船井総合研究所(船井総研)では、デジタルを活用したコンサルティング事業の業績が好調だ。2023年度のDXとコンサルティングを組み合わせた事業は前年比21.4%の成長。主要事業の中でトップの成長率を誇る。

デジタル領域で存在感を発揮している船井総研は、どのようなビジネスを展開し、どのようなニーズに応えているのだろうか。執行役員を務める清尾 修さんに話を聞いた。

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船井総合研究所 執行役員 DX支援本部 副本部長 清尾 修さん

船井総合研究所 執行役員
DX支援本部 副本部長
清尾 修さん
1993年船井総合研究所に入社。同社社長室副室長、情報システム室室長、株式会社船井総研デジタル取締役などを経て、現職。船井総研グループの基幹システム開発プロジェクト、船井総研デジタルの管理会計制度設計、リスクマネジメント業務に携わる。現在はDX支援本部にてこれまでの経験を活かしてITコンサルティングを行っている。

中堅・中小企業のデジタル支援で起こる問題と解決法

船井総研のデジタル領域の中でも大きな割合を占める案件が、CRM導入と基幹システムのリプレイスだ。レガシーシステムを放置することで保守や運用が利益を圧迫する「2025年の崖」が迫るいま、その崖に落ちないように奮闘する企業のプロジェクトを成功へと導く役割を担っている。

「基幹システムからERPやSaaSに移行するお客さまは多いですが、簡単なことではありません。業務に合わせてつくってきた基幹システムに対し、ERPやSaaSは機能が限られています。どうしても移行できない業務があるため、対応方法も決めなければなりません。業務を棚卸して、標準化を進めながら、ビジョンを策定していく。しっかりと伴走するのが弊社の役割です」

船井総合研究所 執行役員 DX支援本部 副本部長 清尾 修さん

船井総研のメイン顧客層である中堅・中小企業では、発注の責任者が経営者になることも多い。基幹システムのリプレイスには大きな投資が発生するため、業務改善の効果も強く期待される。「極端な例ですが」と前置きをした上で清尾さんは具体例を説明した。

「基幹システムをリプレイスするのであれば、10人で取り組んでいた業務を7人や6人で担えるようにしないといけないですよね。CRMを導入する場合、システム導入による集客人数の目標を設定します。KPIの設定と達成に厳格に取り組む必要があります」

相談を受けるのはシステムのリプレイスの案件だけではない。中小企業が売上を伸ばし、中堅企業へと組織化を進めるときに、「デジタルを活用して売上を伸ばしたい」と声をかけられる機会も増えている。多くの企業が船井総研のセミナーを受けて、デジタルの活用に興味を持つという。

「SaaSが一般化してきたので、以前よりもデジタル化に積極的な方が増えてきました。デジタルアレルギーの経営者はほとんど見かけません」

船井総研が行っているセミナーの一部。中小企業の経営者たちの興味関心を掴む内容がそろっている
船井総研が行っているセミナーの一部。中小企業の経営者たちの興味関心を掴む内容がそろっている

しかし、従業員がデジタル化に消極的なケースもある。改革を進めたい経営者と仕事を変えたくない従業員は対立しやすい。このような対立を解決するにはどうしたらいいのだろうか。2つのことが求められると強調する。

「まず、ITビジョンやグランドデザインを設定し、従業員に企業の向かう先を示すことが重要です。次に、注意しなければいけないのが、従業員の意見をそのまま受け入れてしまうこと。デジタル化を進め、いままでの業務を処理していた機能がなくなるという壁にぶつかったときに、やみくもに高価なアドオンを追加してはいけません。費用対効果を把握し、業務をシステムに合わせるように改善を進める必要があります」

