エンジニアのみなさんは、普段からアウトプットをしていますか?
エンジニアが多くのアウトプットをする、とくにテックブログや書籍(商業出版でも、同人誌でも)を書くことは良いことだとわかっていても、いざ自分がやろうと思うとなかなか難しいのではないでしょうか。
同じ悩みを抱える私が折りに触れて行っているのは、“できる研究者”からアウトプットの極意を学ぶ、ということです。そして、その極意は『できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか』という書籍で述べられています。
「自分はエンジニアであって、研究者じゃないしな」と思われたかもしれません。
この書籍は海外の本を和訳したもので、もとのタイトルは
How to Write a lot
つまり、「たくさん書く方法」について書かれています。日本語のタイトルには「研究者の」となっていますが、私は「書く」ことをしているあらゆる職業の方に役に立つ書籍だと思っています。
目次
アウトプットができない理由

この本の構成は、「書けない理由」を挙げてはそれを論破するような形になっています。読み進めるうちに、読者が「いや、でも・・・」と言いたくなる余地がどんどんとなくなっていく、ある意味ストイックな本です。
ここで挙げられている「書けない理由」とは、たとえば以下のようなものです。
・時間がない
・新しい道具、PC、等々がなければ
・気分がノるのを、ネタが降ってくるのを待っている
本書では、これらはすべて「言い訳である」と言い切っています。しかも、精神論ではなく過去の研究データを引用して、です。
たとえば3つ目の、「ネタ待ち」について。
大学教員を対象に、以下の実験を行った研究者がいました。
実験に参加してくれた教員を、
1.緊急性のない執筆を禁止するグループ
2.50回分の執筆時間帯のスケジュールを組み、気が向いたときだけ書くグループ
3.50回分の執筆時間帯のスケジュールを組み、執筆を欠かすとペナルティを課すグループ
の3つにわけ、それぞれについて1日あたりの執筆ページ数と、次に独創的なアイデアが浮かぶまでの平均日数を計測しました。
その結果、3のペナルティ有りの強制執筆グループは、1の緊急時以外執筆できないグループに比べて16倍のページ数を書くことができたそうです。ここまでは「それはそうだろうな」と思われるかもしれません。
興味深いのはもう一つ、独創的なアイデアが浮かぶまでの平均日数です。
1の緊急時以外執筆できないグループはアイデアの浮かぶ間隔が5日だったのに対し、3のペナルティ有りの強制執筆グループはなんと1日と、こちらも強制執筆グループの圧勝だったそうです。つまり、「ネタが降ってくるまで待つ」ことをしても実際にネタは降ってこず、「毎日書く」等頻度を上げて&強制力を持って書いたほうが結果的にネタも生まれるという結果となりました。
このように、さまざまな書けない理由=言い訳を、精神論+データで打ち壊すところから本書は行ってくれます。
継続的にアウトプットする方法

では、これらの書けない理由に負けず、コンスタントに書くことやアウトプットを続けるためには、何をすればよいのでしょうか。
本書で述べられている中から3つのポイントをご紹介します。
■執筆スケジュールと具体的な目標を立てる
先に触れたように、気が向いたときに書くのではなくスケジュールを立ててコンスタントに書き続けるべし、というのが本書の主張のメインです。
毎朝この時間帯に書く、といった形で、スケジュールに組み込んでそれを守ることが重要です。
このとき、その日に何を達成するかの具体目標も重要です。
・最低*文字書く
・*章の*項を書く
・新しい記事のアウトラインを作成する
などが例として挙げられます。
■執筆状況を把握する
スケジュールと目標を立てたら、自分がアウトプットをする場合のスピード、生産性を可視化することもあわせて行います。本書は論文執筆にフォーカスした書籍なので「ワード数」という単位を用いていますが、つまり「自分が1日にどのくらいのワード数を執筆できるのか」を計測し、可視化しようという主張です。
原著が英語のため単位がワード数になっていますが、日本語の文章を書く場合は文字数で良いでしょう。
たとえば1日に1000文字を書ける、という実績値が出た場合、3000文字の原稿を書くには執筆3日+校正や見直しなどの時間がかかる、と見積もれます。
タスクに対して見積もりを行い、自身の作業スピードを計測し、見積もりにフィードバックする。
まさに、テックチームに属する我々が日ごろ行っていることと通じますね。
■まずは書く、あとで直す
執筆の生産性を高める方法として、完璧な第1稿を書き上げようとするのではなく、とりとめなくてもよいのでまず書いてから直すという方法を勧めています。
完璧主義になってしまうと、文章がなかなか書けません。書いては消しを繰り返すことも増えます。そうなると、たとえば執筆スケジュールから遅れたり1日あたりの文字数が自分の想定よりも大きく下回ってしまったりと、執筆のモチベーションを下げる原因となってしまいます。気分に左右されずに日々書くべし、というのが本書の主張ではありますが、それを妨げる要因は少ないほうがいいですよね。
第1稿を書く際には「進んでいる実感」を得ながらとにかく書いていき、一通りの文章ができあがったところで質を高めていく。このやり方のほうが、良いアウトプットを素早く得ることができます。
楽しく・たくさん書ける自分になる

本書の最後には、「人生を楽しもう」という記載があります。
ここまでにご説明したように、スケジュールを立て、日々目標を達成する。そうすると、達成感が得られて楽しくなってきます。楽しく書き進めていると、まとまった量のアウトプットができあがります。本書では論文や書籍を指していますが、エンジニアにとってはテックブログの記事であったり、人によっては技術書かもしれません。アウトプットには周りからのフィードバックや賞賛が得られ、また次のアウトプットの糧になります。
たくさんのアウトプットをしているエンジニアは、きっとエンジニア生活を楽しんでいる人です。本書をきっかけに、そのようなエンジニアに向かって一歩踏み出してみるのはいかがでしょうか。
(文:伊藤由貴)

