本連載では、第一線でご活躍されているエンジニア組織のリーダーをお招きして、対談形式でこれまでのキャリア、組織のリーダーとして大切にしていること、組織課題などを語っていただきます。ナビゲーターは元DMM.comのCTOで、現在は株式会社デジタルハーツでCTOを務める城倉和孝氏です。
第4回目は、ソフトウェアを利用して治療する「デジタル治療(DTx)」の開発を手がける株式会社Save MedicalのCTO 川上知成氏にお話を伺いました。
株式会社Save Medical CTO 川上知成氏
㈱ドリコムに新卒として入社。エンジニアとして複数事業に従事。マネジメントとしてゲーム事業を中心に組織・技術を推進し、技術部長職を経験。その後、ヘルスケアスタートアップ企業にて開発部長に就任し、プロジェクトマネージャー、スクラムマスターを兼任しサービス、開発組織を牽引。
薬のように処方できる治療用アプリを開発
城倉さん(以下、「城倉」):今日はよろしくお願いします。はじめに、株式会社Save Medicalの事業内容について簡単に教えていただけますか。
川上さん(以下、「川上」):いわゆるデジタル医療機器を開発しています。まだ創業期で販売実績はないのですが、進行中のプロジェクトでいいますと2型糖尿病の患者さん向けの治療用アプリを開発して、治験を実施しています。治験が通過できれば医療機器プログラムとして申請し、審査が通ればドクターが患者さんに対して薬みたいに処方できるようになります。
城倉:アプリが薬のように処方されるんですか。
川上:そうです。患者さんがこのアプリに記録した生活習慣をもとに、ドクターがアプリを通して経過を見たり、治療を施したりすることができます。そうやって、糖尿病の治療価値を提供するためのサービスです。
城倉:処方されて治療を受けられるアプリ、それはおもしろいですね!
川上:2型糖尿病の治療薬を提供している企業と共同開発をしています。最近は製薬企業でもこうした医療系アプリの開発にチャレンジする企業が増えていますね。
城倉:いろいろな企業が医療系のサービスを開発しているなかで、Save Medicalならではの強みをあげるとすると、どういったところになるのでしょうか。
川上:社長が前職時代に国内外でデジタルヘルス領域での事業経験(CVC)がある点は強みの一つですね。また、主要株主である日本医療機器開発機構が、医療機器を製造・販売するノウハウや必要に応じて論文やエビデンスを実用するノウハウを持っているのも強みだと思います。
城倉:医療系のサービス開発に興味があるエンジニアにとっては最適な環境ですね!
川上さんご自身は、前職までで医療系サービスの開発経験はあるのですか。
川上:経歴を簡単に説明しますと、新卒でスマートフォンゲームのドリコムにエンジニアとして入社して、その次にヘルスケアサービスを提供している企業に転職しました。Save Medicalは3社目になります。医療系は事業としての魅力もありますが、技術を使った課題解決と社会的な意義が組み合わさっているところに魅力を感じています。
城倉:なるほど。次に、現在の川上さんが現在どんな仕事をされているかを伺ってよろしいですか。
川上:2型糖尿病治療アプリの開発チームでCTOとしてアプリ開発に携わっていて、今後も引き続きこのチームをリードしていく予定です。現在、Save Medicalにジョインして半年経過したところです。今まではスピード優先で立ち上げてきたフェーズでしたが、ここまでは最適解を探しながらアーキテクチャを修正したり、運用フローを整備したりして、試行錯誤しながら今に至ります。今後もサービスの開発・運用のフェーズを続けていく予定です。
組織作りにおける内製化とマイクロサービス化
城倉:今後の業務で、新たにチャレンジを加えたいということはありますか。
川上:今はまだ事業立ち上げのフェーズで、アジャイルというか、仕様を作ったり変更したりを継続的に繰り返している段階ですね。
技術要素としては、Ruby、React Nativeを中心に、AWS、CircleCI、fastlaneといったものを採用しています。今後は、ユーザー数の増加や、サービスをスケールしていくことが想定されるため、プラットフォームの開発を見据えたマイクロサービス化の構想もあります。
城倉:いったんマイクロサービス化して、置き換えられるところから置き換えていくという感じですね。現在はどのような開発体制でしょうか。
川上:エンジニアの社員としては私一人で、開発はアウトソース・パートナーの方々に協力をしてもらっています。今後は内製化、社員としてコミットしてくれる人の割合を増やして開発を加速させたいですね。
城倉:内製化する目的やメリットについて聞かせていただけますか。
川上:今後は開発するサービスも増えていく予定なので、社内に自分と同じようなマインドのメンバーを増やしていく必要があります。また、先ほどマイクロサービス化の話が出ましたが、将来的には開発ももっと効率化しなければならないでしょう。プロダクトとしての展開が始まれば、ユーザーである患者さんに対してプロダクトを提供し続けることになりますから、長く安全かつ低コストなサービスの実現を目指して、継続して取り組んでいけるチームを作りたいです。
