こんにちは!星影(@unsoluble_sugar)です。
前回の記事「基礎から学ぶ、NFTとは?」では、NFTの概要についてご紹介しました。詳細な深掘りは省いたため、あくまで入り口をチラっと見た程度のレベルです。
「実際にNFTのことを調べ始めたら、知らない単語が次から次へと出てくる…」
おそらくすぐにこのような状態に陥るはずです(わたしもそうでした)。
そんなわけで今回は、NFTを取り巻く用語について、技術観点を交えながら紐解いていきます。エンジニアのための「NFT完全に理解した」をやっていきましょう。
目次
NFT関連用語解説
Ethereum(イーサリアム)

NFTの大部分が取引されるブロックチェーンプラットフォーム、および関連するOSSプロジェクト(※1)の総称です。2013年にVitalik Buterin氏によりプロジェクト概要や技術仕様が考案され、2015年に最初のマイルストーンである「Frontier」がローンチされました(※2)。
イーサリアムはビットコインとは異なり、イーサリアムネットワーク上に特定条件で実行されるプログラムを構築し、複雑な取引を自動化することができます。
※1 EthereumのGitHubリポジトリ
※2 Frontier is coming – what to expect, and how to prepare | Ethereum Foundation Blog
内部通貨として「イーサ(ETH)(※3)」が用いられており、NFTの取引やスマートコントラクトを履行するための手数料、およびマイニングの報酬として支払われます。ETHはビットコイン(BTC)に次ぐ時価総額を誇る暗号資産でもあります(※4)。
※3 What is ether (ETH)? | ethereum.org
※4 2023年6月時点, CoinMarketCap調べ
DApps(ダップス)
「Decentralized Applications」の略称で、日本語では「分散型アプリケーション」と呼ばれます。DAppsはP2P方式のネットワークで稼働するブロックチェーン上に構築され、ユーザーや別のコントラクトからのトランザクションにより、特定の条件が満たされたときに自動的に実行される非中央集権型のシステムです。
DAppsで使用される自動実行の仕組みは「スマートコントラクト(※5)」と呼ばれ、イーサリアムでも採用されています。 スマートコントラクトは非常に論理的で、”IF This Then That(もし「これ」ならば「あれ」をする)” の構造に従っています。
DAppsの代表例として、OpenSeaなどのNFTマーケットプレイス、The SandboxやSTEPNといったブロックチェーン・NFTゲームが挙げられます。また、金融機能を備えたDAppsをDeFi(Decentralized Finance = 分散型金融)と呼び、UniswapのようなDEX(Decentralized Exchanges = 分散型取引所)やステーブルコイン(取引価格が安定するよう設計された暗号資産)が注目を集めています。
Wallet(ウォレット)
暗号資産やNFTなどのデジタル資産を保管する機能を備えた「財布」のようなものです。個々のウォレットは一意のアドレスを持ち、これを使用して暗号資産やNFTの取引を行います。ネット銀行の口座や電子マネーなどをイメージしてもらえれば理解しやすいと思います。
代表的なウォレットとして、イーサリアムなど主要なブロックチェーンに対応した「MetaMask」が挙げられます。MetaMaskはブラウザの拡張機能やスマホアプリとして利用できるウォレットです。

