わたしはこれまで、新卒で会社員(正社員)→ニート期間を経て書店員(アルバイト)→PC教室講師(契約社員)→ライター(フリー・業務委託)と、さまざまな形態で働いてきました。自分の選択に後悔はしていませんが、人生100年時代、今後のキャリア設計について「このままでいいのだろうか……?」と不安になる瞬間があります。

そこで、噂のスーパーハイテクチャットAI「Chat GPT」に人生相談をしてみました。これまでの選択は間違っていなかったかを聞くとともに、これからのキャリア設計についてアドバイスをいただきたいと思います。

※筆者は生粋の文系であり、AIやChat GPTに関しては浅薄です。ご容赦ください。

正社員を辞めてニートに……

まず、Chat GPTに以下のような設定を覚えてもらいます。

なんとも雑で荒削り、かつ無茶振りな設定ではありますが、ここはChat GPTに条件を呑んでもらうしかありません。プロのキャリアコンサルタントに仕立て上げ、筆者の勝手気ままなキャリア相談に対し“名言付きで”フィードバックやアドバイスをしてもらいます。

手始めに、新卒で正社員として某企業に入社するも、自ら退職してニートになってしまった過去について投げかけてみました。

どんな企業に入ったのか、どういった経緯で退職に至ったのか、必要な情報や背景をすっ飛ばしてフィードバックやアドバイス、挙げ句の果てには名言まで求める相談者なんて、一般的に見ればお断りでしょう。しかし、相手はChat GPT。どんな無茶振りにもある程度の答えはくれるはずです。

なんと、大した情報も与えられていないのに、5年間勤めたことや退職したこと自体を「多くの人から見ればよい経験」「自分自身の成長やキャリアについて真剣に考えた結果」と褒めてくれました。地を這うような自己肯定感が上向きます。

また、今後のキャリア選択についても、一言でいうなら「そりゃそう」としか表せない真っ当でド正論な答えが返ってきました。

わたしが退職を決意したのは心身を疲弊させるような労働環境のせいだったので、「やりがいや成長の機会を見つけることが大切」「失敗や挫折を恐れず、前向きに挑戦することが大切」とする、少々脳みそが筋肉でできているようなアドバイスには危機察知レーダーが反応してしまいます。しかし、世間的に見れば的を射ている回答なのではないでしょうか。裏を返せば、これくらいのことしか言えないのが本当のところかもしれません。

名言は「人生に失敗はつきもの。それをどう乗り越えるかが、本当の勝利者を生む」。本当の勝利者を生む、といった表現に、自己啓発本に巻かれた販促帯の匂いを感じます。これといって何かに勝利したいわけではないのですが、人生に勝ち負けの指標を当てはめるのが、Chat GPTキャリアコンサルタントの価値観なのかもしれません。

書店員アルバイトになったのは正解だったのか?

約半年のニート期間を経たあと、「小さいころ作家になりたかったから」といった理由だけで近所の書店アルバイト募集に申し込みました。当時のわたしは27〜8歳、新卒で5年勤めた会社を辞めたあと、意味深な半年の空白期間がある三十路前の人間を、よく雇ってくれたものだとあらためて感謝の念がわいてきます。

結局この書店アルバイトも1年足らずで辞めてしまうのですが、この選択は正しかったのでしょうか? 脳みそ筋肉バリバリ体育会系のキャリアコンサルタント(=Chat GPT)に聞いてみました。

少々、誘導尋問のような質問になってしまいましたが、うしろ向きな相談者に対しChat GPTはどんなアドバイス(&名言)をくれるのでしょうか。

まず思ったことは「長い」。三十路前で会社を辞めニートになり、苦し紛れにアルバイトを始めた人間に対する、情の深さや配慮が伝わってきます。AIに慰められていると思うと、途端に冷静になってきました。

大まかなアドバイスとしては「今後のキャリアを考えるなら、アルバイトでお茶を濁すのではなく、時間をとって自分が本当にやりたいことを考えようね」といったところでしょうか。前項のアドバイス方針とブレていないところをみると、最初に設定した「有能なキャリアコンサルタント」の設定を忠実に守ってくれているのがわかります。

名言としてはありきたりです。生きていたら数億回は聞かされるであろう、あらゆる場所で擦られまくった「人生は一度きり」といった言葉が登場しました。やはりAIにクリエイティビティを求めるのは酷なのでしょうか。

仕事が続かない自分にChatGPTがくれた、偉人の名言

書店のアルバイトも、PC教室の契約社員も、半年〜一年足らずで辞めてしまいました。これといってやりたいことも就きたい職もなく、絵に描いたような自堕落生活を送っていた過去を思い返し、ちょっと気分が悪くなっています。

メンタルがブレまくっている人間に対し、Chat GPTはどんな回答をくれるのでしょうか。そこまでも真っ当でド正論な言葉が返ってきてしまったら、平常心ではいられないかもしれません。不安です。

ひっくるめると「もうちょっとよく考えろ」と言いたいようです。ここにきて、Chat GPTが考えた名言ではなく、スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で引用したという「Stay hungry, stay foolish.(飢えた者、愚か者であり続けよ)」を挙げてきました。Chat GPTの創作能力の限界です。

注意したいのは、この言葉はジョブズのオリジナルではなく、全地球カタログと呼ばれる雑誌の裏表紙に書かれた言葉を、彼が引用したという点です。Chat GPTは素知らぬ顔で嘘をつくこともあるので、要注意。われわれのリテラシー能力が試されます。

ただ、言いたいことは伝わってきます。キャリアに限らず、自分のことを深く考えて決断しようと思ったら、まとまった時間が必要です。かつ、考えすぎてもいけない。ジョブズが引用した名言のように、失敗を恐れず挑戦し続ける自分であれ、と鼓舞してくれるChat GPTの優しさに、ようやく思い至れた気がします。

今後のキャリア選択はいかように

さて、ついに現実に追いついてきました。いろいろと人生の回り道をしてきましたが、現在はフリーライターとしてほそぼそと生活しています。食べるのに困るほどではありませんが、将来安泰とも言えない仕事です。今後どのような心構えで生きていけばいいでしょうか。

これで、脳みそ筋肉バリバリ体育会系(人生は一度きりマインド)のキャリアコンサルタントともお別れです。

最後の最後で改行という概念を失念してしまったのでしょうか。目の前に「早口で説教を捲し立ててくる強面コンサルタント」の顔が浮かびます。「経済的なバッファー」といった言葉選びに、専門用語を乱発して相談者を混乱させようとする魂胆が透けて見えますし、「現在の生活費の3〜6か月分の貯蓄を目指しましょう」と具体的すぎるアドバイスも飛び出しました。これで最後の相談なのだ、という焦りが感じられます。

そしてまたもや、名言は偉人によるもの。「失敗したことがない人は、何も新しいことに挑戦していない人だ」という名言が、本当にデイビッド・ジョセフ・シュウォーブ氏によるものなのか調べてみたところ、やはりというかなんというか間違いでした。筆者が調べた範囲では、この言葉はアインシュタインの名言です。デイビッド・ジョセフ・シュウォーブ氏が誰なのかもわかりません。

いろいろとツッコミは絶えませんが、Chat GPTの言いたいことは以下の二点に集約されるようです。

・とにかく失敗を恐れずチャレンジしよう
・一度きりの人生なんだから、自分のやりたいことをやろう

これからのキャリア設計のため、Chat GPTによるこれらの回答は参考になるでしょうか。それは、受け取る側に委ねられているのかもしれません。

最後に、これだけは言わせてください。

AIに煽られる日が来るとは、思っていませんでした。

(文:北村有

― presented by paiza

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