「働き方」というものは、どうやら多様化しているらしい。
正社員としての働き方だけでなく、フリーランスと協業する“ジョブ型雇用”を採り入れる流れが日本でもあるそうだ。
これまで私は正社員として企業に所属したことがない。インターンを含めて、ほとんどを“業務委託”として企業に関わってきた。そして幸いなことにライター・編集者として、作業メンバーの1人だけでなくプロジェクトの中心メンバーなど多岐に渡って仕事してきた。
また私は(この呼称はあまり好きではないが)いわゆる“Z世代”でもある。
この記事では若い世代の1人として、そして業務委託で会社組織と関わる人間として、理想の組織について経験から考えてみたい。
目次
フリーランスの関わり方は「あっさり」か「しっかり」
前提として、フリーランスの会社組織との関わり方は大きく2つに分けられる。組織の全体図の中で末端の作業メンバーとして関わる形と、正社員とほとんど似たコアメンバーとして関わる形だ。
作業メンバーとしての組織との関わり方
会社組織に作業メンバーとして関わる形は、おそらく多くのフリーランスが一度は経験していると思う。ライター・編集者・校正者・デザイナーなど……企業の担当者からやるべき作業が振り分けられ、作業に携わることが多い。
企画を提案したり打ち合わせに出たりすることもあるが、裁量権がそこまで大きいわけではない場合がほとんどだ。裁量権が比較的小さい一方で、フリーランス側としてはクライアントを取捨選択しやすいことも特徴。ある意味見切りをつけることが容易で、十分なスキルがあれば自らにとって快適なクライアントのみに絞って仕事できる。
コアメンバーとしての組織との関わり方
フリーランスでも、正社員の立場とほとんど変わらないような形で組織と関わる場合もある。企画の中心メンバーとしてフリーランスを迎えるのだ。いわゆる“ジョブ型雇用”と呼ばれる場合にはこの関わり方が多いように思う。
メディア編集長・プロジェクトマネージャー・コンサルタント……自らが企画の中心に立ち、仕事を生み出したりチームを動かしたりする。
コアメンバーとしての関わり方は、作業メンバーとしての関わり方に比べて裁量権も大きく、報酬も高い。(もちろん責任も相応にある)
企画の中心に立って全体を動かしたいと思う人にとっては、やりがいがあり充実感をもって取り組める。

作業メンバーにとって嬉しい企業担当者の特徴
私が作業メンバーとしてさまざまな会社組織の人間と関わってきて、尊敬できて仕事しやすかった企業担当者から、反対に周りにはおすすめできないような担当者も多かった。
コミュニケーションに求めるものは人それぞれ
フリーランスと企業担当者について考える際に語られることが多いのは、コミュニケーションについてだろう。
企業担当者とフリーランスとのコミュニケーションの内容や頻度は、組織の色やフリーランス側の希望もそれぞれだと思う。お互いに誠実であろうとすることを除けば、最低限のやりとりで済ませたい人も密なコミュニケーションを求める人もいる。
作業メンバーであるフリーランスとのコミュニケーションは、お互いが敬意をもつことを前提に、企業担当者とフリーランスが心地よく仕事できる塩梅を探すことが大事だと思う。
作業メンバーが嬉しいのは“シンプルさ”
せっかくなので今回は、コミュニケーション以外の視点で考えてみたい。作業メンバーの立場から、仕事しやすい企業担当者の特徴として思い浮かんだのは「フリーランスに求めたい仕事の範囲が明確なこと」だ。
報酬に対する仕事量・内容・レギュレーション・責任・求められるクオリティなどがはっきりと決められた状態で仕事が降りてくる。
一見すると淡々としてつまらないようにも思えるが、作業メンバーとして関わるフリーランスは「自らが作業メンバーの1人であること」を理解して携わっている。「実績や経験になるから」と悪気なく求めることは、フリーランスの作業メンバーにとって必ずしもありがたいことではない。
そのため、報酬に対してやるべき仕事の範囲が明確になっているほうが、フリーランス・企業担当者の両方のためになる。

