社員が心身ともに健康な状態であり、エンゲージメントが高い状態で働ける組織をつくり、人材の価値を最大限に引き出し企業の生産性を向上していく人的資本経営。昨今では注目を集め、さまざまな企業がその実現に向けて意欲的に取り組んでいます。

人的資本経営を実現するには、組織と個人の状態を把握し、改善していく必要があります。どちらか一方ではなく組織と個人の両方を変えていかなければならないため、人的資本経営を実現することは容易ではありません。組織・個人ともに常に変革が求められます。

そんな人的資本経営を実現するために開発されたサービスが、「ラフールサーベイ」です。

「ラフールサーベイ」はどのようなコンセプトを持っていて、どのような機能があるサービスなのでしょうか。広報の大澤さんに話をうかがいました。

▲経営戦略ユニット 広報の大澤直人さん

個人と組織がWin-Winな関係に

ーーまず、ラフールサーベイの特徴について教えていただけませんでしょうか。

ラフールサーベイは、「個人が変われば、組織が変わる」をコンセプトとしたサーベイです。従来のサーベイには企業の人事や管理者が利用する機能が備わっていましたが、ラフールサーベイには社員自身が利用できるサービスも豊富に備わっています。

日本の労働市場では、人的資本の情報開示の背景もあり、サーベイを採用する企業は増えています。ただ、調査結果が社員にフィードバックされず、管理者でのみ把握されるケースは少なくありません。そうするとサーベイを受けた社員は「なんのためにサーベイを実施しているのだろう?」と疑問を抱くようになります。

結果、協力を仰げなくなったり、回答率が下がったりとうまく施策をまわせない状況に陥るります。このような状況を防ぐためには、企業が導入した背景と目的を社員に説明した上で、結果を社員にフィードバックし、対策方法を示すことが必要です。

そして重要なのは、社員個人のセルフケア意識を高め行動変容をしていくこと。もちろん個人の意識だけを変えても効果は十分ではありません。組織の改善にも取り組む必要があります。

ラフールサーベイは、個人の心身の状態やエンゲージメントをはじめとして、人間関係、組織関係、仕事内容、社内外ハラスメント、離職リスク、高ストレス者、ESG施策チェックなど総合的な組織状況を可視化。現状を把握しながら組織と個人の課題を改善し、組織と個人の両方がWin-Winになれる状態を目指せます。

ーーサーベイは組織だけを対象にしたサービスが多いと思います。ラフールが個人にも着目したアプリを開発した理由を教えていただけませんでしょうか。

もともと弊社では、ストレスチェックのサービスを提供していました。幸いにも多くの企業にサービスを導入いただいたのですが、「ストレスチェックだけでは根本的なメンタルケアに繋がりにくい」とお客様から相談を受けることが多く、その課題を受けて、社内で協議を進めていくうちに「ストレスの本質的な部分を捉えていかないと、会社も個人も変わらないよね」という結論に達しました。

また、ストレスチェックやエンゲージメントサーベイ・従業員満足度調査などの調査ツールを一元化したいというご要望もあり、精神科医の先生やAI分析の専門家と共同でストレスの要因を捉える研究をスタートしたんです。

その後、多くのデータを集め、そのデータをAIで分析することで組織と個人の状態を数値で表せるようになりました。

ーーありがとうございます。ラフールサーベイの大きな特徴である個人に働きかける部分について、どのような機能が備わっているのでしょうか。

▲社員が利用できる「ラフールサーベイ アプリ」

まず、セルフケアを促進するための機能が備わっており、日々のコンディションや睡眠時間を記録できます。記録を積み重ねていくことで、「この週はあまりコンディションが良くなかったからパフォーマンスがイマイチだったのかな」「会食が続いていたから少し寝不足だったんだな」と客観的に振り返ることができるようになります。

こういったコンディションの記録に関しても、セルフケアに対して積極的な人は続けやすいのですが、そうでない人は継続しにくいです。

ラフールサーベイでは、セルフケアに積極的ではない人も継続しやすいように、コンディションを1日朝晩で記録するとコインがたまる仕組みを設けています。

このコインは、コンビニのコーヒーやお菓子などと交換できるため、記録を続けるモチベーションに繋がりますし、働く環境を問わず利用できる福利厚生としてお客様にも活用いただいています。

また、ピアボーナス機能として社員同士のエンゲージメントを高めるために、感謝のキモチをメッセージとともにコインを送り合うこともできるんです。楽しみながら健康意識を高められるように、さまざまな仕掛けを実装しています。

ーーコインのやりとりとともに社員同士でコミュニケーションが取れると、リモートワーク下におけるチームづくりにも活用できそうですね。

信頼関係を構築するためにも、ラフールサーベイは活用できると思います。リモートワーク下では、テキストコミュニケーションがベースです。社員同士で直接接する機会が少なくなるため、上司部下の縦のコミュニケーションはうまく取れても、同僚同士の横の繋がりは希薄化しやすいです。

