みなさん、アイデアは豊富ですか?
僕は文章を書くことがメインの仕事ですが、残念ながら、ネタは常々枯渇しています。書きたいことがありすぎて、書く時間もたくさんあって、毎日精力的に情報発信をしている人は少数でしょう。
最初のうちは発信することがいっぱいあると思っていても、アウトプットを続ければ続けるほどネタは枯渇していきます。
エンジニアの人でも、プログラムを書くときに「何かが足りない」「もっと最適なコードがあるはず」と感じる状況ってありませんか?
悩んでいる、困っているときに天からの啓示が、そう、アイデアが降ってきたら最高だと思いませんか? ひらめきって偶然の産物だと思っていませんか?
実はそんなことはありません。ひらめきは、意図的に起こせる。それを教えてくれる書籍を紹介します。
たった100ページの本ですが(しかも40ページは解説なので、実質は60ページ)、アイデアが生まれる原理を5つのステップですべて解説しています。というわけで、僕の心に響いたフレーズを引用しながら感想を述べていきたいと思います。
そもそも総文量が多くないので、あまり引用しすぎると全文公開になってしまうのが難しいバランスです。
目次
心の技術は五つの段階を経過してはたらく
本書ではアイデアが生まれる原理を5つのステップですべて解説しています。
その5つのステップが以下の通りになります。
- 第一の段階は資料を収集すること
- 第二の段階は集めた資料を咀嚼する段階
- 第三の段階は消化過程
- 第四の段階が、ふとした瞬間のアイデアの訪れ
- 第五の段階が現実社会への適合
とくに重要なんだけど、無視されがちなのが第一段階の資料収集です。本書では資料を「特殊資料」と「一般的資料」の2つに分類していますが、いずれにせよ情報収集は本当に大切な要素になります。
体系的に原料集めをやる代わりに霊感が訪れてきてくれるのを期待して漫然と坐りこんでいたりする。
34ページより引用
これも本書内に書かれている言葉なんですが、あるある過ぎてつい吹き出してしまいました。漫然と座ってたってアイデアは降ってこないんですよ。
第二段階は可能な限り集めた資料を読み解いていくフェーズです。とにかく脳内に情報を入れてください。
第三段階でようやく待ちのフェーズに入ります。情報を十分に吸収し尽くしたらひとまず問題を完全に放棄して、自分の想像力や感情を刺激するものに関心を移す段階となります。「孵化課程」とも言われます。要は資料のことは忘れて好きなことしろってことです。
そうすると、突然インスピレーションが天から降ってくる瞬間があります。お風呂に入っていたり、筋トレをしていたりするときに、ふと名案が浮かぶアレです。これが第四段階で、アイデアが生まれる瞬間です。そして往々にして手元にメモ帳などの記録媒体がないので、灰色の脳細胞を活性化させて忘れないようにしましょう。
そして第五段階として、そのアイデアを具体化し、現実社会で活用できるよう展開します。
これがアイデアを生み出し、活用する5つのステップです。本書では具体例を入れながらもう少しだけ一つひとつの項目に説明を割いていますが、大枠はこんな感じです。
脱却法1. 得た公式はすぐに活用する
第二は、説明は簡単至極だが実際にこれを実行するとなると最も困難な種類の知能労働が必要なので、 この公式を手に入れたといっても誰もがこれを使いこなすというわけにはいかないということである。
19ページより引用
僕も持ってるノウハウは全部公開してOK派なのですが、まさにこの2つの公式が代弁してくれています。知ることと理解することは別ですし、さらにその内容を信用して実行できる人は一握りです。
僕はセミナー参加者に向けて行動を促すために「情報発信の練習として、FacebookやTwitterで写真をアップしてタグ付けしてくれて大丈夫ですよ」とよく言っているのですが、実行に移す人は片手で数えられるぐらいしかいません。
「いい話を聞いた」、「参考になった」というだけで、また別のセミナーに行くのが大多数なんです。本当に驚くほど少ないんですよ。
脱却法2. まずは原理を学ぶ
25ページより引用
これも首がもげるぐらいうなずく言葉で、原理をしっかり理解しておくと、状況に合わせて対応できるようになるんです。
具体的な方法ばかりを集めていると、覚えることばかりに時間を取られて行動に影響が出ますし、なによりそのやり方が使えなくなったときに、またあらためて探し直すことになります。いわゆるノウハウコレクターです。それ、完全に時間の無駄ですよね。
この書籍(アイデアのつくり方)も原理を凝縮したからこそ、100ページという少ないページ数で仕上がってるんでしょう。
脱却法3. 既存の要素を組み合わせる
アイデア作成の基礎となる一般的原理については大切なことが二つ
- アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない
- 既存の要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は、物事の関連性をみつけ出す才能に依存するところが大きい
28ページより引用
- 事実と事実の間を探ろうとする心の習性がアイデア作成には最も大切
- この心の習性は練磨することが可能
31ページより引用
まったく新しいアイデアなんてもはや存在しないんです。
世の中にはたくさんの情報があり、その組み合わせによって新しいアイデア(だと感じるひらめき)が生まれるわけです。
そして重要なことが一つ、そのアイデアを生み出すための「心の習性」は訓練することで高められると明言されています。
