから働いていないと見なされるわけではありません。
たとえば、営業リストの作成や新規訪問した数といった過程の行動も「働いている」の根拠となります。

フルリモートのエンジニアに置き換えると、営業成績は「納期を守ってタスクを完了させること」ですが、進捗報告や現状報告、品質の高さを示す材料(障害の少なさ、クライアントからの評価の言葉など)を揃えることも成果のアウトプットになると言えそうです。

そして、顔や姿が見えないリモートワークでは表情や雰囲気で伝わる情報量が少ないので、これらのアウトプットはより積極的に行う必要があります。
迅速に、聞かれる前に、「言わなくても伝わるだろう」ではなく意識的に言葉にする。
コミュニケーションが苦手だからリモートワークがいい、という意見もたまに目にしますが、実はリモートワークのほうがコミュニケーションが求められます。

労働時間のアウトプット

社員契約の場合は完全歩合制は適用できないので、営業職であっても、労働時間に応じた一定額の賃金が保障されます。
では、何が営業職の労働時間の根拠になっているかと言うと、以下の3点です。

①原則、常に連絡が取れる状態にあること
②居場所が周知されていること
③連絡を取れない事情があるときは、その理由が周知されていること

基本的にいつでも連絡が取れるなら、さほど後ろめたいことはしてないと推測できますし、「A社で打合せ」だと周知されていれば、どこで働いているかも電話に出ない理由もわかります。
これらと成果を合わせて考えれば、「姿は見えないが、毎日働いていると見なしても問題なさそうだ」と判断することができます。

フルリモートのエンジニアに置き換えると、スケジュールの共有と素早いレスポンスということになりますが、営業職のように頻繁に電話を使うこともオフィスに顔を出すこともないので、もう少し存在をアピールする必要がありそうです。

Webカメラでの監視はわかりやすい答えのひとつですが、私はそこまでは必要なく、むしろあからさまに監視されているというストレスが大きいと考えています。
私の経験上、必要なのは以下の2点。

・現時点の在席状況を可視化すること
・在席中は、いつでも会話できる状態にしておくこと

PCの前にいるかいないかがチーム内で周知されており、在席となっているときはいつでも同期コミュニケーションが取れる。
そのうえで仕事の品質とスケジュールに問題がないのであれば、労働時間を提供している証明としては十分だと思います。

■VOICHATでの働き方の例~いつでも話せる仕組みをツールで整備

現在私は、音声コミュニケーションツール「VOICHAT(ボイチャ)」を開発しているVOICHAT株式会社で、実際にVOICHAT上でコミュニケーションを取りながら働いています。

約15名のメンバーは全員がフルリモートで、就業中はVOICHATにログインしています。
カメラはないのですが、メンバーのアイコンがずらりと並び、今誰がどんな状況なのか、誰と誰が話しているのかが可視化されています。
ステータスがわかるので、話したいと思ったら相手がいるルームに移動するか自分のルームに呼び出すかして話しかけます。

誰が在席しているかが見え、話したいときはその人の近くに行くか呼ぶかするという点ではオフィスのコミュニケーションに似ています。また、どこにいるのかがわかり、話しかけてもすぐに応答が返ってくる点では、営業職の働き方にも似ています。

1年以上VOICHATを使っていますが、チームメンバーの状況が見えない不安も、監視されているストレスもありません。
これは手前味噌ですが、物理的に遠く離れている人とも移動の手間もなくすぐ話せる、相手の状況が見えるので遠慮せず話しかけられるという点において、むしろオフィスより快適なコミュニケーション環境だと感じているほどです。
縦長のコンパクトなサイズ感なので、PC作業中に邪魔になることもありません。

先述した「厳しく監視しなくても、現時点での在席状況が可視化されていつでも話せる状態であればフルリモートは可能」というのは、日々の私の実感でもあります。

もちろんVOICHAT上でのコミュニケーションだけでなく、プロジェクト管理ツールの更新を漏れなく行う、アプリのアップデートの頻度をできるだけ上げる、IT関連の気になるニュースの話を全体に共有するなど、エンジニアメンバー全体にアウトプットを意識する習慣づけができていると思います。

「安易なハイブリッドワーク」の罠に要注意

「たしかにフルリモートが理想だけど、まあハイブリッドワークでも……」と考える人も多いと思います。
しかし、安易なハイブリッドワークでは、フル出社以上にストレスが溜まることもあります。とくに転職活動するのであれば、妥協せずフルリモートを条件に探すことをおすすめします。

■生産性の高いハイブリッドワークの運用は、会社側の負荷が高い

ハイブリッドワークを導入するのであれば、「オフィスでしかできない仕事かどうか」とかいう切り口で考えるのが合理的です。
たとえば、サーバー管理のために交代で出社する、といったケースがこれに当たります。

しかし出社の必要性のあるタスクが不定期であるのにハイブリッドワークを導入しようとすると、「出社の頻度を決めること」と「オフィスでしかできない仕事をすること」を両立させる難易度は一気に上がります。
会社側には、タスクの配分からリモート手当や人事評価の仕組み作りまで高い負荷が持続的にかかるので、円満で生産性の高い運用は意外と難しいのです。
エンジニア側の努力だけでは実現しづらいという点でも、ハードルの高い方法です。

■安易なハイブリッドワークが、最も生産性が低い

仕組みまでは作れないしリモートでもできる仕事かもしれないけど、週2日くらいは出社してほしい……
現状、エンジニアのハイブリッドワークはそれくらいの安易さで運用されていることが多い気がします。

私もコロナ禍で曜日固定のハイブリッドワークを経験しましたが、非常に疲れる生活でした。
重いPCを運んで長時間かけて出社するストレス。朝夕のルーチンが安定せず生活のリズムが乱れるストレス、コミュニケーションを取りたい相手とすれ違いになるストレスなどが積み重なり、これならフル出社のほうがラクだし生産性も高いと感じていたほどです。

私は転職を選びましたが、その会社で働き続けるのであれば、少しずつでもリモートの日を増やしていく、明確に出社を指示されない限りは忖度せずリモートにするなど、環境を変えていく努力をするのもいいと思います。
これは自分のためだけでなく、後に続く後輩たちのためにもなるはずです。

まとめ

エンジニアはフルリモートしやすい職種ですが、現状「さあ、自由にフルリモートしてください!」と言ってくれる企業は少数派です。
フルリモートで働きたい、フルリモートを続けたいと思うのであれば、会社まかせや人まかせではなく、自力で理想の環境をつかみ取っていく気合と行動力が必要です。

そしてもちろん、フルリモート=理想の環境ではありません。
リモートワークはどの会社もまだまだ手探りなので、あらゆる局面で「なぜそうするのか」「このままでいいのか」と考え続けなければなりません。
自分がフルリモートできるかどうかだけでなく、フルリモートに適したチーム作りに積極的に貢献することも、フルリモートを続けたいエンジニアが担う重要な役割のひとつだと思います。

(文:VOICHAT株式会社 小林大祐)

presented by paiza

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