カルチャーギャップを越えての子会社合併で開発組織を強化

船井総研ではエンジニアの果たす役割も大きい。DX支援本部の従業員のうち、エンジニアが半分を占めている。開発するシステムの多くはマーケティングの領域だ。集客に課題を感じている顧客が多いため、CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援システム)の開発を依頼される機会が多い。そこで生まれる課題に対し、コンサルタントとエンジニアが連携しながらプロジェクトを進めている。

「年商が10億円を超えた企業は組織化の壁にぶつかります。トップ営業主体から部門を設けて、担当者に任せる傾向にありますが、売上を獲得するために、デジタルを活用したいと要望される方が多いです。ただ、お客さまたちも予算を考えたときに、Salesforceなどの導入がむずかしい場合もあります。最近ではコスト対効果の高いZohoを活用した開発を進める機会が増えました」

船井総合研究所 執行役員 DX支援本部 副本部長 清尾 修さん

2024年4月に、デジタルに関わる2つの子会社が船井総研と統合したため、コンサルタントとエンジニアの連携はさらに強化された。

しかし、統合において乗り越えなければいけない壁も大きかったという。

「3社の合併だったので企業間のカルチャーギャップもありました。1社は船井総研の間接部門を集約する形で生まれた会社だったため、共有しているカルチャーも多かったです。大きな苦労はありませんでした。ただ、もう1社はIT子会社です。グループ会社ではありましたが、カルチャーの異なる部分はたくさんあり、意識の共有には時間がかかりました」

合併から半年が経った現在では、組織が1つになったことによるメリットが大きい。

船井総研の社内には、業種別に専門テーマに精通したコンサルタントやエンジニアもいる。情報や知見の共有をしやすくなり、より顧客のニーズを満たすためのコンサルティングと開発プロジェクトを遂行できるようになった。

生成AIを活用しながら新時代のエンジニア組織をつくっていく

システムの導入だけではなく、生成AIに関する開発も要望を受ける機会も増えている。生成AIが一般的になる前は、製造業などの業務改善にAIが活用されることが多かった。機械へのデータ入力の際のIot機器の活用や、工場の生産データのAIによる収集などが代表例だ。

しかし、生成AIの出現により、依頼を受ける内容が変わってきた。たとえば、住宅業界などでは、図面作成に生成AIを使いたいという要望が増えている。

船井総合研究所 執行役員 DX支援本部 副本部長 清尾 修さん

「生成AIを活用して、パース図や間取図を作成できると大きな業務改善につながります。これまでは、営業が顧客から情報を受け取り、その情報を元にデザイナーが図面を作成していました。このとき2人分の仕事が発生しています。生成AIの活用で1人分の仕事を減らすことができるのではないか、と期待されていますね」

また、生成AIに関する依頼内容も変わり続けている。

「LLMと独自のデータベースを紐づけるRAG(検索拡張生成)の要望をいただく機会が増えました。AIに詳しいエンジニアもいますので、機密情報に注意しながら開発に取り組んでいます。ただ、その傾向も変わってきています。現在、市販のRAGがどんどん増えているので、ひたすら開発に取り組むのではなく、お客さまに最適なものを提案する仕事にシフトしつつあります。生成AI時代に入り、エンジニアのプロジェクトマネージメントスキルはより求められていると感じます」

生成AI時代は技術革新の起こるスピードが速い。LLMが進化し、その進化を根底としたプロダクトが新たに生まれていく。まだ勝者が決まっていない成長市場において、重要になるのはプロダクトの活用方法や特徴をつかみながら、知識をアップデートしていくことだ。

デジタル領域で売上を伸ばしている船井総研は、着実に実績を重ね、新しいテクノロジーとともにさらなる成長を遂げようとしている。どのような未来を見据えているのか、今後の目標について語ってもらった。

「新しい体制で事業に取り組んでいますが、まだまだ成長途上です。エンジニアの採用を増やしながら組織体制を固めていき、増えているデジタル領域の需要に応えることで、業績拡大に貢献したいです」

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(取材/文:中 たんぺい、撮影つるたま

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