感謝の言葉を伝えるのはどこか恥ずかしいこともありますが、アプリ経由で一言だと送りやすいですよね。なにより言葉をもらったほうもうれしい気持ちになります。セルフケアの記録も含めて、ゲーム感覚でおこなえることを大事にしているんです。

ーー他に個人がセルフケアへの意識を高めるために設けている機能はありますか。

アプリの個人ページでマインドフルネスや自宅でできるストレッチの動画などを利用できます。自身のサーベイ結果からレコメンドされたり、気になったコンテンツに触れることで、セルフケアが身近なものになり、健康意識も高まります。

私自身、もともとセルフケアへの興味は薄かったのですが、いろいろと実践していくうちに体調の変化も感じ、仕事のパフォーマンスへ良い影響がでています。

また、30分の電話相談をできる機能が備わっています。メンタルクリニックに行ったり、カウンセリングを受けたりすることにまだまだ心理的なハードルを感じる方もいると思いますので、気軽に使ってもらえればと思います。

サーベイの活用で従業員の離職を抑制することができる

ーーラフールサーベイの活用方法について、お聞きしたいです。まず、どのようなシステムか教えていただけませんでしょうか。

ラフールサーベイには、ショートサーベイとディープサーベイの2種類の機能が備わっています。ショートサーベイは、19問の設問で構成され、変化の起きやすいメンタル・フィジカル・エンゲージメントの3つの項目を分析します。

ディープサーベイは、144問の設問で構成され、個人の心身の状態やエンゲージメントをはじめとし、人間関係、組織関係、仕事内容、社内外ハラスメント、離職リスク、高ストレス者をはじめとした総合的な組織状況を可視化し、組織の良い点、課題点を分析します。

ーーディープサーベイの回答結果からは、どのようなことがわかるのでしょうか。

上記のような分析項目に加え、全体の結果から良い点と悪い点のフィードバックがあり、課題に合わせた対策の提案まで自動で行われます。

ーー組織の強い会社では、ある部署の人間関係だけ悪い結果が出力されることもありそうですね。

同じ部署でも課によって結果がばらつくケースはあります。たとえば、営業1課は人間関係が良好なのに、営業2課は人間関係の数値が悪いというかたちですね。

以前に、人間関係の数値が悪い結果が出た部署に人事部が聞き取り調査をおこなったところ、「上司に相談しづらい雰囲気がある」というケースもありました。

こういった場合、人事から直接その原因となる人物やマネジャーに働きかけて、面談をおこなうことで改善へと繋げられます。

ーーディープサーベイの活用方法について、教えてください。

離職率の改善に活用できる部分は大きいと思います。ラフールサーベイを導入いただき、組織のストレスとなる部分を改善した結果、離職率が約10%減少した企業もあります。採用コストに換算した場合に、約1億円の効果があったとよろこびの声をいただきました。

また、新卒の離職に悩んでいる大手企業でもエンゲージメントを高められた実績があります。200人ほどいる新卒社員と面談を重ねていったところ、8割は普段の仕事に対するちょっとした悩みだったのですが、2割は「こうしたいけど、できなくて不満だ」と悩んでいることがわかったんですね。

「仕事でやりたいことはあるのに、取り組めていない」社員は、対策を取らないと仕事へのモチベーションが下がり、離職リスクが高まります。この2割の社員を重点的にケアした結果、離職のリスクが減りました。

ーー数値化できると手を打ちやすくなりますよね。

ラフールサーベイのエンゲージメント数値を管理職の目標に組み込んでいるお客様もいらっしゃいます。チームの成果を高めるためにエンゲージメント数値を目標におき、結果を参加にしながら隔週で必ず1on1を実施しているようです。

また、人的資本の情報開示が進む中で、統合報告書やレポートなどに、エンゲージメント数値の開示や中長期の目標をたて、どのように改善していくかなどを記載していただくケースも増えてきました。

サーベイを使って企業と伴走していく

ーーラフールサーベイを活用するには、分析結果の読み解き方など知識が必要になると思います。データの活用方法を教えていただくことは可能なのでしょうか。

弊社としては、ラフールサーベイをお使いいただいている企業と伴走して一緒に組織を改善していくことが多いです。ラフールサーベイの分析結果の読み解き方のレクチャーはもちろん、ご利用企業の経営戦略や人事戦略と紐付け、ラフールサーベイの結果をどのように捉え、なにを改善していくかをサポートします。

また、各種研修やソリューションも提供しています。たとえば、一般社員が受けられる研修であれば睡眠研修、管理職の方に向けての研修であれば、レジリエンス研修などを提供しています。状況に応じてご相談いただけると幸いです。

ーー最後に、今後どのようなことを実現していきたいか教えていただけませんでしょうか。

人的資本経営やウェルビーイング経営は年々注目度が高まっていくと予想されます。また、生産性年齢人口の減少にともない、一人ひとりの生産性を高める動きも必要です。

人材を企業の資本と捉え、その価値を最大限に引き出し、企業価値向上へと繋げる人的資本の考えをより多くの企業に認識していただき、魅力ある企業に変えていくことや生産性を高めることに貢献していければと考えています。

(取材/文/撮影:中 たんぺい

― presented by paiza

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