MetaMaskのようにユーザー自身が秘密鍵を管理するウォレットのことを「ノンカストディアルウォレット」、暗号資産を扱っている取引所などで開設されるウォレットのことを「カストディアルウォレット」と呼びます。
また、インターネットに接続されたウォレットを「ホットウォレット」、隔離されたウォレットを「コールドウォレット」と分類したりします。多くのユーザーの資産を預かる暗号資産取引所では、セキュリティレベルの高いコールドウォレットを採用していることが多いです。
GAS(ガス代)
GASとは、イーサリアムネットワーク上での取引やスマートコントラクトの操作をおこなうために発生する「手数料」を指す言葉です。現実世界におけるガソリンやガスなどのエネルギー燃料に由来します。ゆえに日本語では「ガス代」と表現されます。
イーサリアムネットワーク上で何かしらの処理を実行する際、その操作にはコンピュータリソースが必要となり、そのリソース使用料としてマイナー(イーサリアムネットワークの取引を処理する人々)へガス代の支払いが発生します。
ガス代は通常、ガスの量(操作に必要なコンピュータリソース量)とガス価格の2つの要素によって決まります。ガス価格は通常「Gwei(ギガウェイ)」という単位で表示され「1Gwei = 0.000000001ETH」を意味します。
ガス代は、取引の複雑さ(必要なコンピュータリソースの量)とネットワークの混雑状況(どれだけの人々が利用しているか)によって変動します。取引が複雑であるほど、そしてネットワークが混雑しているときほど、多くのガス代が必要となります。
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Ethereum Gas Tracker | Etherscan
また、取引の処理スピードを上げたい場合は、より高いガス価格を設定することもできます。マイナーは通常、ガス価格が高い取引を優先して処理します。これは「マイナーが取引から得られる報酬 = ガス代」であるためです。
ガス代はイーサリアムネットワークの重要な要素であり、その設計はネットワークのセキュリティと効率性を保つために重要です。しかし、ガス代が高騰すると、ユーザーは取引やスマートコントラクトの実行に高額な料金を支払う必要があり、これがイーサリアムネットワークの使用を制限する一因となっています。これを解決するための取り組みとして、大規模なイーサリアムのアップグレード計画が動いています。

Ethereum roadmap | ethereum.org
PoW(Proof of Work), PoS(Proof of Stake)
PoWは「Proof of Work」の略称で、暗号資産マイニングにおける報酬付与の仕組みのひとつです。ブロックチェーン上でなんらかの取引が発生した際、マイナーによるデータの承認作業が行なわれます。この際「より多くの計算処理を行ったマイナーに対して報酬を付与する」という方式を採用しているのがPoWです。PoWはビットコインをはじめ、多くのブロックチェーンネットワークで採用されています。
PoSは「Proof of Stake」の略称で、データ承認の条件を計算能力ではなく「暗号資産の保有量や保有年数が大きいほど、承認の権利が得られる確率が高まる」という仕組みになっています。イーサリアムはもともとPoWを採用していましたが、2022年9月のアップデートでPoSへと移行しています。
PoWでは、悪意のあるマイナーが集団で半数以上の処理能力を掌握すると、マイニングの公平性が保てなくなる「51%攻撃」と呼ばれるリスク懸念があります。一方で、PoSのコンセンサスアルゴリズムでは「51%を超える = 対象の暗号資産全体の51%を保有する」ことになるため、条件を達成することが非常に困難です。
仮に実現できたとしても、それを察知した大半のホルダーは該当の暗号資産を手放す行動に走るでしょう。その結果、市場価値の暴落が予想されるため「不正をおこなうメリットがない」というロジックが成り立ちます。ゆえに、51%攻撃への耐性はPoSのほうが強いと言えます。
ERC20, ERC721, ERC1155
ERCは「Ethereum Request for Comments」の略称で、イーサリアムの技術提案のことを指します。ERCに続く数字は提案された文書の順番を表します。つまり数字が大きいほど新しい提案になります。ここではNFTを扱うための標準規格を中心に、3つの規格を紹介します。
ERC20は、代替性トークンを扱うための標準規格で、イーサリアムチェーンと互換性のある暗号資産を発行できます。たとえば、米ドルの価格と連動するステーブルコインのTether(USDT)や、USD Coin(USDC)はERC20で発行されています(※6)。
ERC721は、NFTを発行する際に最もよく利用されている規格です。発行するトークンごとに固有のトークンIDを付与することで、各トークンが一意であることを担保します。この規格により、複数アカウント間のトークンの転送や現在のトークン残高の取得、後述するメタデータを扱うことなどができます。


ERC721で定義されるイベントとメソッド一覧(※7)

メタデータを扱うための拡張インターフェース

発行済みトークンを列挙するための拡張インターフェーズ
ERC1155は、ERC20とERC721両方の特徴を兼ね備えた規格です。「マルチトークンスタンダード」とも呼ばれており、一度の取引処理で複数のトークンを扱うことができます。そのためトレーディングカードのNFTや、ブロックチェーンゲームのアイテムなどで採用されることが多い規格です。

ERC1155で定義されるイベントとメソッド一覧(※8)