城倉:スケールしていく上で、川上さんと同じマインドがある人を集めたいということですね。魅力的なプロダクトのチーム構築に最初から携われるというのはエンジニアのキャリアとしても魅力的ですね。これから採用を進められてエンジニアが増えていくと思いますが、1チームあたり何人くらいをイメージされているんですか。
川上:1プロジェクトにつき、社員としてジョインするのが5名くらいでしょうか。開発フェーズでものを作っていく段階では、それくらいが適切なのかなと思います。開発フェーズによってパートナーとしてアサインする方を含めるともう少し多くなると思いますが、社員としてコアにあたるメンバーは5名くらいのイメージです。
城倉:やはり少人数のほうがコミュニケーションコストも低いし、いいものが作れそうだからですかね。
川上:そうですね。医療は品質で勝負しないといけない部分がありますし、セキュリティも担保しなければなりません。小さい穴がひとつ開くだけで、大きな被害を生んでしまうこともあり得ます。それが起きないように、ちゃんと知見が浸透した状態で、小さなチームでやっていくことが必要かなと思います。
城倉:開発チームとして、ビジネス側のみなさんとの関係性はどのような感じですか。
川上:言い方として合っているかはわかりませんが、とてもフレンドリーにやらせてもらっています。中でも事業の方向性やプロダクトの価値といった話では、意見を直接ぶつけあいながら進めています。事業に自分の意見を反映していきたいエンジニアの方にとっては、かなり刺激的な環境だと思います。
たくさんの人が喜んでくれる世の中にとって意義のあるサービス
城倉:川上さん自身がこの事業をスケールさせたいと感じるモチベーションや面白みって、どこにあるんでしょうか。
川上:この治療用アプリが実現されると、ドクターや糖尿病療養指導士さんが患者さんと直接会えなくても、一定の効果を見込めるような治療が提供できると想定しています。将来的に医療従事者のスキルがアプリ上で再現できれば、それによって救われる方がたくさん出てくるはずです。患者さんの病状がよくなるのはもちろん、医療従事者の方々の負荷が減れば、より人の手が必要な治療に時間を使えるようになりますから、結果としてさらにたくさんの人を喜ばせることができると思っています。そういった意義が自分のモチベーションになっていますね。
城倉:すごくタイムリーな話ですよね。以前はリモートでの医療対応ってあまり聞く機会がありませんでしたが、最近はニューノーマルとして話題に上がることも多いので、時勢に合ったサービスで魅力的に感じます。一方で、医療はDX化が遅れている業界でもあるかと思いますが、川上さんはどう感じていますか。
川上:そうだと思います。たとえば紙のカルテを電子化してDX化できると思ったら、電子カルテのメーカーごとに仕様がさまざまで、簡単には統合できない……といった問題が現場には山ほどあるんですよ。
城倉:ITの力で解決できそうな課題がまだまだいっぱいあるんですね。
川上:そうですね、やれることはまだまだたくさんあると思います。
ビジョンに共感してくれるエンジニアを集めていきたい
城倉:次に、採用に関するお話を聞かせてください。こんなエンジニアがSave Medicalに向いているとか、こんな人がいたらぜひお話がしたいという要素はありますか。
川上:社長ともよく話しているのは「会社のビジョンに共感してくれる人」に来てほしいということですね。我々が実現しようとしていることに、社会的な意義やモチベーションを感じている人が集まっている組織を作っていきたいですから。あとは、堅牢なセキュリティと中長期での運営を見据えていく必要があるので、一緒に長い目で設計していけるような方にはぜひ来てほしいと思います。
城倉:やはり医療系の経験がある人のほうがよいのでしょうか。
川上:いえ、医療系の経験は問いません。ただ、興味は持っていてほしいと思います。論文を漁ったりしていくうちにどんどん知見も溜めていける環境ですので、医療系のサービスに関心がある人からの応募をお待ちしています。
城倉:なるほど、それならエンジニアの知識欲や知的好奇心も満たされそうですね。
では最後に、川上さんが考える CTOにとって一番大事な要素を教えてください。
川上:一番大事な要素は、視座だと思っています。CTOはエンジニアリング領域で結果を出せるのが当たり前で、プラス経営にコミットする技術やプロジェクトの進め方を判断できなければなりません。 単に決めればいいわけではなく、説明責任や結果の責任を取ることも求められるポジションですから、組織が迷わないためのロードマップを示せるような視座の高さが重要だと思います。
城倉:本日はありがとうございました!
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