私はフリーランス20年目になる40代のライターです。特定の会社に雇用はされていませんが、複数の会社から仕事を請け、そのうちいくつかはチームメンバーとして継続的に関わらせてもらっています。
先日、ある会社のオンラインミーティングで、「広報や宣伝に向いていると思うし、フロントに出ていけるタイプですよね」と言われて、驚いたことがありました。私は自分のことを「神輿に乗る人」ではなく、「神輿をかつぐ人」、つまり縁の下の力持ち的な役回りが適していると思っていたからです。
しかし、言われてみれば、知らない人に話しかけたり、ゆるっとしたつながりから関係を作っていったりするのは、とくに苦になりません。いいと思ったものは頼まれなくても発信したくなるし、人と人をつなげることもよくあります。
それまでは「神輿に乗る人」=「フロントに出ていく人」という固定観念がありましたが、そのひと言がきっかけで、神輿をかつぐ人がフロントに出ていってもいいのかもしれない、と考えるようになりました。そして、自分にとって普通のことが強みになるのだな、とも。
目次
他者の長所や強みを見つけて「伝える」メリット
苦もなくできることが「強み」であると、自分ではなかなか気づけません。できて当たり前なので、「たいしたことじゃないし、こんなの誰でもできるでしょ」と考えがちです。しかし、「あなたのそれは強みだよ!」と教えてくれる人たちが周りにいると「そうなのか」と気づけます。
たいてい強みとは相対的なものなので、自分の強みを教えてくれる他者の存在が重要です。では、どうしたら人に自分の強みを教えてもらえるのでしょうか。
私は「自分も人の長所や強みを口に出して伝えるようにする」のがキモだと考えています。つまり、自分も、誰かにとっての「強みを教えてくれる他者」になること。
人は、誰かに何かをしてもらったら、自分もお返ししないと申し訳ないと感じるものです(返報性の法則)。人の長所や強みを伝えようと思えば、その人をよく観察するようになります。観察して見つけた長所や強みを伝えると、お返しに相手も伝えてくれるようになり、よい関係性ができていくと思うのです。
「自分から伝えるべきなのはわかったけれど、自分は話し上手じゃないし、人のいいところを見つけて伝えるなんて難しそう……」
もしそう感じているなら、コミュニケーションセミナー講師・北村朱里さんの『後輩がはじめてできたら読む本』が役立つかもしれません。前述の通り私はフリーランスで後輩と呼べる存在はいませんが、それでも真似したい「伝え方のコツ」にいくつも出合えました。
すぐ褒め上手になれる「伝え方のコツ」5つ
『後輩がはじめてできたら読む本』は、タイトル通り、職場で初めて後輩ができて、育成やフォローを任されたけれど、どうしたらいいかわからない人のための本です。自分も先輩として成長しながら、後輩を「自ら進んで動ける人」へと成長させる……。そのために役立つ「50の伝え方」が、誰でも簡単にできることからステップを踏んで解説されています。
これらの「50の伝え方」は、先輩と後輩の関係性に限らず、応用できるものが多いです。私がとくに真似したいと思ったものをいくつか引用します。
・言葉と表情を一致させる。ありがとうを言うときは、にっこり明るい声で
・ありがとうに加えて「なぜありがたいのか」「どうありがたかったのか」も伝える
※p.24より引用
「ありがとう」と言うだけなら簡単です。しかし「忙しいのに手伝ってくれてありがとう」と言えば相手は嬉しい気持ちになりますし、「忙しいのに手伝ってくれてありがとう。おかげで間に合ったよ」と言えば相手は行動を認めてもらえたような気持ちになるでしょう。
いろいろなシーンで応用できるので、つい「ありがとう」で済ませてしまいそうなときも、「なぜありがたいのか」「どうありがたかったのか」を伝えるように心がけたいものです。
・目の前の人の「行動、発言、状態」に目を凝らし、良いところを抽出する
・まだ結果が出ていなくても、プロセスにおける「行動、発言、状態」に着目する
※p.28より引用
「伝え方以前に、人のいいところを見つけるのって難しくない?」と思うかもしれません。たとえば、編集者であれば「求める水準に達していない原稿を提出したライターをどう褒めるのか」、営業の仕事なら「1件も獲得できていない後輩をどう褒めるのか」。
本書には相手の「行動、発言、状態」に注目することで、良いところを発見できると書かれています。早めに到着して待ってくれていた、自分の意見を述べてくれた、笑顔で話を聞いてくれた……。このように「行動、発言、状態」のなかから良いところを抽出すれば、そのまま褒めるべきところになるわけです。
