2023年6月14日から15日にかけて、日本CTO協会が主催するカンファレンス「Developer eXperience Day 2023」が開催されました。さまざまなテーマのセッションがおこなわれたなかで、本記事では女性活躍やD&I推進のカギをテーマにしたセッションの内容をお届けします。

セッションには、パーソルホールディングス株式会社 グループデジタル変革推進本部 本部長の朝比奈ゆり子氏と、日本CTO協会の小賀理事が登壇。その模様をお届けします。

朝比奈 ゆり子(あさひな ゆりこ)さん
パーソルホールディングス株式会社 グループデジタル変革推進本部 本部長
プロジェクトマネジメントソリューションベンダーでのプロダクト開発、 ITセキュリティ会社2社でのコーポレートIT部門長を経て、2014年パーソルキャリアに入社しアルバイトサービスの企画・ITを統括。2018年、パーソルホールディングスへ転籍し、新規事業創造・オープンイノベーション推進を担う新会社パーソルイノベーションの法人設立に従事。現在はパーソルグループのデジタル変革を推進中。

小賀 昌法 (こが まさのり)理事
日本CTO協会 理事 / 株式会社LayerX 事業部執行役員(VPoE)
2010年から2021年まで株式会社VOYAGE GROUPでCTOを務め、退職後もTech Boardアドバイザリに従事。企画・監修した『Engineers in VOYAGE ― 事業をエンジニアリングする技術者たち』がITエンジニア本大賞2021で大賞&特別賞のダブル受賞。トラボックス株式会社を経て、2023年4月に株式会社LayerXに入社。

「一緒に働きたい」と選んでもらえる会社に

朝比奈氏(以下、朝比奈):
パーソルグループは、従業員数は6万7000人の会社です。国内に37社、海外に97社のグループ会社があり、気がつくと海外のほうが社数は多くなっています。

「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに掲げており、この世界観を実現していきたいと考えている会社です。

小賀理事(以下、小賀):
海外にこんなにも多くのグループ会社があるとは、わたしも知りませんでした。グループ全体で6万7000人も働いている大企業でありながら、女性比率が47%と非常に高く、全国平均を上回っています。

2023年5月に発表された中期経営計画を拝見すると、テクノロジードリブンの人材サービス企業になると書かれていました。社内でテクノロジー人材を育てたり、採用したりしていく動きが多いのでしょうか?

朝比奈:
そのとおりです。2023年からの中期経営計画では「テクノロジー人材を2000名以上にする」という目標を掲げています。

小賀:
パーソルグループでは、IT職種全体のうち約3割が女性だとうかがいました。内閣府の資料によると、全国平均の女性IT技術者は19%ですので、3割は非常に多いと思います。

さらに、グループ会社のパーソルプロセス&テクノロジーにおいては、42%が女性です。

ただ、採用情報ページを拝見する限り、とくに女性に限定した魅力づけをしているわけではないように思われます。

朝比奈:
そうですね。もちろん女性活躍は目指していますが、共通認識として性別問わずに働きやすい環境が必要だと思っています。性別に関係なく、パーソルグループとしての考えを打ち出して採用活動をしています。特に注力しているのは、組織のビジョン・ミッションに共感してくれる人と一緒にはたらきたい、ということです。

新卒採用もキャリア採用も、とにかく大変です。一緒に働きたいと選んでもらえる会社であるために、動画などを活用して可能な限りわかりやすく部門長のメッセージを伝えるようにしています。

小賀:
テックブログも公開されていますよね。そのなかに、座談会で家事や育児、在宅勤務のことも書かれています。

テックな記事もありつつ、このように会社のカルチャーも発信されていますね。これはテックブログのなかでも特徴的だと思います。こうした取り組みも採用に効果はあるのかなと思うのですが、いかがですか?

朝比奈:
面接のときに、「書いてある内容は本当ですか?」と聞かれることがあります。子育てや介護との両立といった、はたらき方に関する質問は男性からも多くいただいています。テックブログには社員のインタビューも数多く載せていますので、会社のカルチャーを発信できていると思います。また採用活動において、情報発信に限らずできることはすべて実行しています。たとえば面接官のトレーニングをして、実際に入社した人からフィードバックをもらって改善するなど全力で臨んでいます。

現場の声を聞いたうえでの取り組み

小賀:
事前にパーソルグループの現場の方々に、お話を聞いてきていただきました。そのなかで、「女性の働きやすさ」と「女性のキャリアパス」について取り上げたいと思います。

1つめの「女性の働きやすさ」については、ハード面だけではなくソフト面とのセットが重要です。

ここでいうハード面は制度の話で、ソフト面は制度をどのように運用していくかになります。「雰囲気」というワードがありますね。雰囲気づくりで気をつけているポイントはありますか?

