ITエンジニアを中心とするチームでは、業務時間中や退勤後の時間などに勉強会を開催することも多いかと思います。
輪読会も勉強会の開催形態のひとつで、複数人で同じ技術書を読み理解を深めるというものです。
TechTeamJournalをご覧のみなさまは、常日ごろからインプットやアウトプットをしている方が多いかと思います。またそうした方にとって、技術書から学ぶという行為はもはや“お勉強”ではなく、習慣や娯楽のようなものかもしれません。
しかし情報処理推進機構のデジタル時代のスキル変革等に関する調査(2022年度)によると、現在の企業・組織においてはIT人材個々の学習の場や、学びをどう評価するのか等の面でまだまだ問題があるとされています。
同時に、同資料においては
学びが習慣化された思考・行動様式(ラーニングカルチャー)
を醸成することが大切である、とも述べられています。
私はこれまでにも自分のチームや、所属する部署での輪読会を開催してきました。そこから得られた、輪読会を企画する際の形式や、気をつけるべきポイントなどをご紹介します。
目次
さまざまな形式
輪読会にもさまざまな形式があり、参加者を募る際などは「どのような形で開催するのか」を明示することが大切です。
ここでは、よく行われる2つの形式をご紹介します。このほかにもアクティブ・ブック・ダイアローグなどの方法もありますが、私としては以下2つのいずれかからスタートするのが良いと思っています。
■当番が事前に内容をまとめて発表する
ひとつめの方法は、複数人のメンバーで当番を決めて、そのほうが書籍の内容を事前に読み・まとめ・解説するという方法です。1時間の輪読会であれば、解説を30〜40分程度行い、残りの時間でその回の範囲について皆でディスカッションする、といった配分になります。
私が一番よく行うのがこの方法です。

上の図のように、いつ、誰が、どの範囲を担当するかを最初に決めてからスタートします。
自身が当番になった回は、事前に該当部分を読むだけでなくスライド等にまとめておく必要があるため手間はかかります。しかし、「他の参加者に説明する」という前提で読むぶん、理解が深まります。
また、この方法の場合は1回あたりに進むページ数が比較的多めになります。そのため、1冊を読み終わるのに必要な期間が比較的短く済みます。輪読会を継続するには「読み終えた!」という実感をもつことが重要だと考えているので、その点を重視したい場合はオススメです。
一方、とくに輪読会に不慣れなメンバーが多い場合などは、当番の方がほぼ1時間喋り続けて、参加者からはとくに質問がなく終わってしまう・・・ということも。輪読会を主催する場合は、こういった時間配分や、ディスカッションのために話をふったり盛り上げたりする動きが求められます。
■皆で時間をとってその場で読む
もう一つの方法は、事前に読んで内容をまとめたりはせず、輪読会の時間の中で本を読み、ディスカッションをするというものです。こちらも、1時間の輪読会であれば30分読んで30分ディスカッション、30分の輪読会であればその半分ずつ、といった配分で行います。
読み方については、参加者で少しずつ音読をすることもあれば、決まった時間黙読をすることもあります。
この方法の最大のメリットは、事前準備が不要である点です。先に説明した当番制の方法の場合、当番になった際にかかる負荷を懸念して輪読会に参加するのをためらってしまう方もいます。しかし、その場で読む方法であればそうした心配は要りません。
また、負担が少ない分こちらの方法は
・短時間で
・高頻度に
行うことも可能で、チームの状況によってこちらのほうがフィットする場合もあります。「毎朝15分輪読する」という活動をしている組織もあるようです。
一方、この方法では1回あたりに進むページ数が少なくなるため、1冊を読み終えるまでの輪読会の回数が増える傾向にあります。モチベーションの維持や、「読み終えた!」という達成感を得る頻度が少なくなってしまう点には気をつけたいですね。
輪読会を長く続けるためのポイント

