私は大学を卒業して3年間、工場で生産技術として働いていました。その後、Webサイト作成を趣味で作っていたこともあり、IT系エンジニアの仕事に興味を持ち、製造業の社内向けヘルプデスク兼セキュリティ周りを担当する社内SEとして転職しました。
正直、社内向けヘルプデスクと聞いても、いまいちピンとこない人がいるかもしれません。社内ヘルプデスクは会社の業務を支える根幹であり、彼らがいるからこそ、社内の仕事が滞ることなく回っています。
本記事では自身の経験をもとに、社内ヘルプデスクの仕事内容と魅力について詳しく解説します。みなさまに「社内向けヘルプデスクはやりがいのある仕事なんだな」と感じていただければいいなと思います。
また、社内向けヘルプデスクの仕事の範囲は広く、紹介したもの以外にも数多くあることを理解して読み進めていただければ幸いです。
目次
社内向けヘルプデスクってどんな仕事?
社内向けヘルプデスクの代表的な仕事はトラブル対応です。関係会社や社内のIT関係のトラブルや問い合わせに対応し、解決までのサポートをしています。
問題解決にはスピードが求められるため、いかにしてすばやく解決できるかが仕事の鍵です。時には大変なこともありますが、たくさん感謝をもらえる仕事でもあります。誰かの役に立ちたいという気持ちが強い方にとって、これほどやりがいのある仕事はないかもしれません。
社内向けヘルプデスクが設置される目的
社内向けヘルプデスクは、「IT面の環境を整備して業務効率のアップ」を目的としています。トラブルの解決や削減はあくまで業務効率をアップさせる手段のひとつです。
また、社内向けヘルプデスクの存在自体が社員の方々の不安を軽減させるのにも役立ちます。たとえば、近頃はリモートワークが一般的になり、ITに慣れていない人も“VPN”や“仮想デスクトップ”など日常生活ではあまり使わない技術を使う時代。ITに詳しくなくても、不安を感じずにリモートワークができる理由は、困ったら問い合わせができる部署、社内向けヘルプデスクが存在するためです。
社内向けヘルプデスクの仕事範囲
社内向けヘルプデスクは、IT環境を整備して業務効率をアップさせる目的で設置されています。IT環境は、PC、サーバー、ネットワーク、プリンター、ソフトウェアなど身の回りのありとあらゆるものが対象です。
社内向けヘルプデスクは、IT関係らしきトラブルをすべて受け持つ「なんでも屋さん」として重宝されるため、が増える傾向にあります。インフラエンジニアやネットワークエンジニアなど他業務と兼務する方の中にも、業務効率化のためマクロを組む方も多くいるでしょう。
社内ヘルプデスクは業務量が多くなりがちな仕事ですが、感謝される機会が多く、非常にやりがいのある職種です。
社”外”向けヘルプデスクとの違い
ヘルプデスクには、大きく分けて「社”内”向けヘルプデスク」と「社”外”向けヘルプデスク」があり、私は両方経験しましたが、全く異なる仕事内容でした。
本記事で紹介する「社”内”向けヘルプデスク」は主に自社社員から相談されるPCやネットに関する悩みを解決したり、トラブルを未然に防ぐ仕事をしたりしています。IT機器全般の知識が必要です。
一方「社”外”向けヘルプデスク」は、自社製品を使用する一般ユーザーからの問い合わせを受けます。たとえばテレビの調子が悪く、私たち消費者が、メーカーに電話で問い合わせるときに対応する方々が社外向けヘルプデスクです。自社製品への深い知識が求められます。
社内向けヘルプデスクのうわさの真実
社内向けヘルプデスクをインターネットで調べると、「スキルが身につかない」をはじめとしたネガティブなうわさを多く見受けます。
確かに、トラブル時以外は暇を持て余している社内向けヘルプデスクも中にはいるかもしれません。ただ、私の経験上、社内向けヘルプデスクはトラブル時以外にも業務があり、もちろんスキルアップも期待できます。
時代の流れとともに、社内向けヘルプデスクの仕事も増えています。たとえば、コロナの影響で、リモートワークをする方が一気に増えました。その弊害として社員が職場にいないため、何をやっているのかが見えにくくなっている問題も起きています。事前にトラブルを防ぐために、PCやサーバーのログ管理および監視をしている社内向けヘルプデスクも少なくないでしょう。
「スキルが身につかない」とのうわさに、私は「コードを書くだけがエンジニアのスキルではない。そして、トラブル対応だけが社内向けヘルプデスクではないぞ」と声をあげたい気持ちです。
現役の社内向けヘルプデスクが考えること
社内向けヘルプデスクの特徴は、人との距離の近さです。そして、ITへの理解度は個人によってそれぞれ異なるため、相談ごとに対応方法を変えなくてはいけません。
“ダウンロード”と“インストール”の違いが分からない方に、「ブラウザを変えてダウンロードを試してください」と話しても全く通じないでしょう。早く不調を直してほしいのに、理解できない指示をされてしまうとイライラしてしまうかもしれません。専門用語をできるだけ使わずに説明するのもありですが、リモートやその場に足を運んで、直接画面を見て操作したほうがすばやく解決できます。
逆に知識があるために、自分が使いたいフリーソフトを勝手に入れて使ういわゆる「シャドーIT」に手を出す人もいるでしょう。未検証のソフトはセキュリティ面も気になりますし、既存ソフトとの相性が悪く安定した動作が損なわれるケースもあります。同時に、なぜ「シャドーIT」に手を出す必要性があったのかを考え、もっと便利に仕事をしていただけるように環境を整えるのも社内ヘルプデスクの立派な業務です。
ただ、早くトラブルを解決したいという思いは全員が持っている共通認識で、私たちはそれに応える努力をしなければいけません。すばやくトラブルを解決し、感謝の言葉をもらう経験は何度体験してもうれしいものです。
私は社内向けヘルプデスクとセキュリティエンジニアを兼務しています。セキュリティは利便性とのトレードオフのため、感謝の言葉をもらえるどころか敬遠される存在です。そのため、せめて社内向けヘルプデスクでうれしい思いをするのが精神衛生上に良いと感じています。
システムの向こうには必ず“人”がいる
企業によって社内向けヘルプデスクの作業範囲は異なるため、今回ご紹介した内容はあくまで私の場合である点に注意していただければと思います。
システムは開発や導入が目的ではありません。必ず向こう側に使う人がいます。そして、社内向けヘルプデスクはシステムと人をつなぐ職種です。人と密に関わるという大変な面もありますが、社内向けヘルプデスクは他のIT系業種と比べて、感謝される機会が圧倒的に多くてやりがいがあります。まさに「人助け」という言葉がぴったりな職種だと言えるでしょう。
また、社内向けヘルプデスクは幅広いIT系の知識を手に入れられる上、多くのトラブル対応の経験を積むことでスキルの取得も期待できるため、比較的キャリアアップが望みやすい印象です。私も社内向けヘルプデスクからスタートして、数ヶ月でセキュリティ関係を兼任するようになりました。
みなさまがエンジニアとしてのキャリアをスタートするときに、社内向けヘルプデスクも候補に入れていただけると、本記事を執筆して良かったと嬉しい気持ちになります。
(文:藤井宏治)