そして、「1件も獲得できていない」という結果から褒めるところを見つけるのではなく、丁寧に話ができたり、粘り強く電話をかけて昨日よりも〇件多くのお客様と話ができたりといったプロセスに注目すること。営業で大事なのはプロセスでなく結果かもしれませんが、プロセスなくして結果がでないのもまた事実です。
・評価の言葉を「感想」に置き換える
・人を巻き込む。良いところを伝える一文に複数の人々を登場させる
※p.32より引用
人の良いところを見つけられたら、相手にどう伝えるかも意識したいところです。本書には「褒めると何だかエラそうに思われる気がして、褒めるのが苦手」という人は、評価ではなく「感想」の言葉に変換してみよう、と書かれています。
相手が作った資料を受け取って「よくできています」と言えば評価になりますが、「わかりやすくて助かりました」と言えば感想です。エラそうにならないようにするには、「(資料が)よくできています」ではなく、「(私が)助かりました」といった「アイメッセージ(I message)、すなわち自分を主語にして感想を伝えることが大切だと再認識しました。
さらに、(わかりやすい資料のおかげで)私が助かったというだけでなく、「○○さんも喜んでいました」「チームメンバーにも共有させてください」と人を巻き込めば、相手はより嬉しいに違いありません。これも今日から真似したいテクニックです。
・ネガティブな事象や、誰かが言ったネガティブな言葉を、自分がポジティブワードに変換して話す
※p.42より引用
仕事においては、ネガティブなことを言わざるを得ないシーンもあります。「トラブルがあった」「膨大なタスクを大急ぎでこなす必要がある」といった事実は変えられませんが、捉え方と伝え方は一つではありません。
本書には、「あと一日しかない」を「あと一日ある」、「難しい」を「やりがいがある」、「できなかったら怒られる(かもしれない)」を「できたら感謝される(かもしれない)」とポジティブワードに変換するケーススタディが載っていました。
困難や不運に見舞われた際にポジティブでいることは難しいと感じるかもしれませんが、「むしろよかったんじゃないか」の発想をしてみると、「認識変換力」が身につきます。「認識変換力」については、以下のコラムをご覧ください。
【参考記事】 ネガティブ思考を軽減する、「認識変換力」の重要性
・褒めるために他の物や人を否定しない
・褒める前にネガティブな面を言わない
・「なのに」「のわりに」を言わない
※p.45より引用
ポジティブな表現は積極的にすべきですが、本書にはポジティブの落とし穴、すなわち、一見ポジティブだけれどネガティブに伝わってしまったり、ポジティブに伝えているつもりがネガティブな感情を与えてしまったりするケースについても書かれています。
先ほど例に挙げた「わかりやすい資料」でいえば、「他の人が作るとわかりにくいのに、あなたの資料はわかりやすいね」と誰かを否定する要素を入れるのはNG! 褒めているつもりなのに、なんとなく悪口を言っているようになってしまいます。
本書には、他より優れていることを伝えたいなら、具体的な名称や特定の人を指す言葉は使わずに「こんなにわかりやすい資料を作れる人、なかなかいないよ!」といったフレーズで相手の希少性を伝えるとよい、と書かれていました。そう言われてイヤな気持ちになる人はいないと思うので、積極的に使っていきたいフレーズです。
また、「すごいね」という誉め言葉の前に、「新入社員なのに」「女性なのに」「文系出身なのに」をつけると、相手をモヤモヤさせてしまう場合があります。誉めてもプラマイゼロどころかマイナスになってしまうので、「なのに」「のわりに」は避けるのが無難です。
自分の強みを見つけるために見るべきは他者
誰かの強みや長所を見つけて本人に伝えるのに、特殊能力は必要ありません。いきなり社交的な性格になる必要もないです。本書に書かれている「伝え方」を読んで、真似できるものを真似していくだけで、コミュニケーションは良い方向に変わっていくでしょう。
冒頭に書いたように、自分が誰かにとっての「強みを教えてくれる他者」になれれば、自分の強みも人から教えてもらえるようになります。逆説的に聞こえるかもしれませんが、自分の強みを見つけたいなら、よく見るべきは自分自身ではなく、周りにいる人です。
『後輩がはじめてできたら読む本』には、今回紹介したもの以外にもたくさんの伝え方が掲載されています。後輩への言葉がけに限らず、人と関わる職業の方には何かしら応用できるものが多いので、伝え方に悩んでいる人はぜひ読んでみてください。
(文:ayan)