輪読会の開催方式として、主な2つの方法をご紹介しました。その中でも少し触れましたが、輪読会で大事なのは継続的に開催することです。
単純に数回開催するだけであればそれほど難しくありませんが、続けるのが難しい、というのが主催経験者としての実感です。
そこで、ここからは輪読会を止めずに継続するためのポイントをご説明します。
■主催も含めて楽をする
世の中の輪読会の中には、いわゆる「本気度の高いもの」があります。古典や名著をまるっと自分に取り込むような、時間とパワーのかかるタイプの会です。
もちろんこのような本気の会を行えば、エンジニアとしての成長度合いは大きくなるでしょう。
しかし現実問題として、多くのテックチームで行われる輪読会はそういったタイプのものではありません。極端なことを言えば、本の内容を詳細まで理解するよりも、本を読んだり学んだりする習慣をつけること、冒頭で挙げたラーニングカルチャーを浸透させることが優先ではないでしょうか。
その場合、いわゆる「ゆるい」形式でもいいので、とにかく継続的な会の開催が大切です。そして、継続のためには「楽に参加できること」が大切です。これは仕組み化であったり、1回あたりの事前準備の量を多くしすぎない等の工夫が求められます。
一つポイントになるのは、この 「楽をする」には主催も含まれるということです。
よくありがちなのが、参加者がなるべく負担なく参加できるように主催者が頑張りすぎてしまうパターンです。これは参加者にとっては確かに楽です。しかし、主催者が疲れてしまったり気持ちが折れてしまったりすると、そこで輪読会自体が止まってしまいます。これではもったいないですよね。
むしろ理想的なのは、主催者が風邪で欠席してもメンバーだけで回る状態です。ここまでいけば輪読会が自走している、つまりラーニングカルチャーの浸透が始まっている状態といえるでしょう。
■目標設定や評価にからめすぎない
多くのエンジニアのみなさんは、毎年上期下期で目標設定をし、半期の終わりには「目標達成シート」のようなものを記入して評価を受けているのではないでしょうか。
そして、この手の目標の中には、開発業務のようなメインのもの以外にも「チームや組織にどれだけ貢献したか」や「自己成長のための努力」などの項目を含むことがあります。
輪読会の開催や参加などは、この手の目標に据えるにはちょうどいい位置づけです。もちろん、目標を設定して頑張ること自体はすばらしいことでしょう。しかし、たとえば「輪読会を主催して参加者をのべ*人集める」といった目標を設定してしまうと、本来の狙いからズレていってしまいがちです。
とくに、開発組織の中で学習文化の根づきを目指すのであれば、そうした変化を半年や1年というスパンで実現するのはかなり大変です。
せっかく輪読会を頑張ったのに、「目標未達」で評価されないような状況を作ってしまっては不健全です。この手の活動は、目標設定や評価と過剰に関係づけないよう、注意が必要です。
小さな変化を見つけ、称賛する
輪読会を続けるために一番良いのは、参加者に「楽しい」「やってよかった」と感じてもらうことです。そうすれば、繰り返し参加してもらえますし、主催にとってもモチベーションが高まるうれしい反応だと思います。
ただ、参加者の反応は、黙っていても得られません。輪読会に参加したことによって成長した点を褒めたり、チームにとってのメリットを見つけたりすることを、積極的に行うことが大切です。
たとえば、コードレビューの際に「輪読会で読んだ本に***と書いてあったので〜」などのコメントが出てきたとします。これは、輪読会の結果、チームに共通言語・土台が形成されたことの証でもあります。こうした小さな変化を見つけたときに、「輪読会の成果が出てるね!」などと気づいて称賛すること。こうしたちょっとした活動も、輪読会の継続につながっていきます。
輪読会で皆のラーニングカルチャーを育てよう

今回は輪読会の開催方式や、継続のためのコツについて説明しました。
輪読会に限らず、エンジニアの勉強会の類を主催するのは意外と大変です。
人が集まらなかったり、主催者の負担が大きくなって継続が難しくなったりで、せっかくの取り組みが頓挫してしまう例もいくつも見てきました。しかし、せっかくの取り組みが止まってしまうのはもったいないことです。
エンジニアにとっても、属する組織にとっても、学ぶ文化というのは非常に大事なものです。
こうした文化を作り、育てていくためには輪読会は大変良い手段です。まだ行っていない、もしくはこれからやろうとしている、という方はぜひ本記事を参考に継続的な開催にチャレンジしてみてください。
(文:伊藤由貴)