ERC1155の受け取りコントラクトで必要なインターフェース
※7 ERC-721: Non-Fungible Token Standard
※8 ERC-1155: Multi Token Standard
Metadata(メタデータ)
NFTに関連する情報を記したデータのことです。メタデータはNFTに付随するファイルとして、JSON形式で保存されます。たとえば、NFTアート作品の作者や作成日、保存場所といった情報を記録することができます。

画像引用:Metadata Standards

メタデータのプロパティ設定例
メタデータファイルの保存先としては、IPFSやクラウドストレージ、独自サーバ上でホストすることができます。
IPFS
「InterPlanetary File System」の略称で、P2Pネットワーク上で動作する分散型ファイル共有プロトコルのことを指します。IPFSはWeb3.0における重要な技術のひとつであり、現在のインターネットで主要なプロトコルであるHTTPを補完する目的で開発されました(※9)。
※9 IPFS Powers the Distributed Web

画像引用:A Practical Explainer for IPFS Gateways – Part 1 | IPFS Blog & News
とくにNFTの世界では、デジタルコンテンツのデータを「永続的かつ信頼性の高い方法で保存するための主要な手段」として注目されています。
On-Chain, Off-Chain
ブロックチェーン上にデータ処理を記録することを「On-Chain(オンチェーン)」、ブロックチェーン外で行われる処理を「Off-Chain(オフチェーン)」と呼びます。
オンチェーンの場合、取引がブロックチェーン上に記録されるため、データの改ざんやハッキングへの耐性を高く保つことができます。一方で、取引量も増大するため処理遅延や高額なガス代が発生する傾向があります。
対となるオフチェーンの場合、ブロックチェーン上に記録する処理を最小限に留めることで、処理遅延やガス代を軽減させることができます。しかしながら、従来のWebシステム同様に取引の処理やデータの管理がプラットフォーム依存となるため、改ざんやハッキングの被害に遭う可能性があります。
これらはトレードオフの関係にあるため、一概にどちらの仕組みが絶対的によいとは言い切れません。昨今はブロックチェーンにおけるスケーラビリティの問題を考慮し、多くの処理をオフチェーンで、必要最低限の処理をオンチェーンでおこなう、といった方式がスタンダードになっています。
SCAM(スキャム)
NFTや暗号資産における詐欺行為のことを「SCAM(スキャム)」と呼びます。著名なNFTプロジェクトの偽物を購入させられたり、ウォレットアカウントを乗っ取られ保有しているNFTや暗号資産を奪われるリスクがあります。
とくに、ウォレットの秘密鍵にあたる「シードフレーズ」「リカバリーフレーズ」などは絶対に第三者に教えてはいけません。ウォレットの使い方やアカウント復旧のサポートを装い、偽サイトのリンクを送り付けて個人情報を抜き取られるといった事案が考えられます。
SNSなどでトークン価格の高騰を煽り立て、ある程度資金回収が出来たタイミングで大量売却や資金の持ち逃げをする「ラグプル」。集団で意図的にNFTを大量購入し、入札価格を釣り上げる「パンプ&ダンプスキーム」などの詐欺行為もよく見られます。
見極めはなかなか難しいところですが、少なくとも該当プロジェクトやクリエイターが信頼できるかどうかの情報収集はすべきです。また、NFTの無料配布企画への参加、NFTを購入をする際は、公式アナウンスのあったリンク先や信頼できるマーケットプレイスのみアクセスするようにしましょう。TwitterやDiscord上で興味を惹かれるDMが来たとしても、安易にリンクをクリックしたり送金依頼には応じないようご注意を(※10)。
FreeMint, Airdrop, Giveaway
いずれもNFTやトークンを無料配布すること、それに類する企画のことを指します。Mint(ミント)は「Minting = 鋳造する」に由来し、NFTを新たに生成・発行するという意味になります。
NFTプロジェクトの運営者は、自分たちのコレクションの宣伝、コミュニティ活性化、コンテストへの参加報酬として、NFTを配布することがあります。さらに配布期間や数量を限定することで、プロジェクトの盛り上げに活用されます。
TwitterのフォローやRT、Discordコミュニティでアクションをおこなうなど、いくつかの手順を踏むことを条件としたり、該当プロジェクトのNFTホルダーであれば入手の権利を得られることがあります。前述のスキャム手段としても悪用されるため、得体の知れない企画に安易に飛びつかぬよう気を付けましょう。
AL(Allow List), WL(White List)
特定のNFTプロジェクトに参加するための事前承認されたアドレスのリストのことを指します。プロジェクトの運営者がNFTの発行や購入を制限したい場合や、特定のユーザーグループに早期アクセスを許可したい場合などに使用されます。
たとえば、プロジェクトの開始時に「ALメンバーのみが初回のNFTを購入できる」というルールを設けることがあります。このようなメカニズムは、プロジェクトの初期サポーターやコミュニティ形成、プロモーションに参加したユーザーを優遇するために使用されます。
ただし、具体的な参加手順や運用方法はプロジェクトによって異なるため、プロジェクトの公式ドキュメントやガイダンスを参照することが重要です。ALはGiveawayの条件としても多用されます。繰り返しになりますが、スキャムには要注意です。
Burn(バーン)
「NFTを削除する」という意味です。「燃やす」を意味する「Burn」から来ています。
NFTを楽しんでいると、知らない人から勝手に送られてきたり、いつの間にかウォレットにNFTが入っていることがあります。これはNFTのウォレットアドレスがパブリックに公開されており、誰でもその宛先にNFTを送信できる仕組みになっているためです。
素性の知れないNFTはスキャムの可能性があるため、自分も身を守るためにBurnで削除することができます。また、供給側が意図的に数を減らし価値を上げる場合に使用されたり「保有するNFTをBurnする代わりに、新たなNFTを入手する」といった仕組みを導入しているNFTプロジェクトなども存在します。
なお、BurnしたNFTは二度と復元することはできません。誤って大切なNFTを削除することのないよう、操作する際は細心の注意を払いましょう。
PFP
「Profile Picture」の略称で、NFTの世界では特定のNFTコレクションの一部であるアバターやキャラクターの画像を指します。コレクション所有者は自身のデジタルアイデンティティを表現するための手段として、NFT画像をSNSのプロフィールに設定し、そのコミュニティの一員であることを表現します。
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TwitterアイコンにNFTを設定したようす。画像タップでメタデータも参照可
有名な例としては、CryptoPunksやBAYC(Bored Ape Yacht Club)などのPFPプロジェクトがあります。
SBT
譲渡不可のNFTを「SBT(SoulBound Token)」と呼びます。これは一度取得すると個人のウォレットIDに紐付けられ、他人に売却や譲渡することができないNFTです。二次流通できることがNFT最大のメリットとも言えますが、SBTには幅広い使用例が考えられます。
たとえば、学歴や職務経歴書、資格証明書、信用履歴といった個人の実績。過去の診療記録や病歴などの医療記録。このような他者から買うことのできない個人特有の記録、公的機関から発行された証明書などを、デジタル資産として表すのに適しています。
SBTは国内の大手企業でも、実証実験が開始されています。SMBCグループは、金融機関を介した身分証明や経歴の参照などの利用。NTTドコモは、音楽NFTと連携したプロモーション手段の模索(※11)などを行っています。