- 目的のために心を使うには一つの技術がある
- アイデア作成にはつねにこの技術が意識的あるいは無意識的に用いられている
- この技術は意識して修練でき、それによってアイデアを作り出す能力は高められる
33ページより引用
僕もよく意識的、無意識の行動の話をしますが、人間って意識してないと無意識なんですよ(語彙力の欠如)。いかに意識的に行動できるかによって、得られる事象は大きく変わります。
プログラムもそうですよね。過去の偉人が作ったプログラミング言語やコードをいかに組み合わせるか、その組み合わせによっていままで存在しなかったサービスが生まれることも珍しくありません。
たとえば世界的サービスに発展しているメルカリですが、基になった考えはフリーマーケットです。代々木公園で開催されていたものを、インターネット上に再構築したことで、日本全国、世界中で利用されるサービスになったわけです。
染谷流インプットのコツ
コツ1. 足りない知識を書籍などで補う
本を読むことに関してですが、最初のうちは自分の関心のある分野、自分のレベルに合った内容の書籍で構いません。文庫本でも良いですし、ビジネス書、エッセイ、雑誌でもOKです。ただし読み流すのではなく、気になったページに付箋を貼ったり、覚えておきたいフレーズをノートにメモしたりして、じっくりと読んでみることをお勧めします。
本を読むことに慣れてきたら、自分の好きなテーマに隣接したジャンルの書籍を読んでみると、知識の幅が広がります。さらに、現在読んでいる書籍より1段階上のレベルの書籍にチャレンジしても良いでしょう。理解するのに多少苦労する類の書籍を読むことで、自分の読解力を向上させることができます。
一つレベルが上がった段階で今まで読んでいた書籍を再度読むことで、それまでは気付かなかった筆者のメッセージを読み解くことができるようになっています。
書籍は一度読んで終わりではありません。自分のレベルに応じて得られる情報量は変化しますので、ときを置いて何回も読んでみましょう。
コツ2. 現実社会で効率的にリサーチする
書籍から情報を得ることもリサーチの一種ですが、実際に現場に出ておこなうフィールドワーク型のリサーチも重要です。インターネットで検索をすることに固執してしまうと、視野が狭くなってしまいます。自分の気付かないヒントは現実社会にこそ溢れています。
たとえば、自分の取り扱いたいサービス、あるいは同ジャンルを取り扱うショップに行くことも良いでしょう。サービス自体の比較もできますが、ショップには販売員(アドバイザー)というその道のプロが居ます。
地域の特産品や観光地に詳しいのは、市町村が運営するアンテナショップのスタッフです。今年の流行色やデザインに詳しいのは人気アパレルショップの店員さんです。
専門家の生の声、生の接客を体験することで得られる情報は宝の山です。接客を受けて、「あ、おもしろそう」と思ったら、それは人の心を揺り動かす重要なキーワードです。あなたの購入意欲を動かしたトークの内容はしっかりメモをしておきましょう。
街を歩く人をひたすら眺めることも、一つのリサーチです。人間の行動観察をすることで、今まで気付かなかったポイントに気付くこともあります。
2023年の秋冬ファッション、本当に鮮やかなレッドや、クラシカルなチェック柄は流行っているのか? 単なる紙面上の流行ではないのか? どの年齢層がその流行に乗っているのか? 自分の目で情報の検証をおこなうことで、他の人にはない、自分だけの生のデータを得ることができます。
毎日、お気に入りのお店で同じメニューを食べるのではなく、行列ができているカフェに並んだり、反対にまったく流行っていない定食屋で食事をしてみたりしたらどうでしょう。なぜこのカフェのコーヒーは並んでまで飲みたいのか、なぜこの定食屋は人気がないのか、といった違いを知ることができます。
情報はどこにでも転がっています。気付くかどうかはあなたの観察眼しだいなのです。
インプットは、長期間コンテンツを更新するためには基本中の基本です。アウトプットを意識してインプットすることで、読解力も向上しますし、視野も広がります。
なにを得たいのか、なにをアウトプットしたいのかを意識して学ぶことで、気付くことや吸収力は大きく変わります。漫然と本を読む、勉強会に参加するのではなく、しっかりと目的意識を持って、効率的に学習しましょう。
無意識にやっていることもある
ちょっと前の項目で「意識的にやれるようになることが重要」と書きましたが、振り返ってみると、僕も本を書くときに無意識的にやっていました。
たとえば著書である『ネットショップの教科書』(2014)は企画から発売まで1年半かかっていますが、半年以上はリサーチばかりしていました。
参考資料を読み漁りながら、項目を出しては削り出しては削り、ふと良いテーマが思いついては項目に追加し、それを1~2か月続け、原稿を書いたのは実質2か月ぐらいでした。
2018年に出版した『複業のトリセツ』や2020年に発売した『副業力』も同様です。原稿を書いたのは2か月程度ですが、独立してからの9年間はずっと副業について調べたり、考えたり、実践したりしてきました。2018年は今ほど複業や副業といった言葉が一般化されておらず、自分自身の経験があったからこそ、あの書籍ができたんだと思います。
というわけで、アイデアに枯渇しているそこのアナタ! それは単なるインプット不足なので、泣きながらいろんな資料を読み込みましょう(常に第四段階にいる僕より)。
(文:染谷 昌利)