私はもともとテスト会社や第三者検証会社(どちらもテストや品質を専業としている会社を指します。詳細は後述)と呼ばれる企業に勤めていて、そこからいわゆる事業会社に転職をしました。開発者やPMなど、テストエンジニア・QAエンジニア以外の方の中にはテストや品質を専業としている会社の存在をまったく知らないという方もいらっしゃいます。

そこで、本記事ではテスト会社・第三者検証会社についてご紹介します。

テスト会社・第三者検証会社とは

 

テストエンジニアやQAエンジニア(以降、簡略化のため「QAエンジニア」と記載します)が所属している企業は大きく分けて2種類あります。

ひとつは、自社サービスを持っていたり受託開発を行っている会社、つまり自分たちでソフトウェア開発をしている会社です。こうした企業では、QAエンジニアは顧客への納品やサービスのリリースに向けてテストを含む品質保証活動を行います。

もうひとつが今回のテーマであるテスト会社・第三者検証会社と呼ばれる会社です。

・ソフトウェアテストや品質向上に関する業務をサービスとして提供し、
・それが主たる事業である

会社のことを、テスト会社や第三者検証会社、と呼ぶ場合が多いです。

他にも、受託開発を行いつつも「検証サービス部」などの部署で品質関連のサービス提供をしている会社や、テスト専業の会社から事業を拡大して広くソフトウェア開発に対するサービスを提供している会社があります。厳密な区分けは難しいですが、おおまかなイメージとして「品質向上関連の支援をしてくれる会社」と思っていただければよいでしょう。

「第三者検証」とはどのような意味?

文字通り、作った本人(たち)以外の第三者が検証を行う、という意味です。

開発チームの中でテストを行うと、自分たちが作ったものについてはすでに背景や動作などを知っているため、バグの見落としがあったり使いづらい部分に気づかなかったりする可能性があります。

開発チームの外の人間=第三者がテストをすることで、見落としを減らしたり、検証の結果の信頼度が増す、という価値がありました。

またその他にも、テスト自体を第三者検証会社にアウトソースすることで、開発プロジェクトにおける山谷に柔軟に対応するなどのメリットもありました。
ありました、という表現を使っているのには理由があります。

これは筆者の主観ですが、これまで「第三者検証会社」と呼ばれていた・自称していた各社は、最近では第三者というワードを積極的には用いていない印象があります。私が勤めていた際も、周囲のエンジニアはあまり好んで使っていなかったように思います。

これにはいくつかの理由が考えられますが、一つはとくにWebサービスやモバイルアプリなどの開発サイクルが早くなり、アジャイルの普及が一因と思われます。現在の開発プロセスにおいて、開発チームが作り込んだものを第三者が最終チェックするのではなく、早い段階から品質向上につながる工夫をしていこうという考え方が一般的になりました。

また、内製化の動きも関連しているでしょう。開発やテストをアウトソースするのではなく、自社でエンジニアを雇って開発を行う方向に進んでいる企業が増えています。

参考:Gartner、日本におけるソフトウェア開発の内製化に関する調査結果を発表

こうした動きの中では、第三者としてではなく開発チームの中に入って同じ立場でテストや品質向上活動を行うことが求められます。それに応える形で、これまで第三者検証を主としてサービス提供していた会社も、自分たちの担う範囲を広げるなど「一緒になって品質向上をやっていきますよ」という見せ方に変わっていると筆者は見ています。

テスト会社・第三者検証会社は何をしてくれるの?

開発後に第三者としてテストをするだけでなく、開発チームと一緒になって品質向上に取り組む「テスト会社」「第三者検証会社」は、具体的にどのようなことで協力してくれるのでしょうか。

代表的なものは、以下があります。
・どのようなテストを行うかを考え、実際にテストをする
・テストを自動化して効率を高め、自動テストの保守運用を行う
・セキュリティテストや負荷テストなど、専門性の高いテストを行う
・品質向上のために開発やテストのやり方をどうすればいいかのコンサルテーション

具体的に「このようなテストをしてほしい」というレベルから、「品質が悪くてなんとかしたいから助けて」というレベルまで、さまざまな相談に乗ってくれる、と考えてください。

細かいサービス内容は会社によって違いますが、テスト会社は類似のプロジェクト・サービスに関する品質向上を多数行う中で得たノウハウが蓄積されているので、適切な施策を提案してくれるでしょう。

テスト会社を頼るデメリット

一方で、テスト会社を頼るうえでのデメリットもあります。

ひとつは、自社にノウハウが蓄積されづらくなる可能性があります。これはテストやQAに限らず、開発や運用などにも共有して言えることです。他社の力を借りる以上はどうしても相手の企業や個人に依存してしまう部分が出てくるため、自社内で得たノウハウをうまく残してもらうための工夫が必要です。ドキュメントや社内Wiki等に記載したり、テスト会社の社員と自社社員がペアで作業するなどが考えられます。これらは、テスト会社側の都合で担当者が交代する場合のリスクヘッジにもなります。

もうひとつは、「テスト会社に任せればOK」という勘違いです。テスト工程をプロに任せればそれだけで品質が担保される、ということはまったくありません。QAエンジニアだけでなく、開発者やその他プロジェクトに関わるすべての役割が、品質について責任を持つことが大切です。

QAエンジニアとして働いた経験上やりづらいシチュエーションとしては、仕様書や現行バージョンのアプリケーションを提供されて「あとはよろしく」というパターンがあります。ソフトウェアやサービスの品質を高めるためには、ドキュメントや動くソフトウェアだけでなく、

・開発の目的や体制
・スケジュール
・過去に発生した不具合
・単体テストや結合テスト、受入テストなど、開発や企画で行っているテストの内容

など、たくさんの情報が必要となります。こうした情報の提供や、開発側との頻繁なコミュニケーションなしには、QAエンジニアはその価値を発揮できません。「たくさんのテストをした」という結果は得られるかもしれませんが、プロジェクトや組織として品質を高める力がつかず、テスト会社や担当者が離れた瞬間から元の状態に戻ってしまうでしょう。

もちろん、テスト会社に頼むこと自体が悪いわけではありません。サービスを受ける側、依頼する側が意識することで避けることができます。

品質・テストの専門家が集まる企業のこともぜひ知ってください!

本記事ではテスト会社・第三者検証会社と呼ばれる会社についてご紹介しました。

これらの会社に勤めるエンジニアはほとんどがQAエンジニア、品質やテストのプロフェッショナルです。

本当はおもしろい“テスト・QAエンジニア”のお仕事でも触れたように、やはりまだまだ「QAエンジニアって何?」という方もいますし、同時に「テスト会社って何?」という方もたくさんいらっしゃると思います。この記事をきっかけにテスト会社の存在を知ってもらえたらうれしいです。

公平のため具体的な社名は出しませんでしたが、「テストや品質関連で困っている」という場合には、探して相談してみてはいかがでしょうか。

(文:伊藤由貴

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