画像引用:Soulbound Token領域におけるSMBCグループとの業務提携検討について|株式会社HashPortのプレスリリース
SBTを活用した取り組みは、まさにブロックチェーン技術の可能性を示唆する領域と言えるでしょう。今後有用性の検証が進めば、社会実装される未来もそう遠くはないかも知れませんね。
次回予告
結構なボリュームとなりましたが…ここまでお読みいただいた方は、NFTを取り巻く用語についてだいぶ理解が深まったのではないでしょうか。
本記事で解説した以外にも、NFT関連の用語は芋づる式に存在します。少しでも「分からない」「知らない」言葉に出会ったら適宜調べる癖をつけておくとよいでしょう。
NFTはまだその概念が一般に普及していないこともあり、どうしてもキャッチーな話題や投機的な要素に注目が集まりがちです。しかしながら、エンジニア目線で仕様や設計について知ることで、NFTの技術的な面白さや奥深さを感じ取れるはずです。
本記事を読むことで「ちょっとNFT触ってみたくなったかも」というエンジニアがひとりでも増えたら幸いです。地道な情報発信の積み重ねが、技術革新に一歩ずつ近づくのだと信じています。
というわけで、次回は簡単なNFTを発行するまでの実装方法を解説します。
私と一緒に「NFT完全に理解した」状態を目指していきましょう。
(文:星影)