朝比奈:
ポイントは2つあると思います。1つは風通しのよさ、もう1つは協働です。

風通しをよくするためには、情報をできるだけオープンにして情報格差を生まないとか、コミュニケーションを1対1だけにしないなどがあります。もちろん、1on1のようなコミュニケーションはベースにありますが、それだけだと閉塞してしまいます。

協働のためには、やはりチームとして一緒に働いていきますので相互理解が必要です。「あなたはどのように働きたいの?」「あなたはどうなりたいの?」と、つねに聞いたり言ったりできていると思います。

小賀:
続いて、女性のキャリアパスについてです。

率直な意見が出ていますね。回答を見て、朝比奈さんはどのように思いましたか?

朝比奈:
それほど忙しく見えているんだなとか、すごいってどういうことなんだろう? と思いました。

さまざまな働き方があるので、管理職だけが偉いわけではありませんし、それだけがキャリアパスでもありません。

最後の2つのコメントにドキっとしました。

「管理職が全員年配の男性になってしまうと排除されている雰囲気はなんとなく出てしまうと思う」

「見た目からくる印象も大切なので存在としてとてもありがたい」

同質性が高すぎると、心理的安全性の前にそこにいちゃいけないと思ってしまうんだなと感じました。そういう意味では、わたしが会社に存在しているだけでも意味があるのかもしれないと気づきましたね。

小賀:
管理職は忙しいから、女性に限らず敬遠する人が増えていると感じます。わたしもCTOだったころは、「小賀さんは忙しすぎて、小賀さんのように働く自信がないです」と言われたことがありました。

肩書のある人が「忙しすぎない」ようにするのは大事だと、あらためて思いました。

DI&Eの進化と「最高のリーダー」

小賀:
パーソルさんの中期経営計画のなかに、人的資本の方針でおもしろい取り組みがありましたので抜粋させてもらいました。

女性管理職比率の向上および男性育休取得促進を通じたDI&E※の進化と、多様なタレントマネジメント施策を通じた「最高のリーダー」の育成が記載されていました。

※Diversity, Inclusion & Equality

Diversity(ダイバーシティ):多様性。雇用の機会均等、多様なはたらき方。

Inclusion(インクルージョン):包括・包含。個々を尊重すること。

Equality(イクオリティ):等しいこと・同等・平等・対等。権利や利益が等しくあること。

どうやってこれらの取り組みを進めていくのかを、パーソル総合研究所さんが出されている機関誌の記事をベースに考えていきます。

このなかに「組織シニシズム」という、耳慣れない言葉が出てきます。記事から内容を引用します。

“組織シニシズムとは、一般には耳慣れない言葉だが、組織行動学や応用心理学などで用いられる概念であり、「組織に対する否定的な態度」と定義付けられている。分かりやすくいえば、居酒屋で社員同士が会社の悪口を言い合うような、まさにそうした会社への批判的態度や行動を指すのが組織シニシズムという概念である。”

こういうことってありますよね。

朝比奈:
どの職場や職種でも、たぶんゼロではありませんよね。興味深いのは、組織シニシズムには4つの側面があることです。

  1. 組織に対する疑念
  2. 冷ややかな職場
  3. 組織に対する負の感情
  4. 組織に対する批判的な構え

これらが高まると、転職意向が高まります。そして、どの職種よりもITエンジニアは組織シニシズムに強く影響されることがわかりました。

小賀:
ITエンジニア職とその他の職種で比較する資料があります。



たとえば、風通しのよさに関するところは非常に差が出ています。ITエンジニア職は、ここに影響をうけるわけです。他にも育成への無関心、ビジョンといったところに大きな影響をうけるようです。

こうしたデータをもとに、パーソルさんではいくつか取り組みをされていますね。

朝比奈:
ITエンジニアのみなさんは、なんのために働くのか、誰と一緒に働くのか、そしてなにを成し遂げるのかを大事にされていると思います。そのため、チームのビジョンと自分のビジョンが一気通貫になるように意識して取り組んでいます。

あとは、組織シニシズムも意識しています。風通しをよくし、チーム一丸となってマーケットに向かっていくような仕掛けです。

他部門と対等になっていき、頼り頼られる関係になっていくことも大事だと思います。ですので、周囲に対しても理解を求めたり、私たちの実績をしっかりと報告することで任せてもらえるようになったりしました。

昨年度の実績として、ホールディングスの人事や財務部門向けに半日以上のアジャイル研修を2回おこないました。こうしたトレーニングの場を提供できるようになっています。

小賀:
すばらしいですね。自部門だけでなく、他部門への理解を深めるためにトレーニングをされるのは、やりたいけれど難しいことの1つだと思います。こうした取り組みの結果、朝比奈さんの部署は非常にエンゲージメントサーベイのスコアも上昇しています。

女性活躍やDI&Eを考える際、女性だけを考えるのではなくてすべての人にとって働きやすい環境が必要なんだなと思いました。それが結果的に女性も活躍できる職場だったり、属性に関係なくダイバーシティのある環境になっていくのだと感じました。

朝比奈:
本日お話しした内容が、なにかみなさんのヒントもしくは反面教師の1つになれば幸いです。ありがとうございました。

(取材/文:川崎博則

― presented by paiza

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