フリーランスがコアメンバーとして関わりたい理想的な組織の特徴
私がコアメンバーとして会社組織に関わった際、何よりもありがたかったのは「フリーランスを受け入れる土壌があった」ことだ。
作業メンバーについての項目で「コミュニケーションについては人によって見解が異なる」と書いたが、コアメンバーとしてフリーランスを迎える場合はそんなことを言っていられない。コミュニケーションや空気作りがかなり重要になる。
フリーランス側には「自分は社内の人間ではなく外部の人間だ」という意識が少なからずあるため、わざとではなくとも社内メンバーとの間に溝が生まれやすい。
実際に外部の人間であるとはいえ、仕事を成功させるというゴールは社内メンバーもフリーランスも同じだ。フリーランスをコアメンバーとして迎えて成功している組織は、フリーランスが能力を最大限に発揮できるような空気作りを徹底している気がする。

フリーランスがコアメンバーとして関わりたくない組織の特徴
フリーランスのコアメンバーとしてパフォーマンスを発揮しやすい環境を整える組織がある一方で、コアメンバーとして関わりたくないと思ってしまう組織も多くあった。
フリーランスを下に見ている
組織によっては自ら迎えているにもかかわらず、なぜかフリーランスを下に見ている場合がある。繰り返すが、自らフリーランスをコアメンバーとして迎えているにもかかわらず、だ。
この場合は、フリーランスのことを単なる使い勝手がいい駒のような人材としか考えていない場合が多い。面と向かって貶されることはなくとも、態度や言動の節々から下に見られていることを感じ取れてしまう。
仕事で結果を出すには、お互いにリスペクトしながら関係を模索する必要がある。良好な関係作りを初めから放棄したとも思える様子は、たとえ報酬が高くても関わり続けたいとは思えないだろう。
板挟みになりやすい空気がある
フリーランスのコアメンバーは、やりがいや裁量権が大きく報酬も高くなりやすい一方で、“板挟み”になりやすい立場でもある。
例えばWebメディアの運用の場合、編集長(メディア運用の責任者)のもとに編集者やライターが集まりメディアを動かしている。そして編集長職がフリーランスの場合、社内にもさらに責任者がいることが多い。
この形が上手くいくならまだしも、下手すると編集長のもとに集まるメンバーと社内の責任者との間で板挟みになる……いわゆる“中間管理職”化しやすいのだ。フリーランスなのに。社内責任者の部下というわけでもないのに。
フリーランスの中間管理職化は、社内の責任者との間で責任と役割の所在がはっきりしていない、もしくは認識に齟齬がある場合に起こりやすいように思う。
フリーランスのコアメンバーは、作業メンバーのような役割の完全明確化が難しい場合もある。それでも、社内の責任者とフリーランスとの間で責任と役割の線引きは必要だ。
線引きがはっきりすることで、お互いに求めるものが判明し、建設的な運営につながるのだと思う。

組織と関わるフリーランスとして心がけたいこと
もちろん社内の人間だけでなく、企業組織と関わるフリーランス側にも心がけるべきことは数多くある。
フリーランスを業務委託で招いたものの、何も結果を残さずに高額な報酬だけもっていかれた……という事例も残念ながら存在するのだ。
プロを自負するフリーランスであれば、組織に「メンバーとして迎えてよかった」と思ってもらう必要がある。フリーランスの人間は理想的な組織を求めると同時に、プロとして果たすべき役割と責任には自覚的でありたい。
Z世代のフリーランスとして
Z世代に身を置きながら感じることとして、同年代や近しい年代の間ではフリーランスに対する意識は決して悪いものではないと思う。しかし上の世代を中心に、フリーランスに対する偏見のような認識はまだ残っている印象がある。
フリーランスは、さまざまな場面で立場が弱いことが多い。ジョブ型雇用に注目が集まっている今だからこそ、フリーランスとして自らの力を高めることや企業組織と対等に関わっていくことを模索し続けたいと思う。
ここまで書き連ねてみて、この記事の内容はフリーランスと企業担当者の間のみに関係する話ではないとも思った。そのまま上司と部下との関係に当てはまることも多いように思える。
結局のところ、正社員同士であってもフリーランスと企業担当者の関係であっても、お互いに敬意を払うことが大切なのだろう。
この記事で書いたことは、もちろん全ての業界やフリーランス、企業の担当者に当てはまるわけではない。それでも企業組織とフリーランスが関わる上で、お互いを考えるきっかけとなったらいいなと思う。
(文:谷口仁菜)
