限られた時間を有効に使いたい。なぜなら、時間の使い方は、人生の成功と幸福に大きくかかわるから。たくさんの「やるべきこと」がある日々の中で、「やりたいこと」を実現していくためには工夫が必要だ。

私は長年同じような手帳を使ってスケジュール管理をしている。1日が24時間のタイムラインで表示されており、それが1週間分見開きで見渡せるタイプの手帳だ。デジタルツールも試してみたが、私には入力するよりも手書きのほうがしっくりくる。

仕事の予定もプライベートの予定もすべてこの手帳に書き込む。仕事は、プロセスを分解して各作業にかかる時間を見積もり、30分単位で記入する。プライベートは、ジョギングや家事といった日課などのほか、家族のイベントなども含め、ざっくり時間の確保だけする。こうして時間割を作り、できるだけその通りに行動するようにしている。

この方法でスケジュール管理をするようになって、もう15年になる。会社に所属していた頃は、複数の案件を進めながら、社内運営、人事評価などのマネジメント業務も担っていた。メール対応、チームメンバーからの相談、会議や打ち合わせへの参加などで、気がつくと夕方になっていることもしばしば。それから、企画を考えたり、原稿を書いたりといった作業に取りかかる。そのため、毎日のようにやり残しがあり、いつも仕事に追われているような不安があった。

そんな状態を解消したくて始めたのが、前述のスケジュール管理だ。この方法の特徴は、タスクを時間に落とし込んで、いつやるかまで決めてしまうこと。そうすることで、「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」と追われる不安が和らぎ、目の前の作業に集中できるようになる。また、「今週仕事に使える時間が、あとどのくらい残っているか」が把握できるようになるため、物量の調整もしやすい。

ただし、ひとつ問題がある。それは、予定通りに作業が終わらないことだ。たとえば、ある日の予定を調査2時間、構成1時間、執筆5時間で組んでいたとする。しかし、実際には構成の作成に3時間かかってしまい、執筆が2時間しかできなかった。そんなことがよくあるのだ。当然、その後の予定も調整しなくてはならない。時間をうまく使うためには、作業時間の見積もりの精度を上げる必要がある。これが私の課題だ。

『YOUR TIME 4063の科学データで導き出した、あなたの人生を変える最後の時間術』<著・鈴木祐>には、以下ように書かれている。

  • 人間の脳は、無意識のうちに、いつも確率を計算している
  • 何らかの事態が起きると、私たちの脳は瞬時に記憶のデータベースを使って計算をスタート。目の前で起きた現象に過去の体験が当てはまる確率を見積もり、その結果をもとに自分のリアクションを組み立てる
  • 過去とは、いまの状態の前に発生した確率が高い変化を、脳が「想起」したもの
  • 未来とは、いまの状態の次に起きる確率が高い変化を、脳が「予期」したもの
  • 私たちが感じる時の流れとは、脳内で起きる「予期と想起」の連なりにほかならず、それゆえに現実の時間とのずれが頻繁に発生する
  • つまり、時間を効率よく使うとは、あなたが抱く「予期と想起」を、目的に沿って調整すること
  • 個体差に合わせて“時間感覚”さえ書きかえれば、時間を有効に使えるようになる

万人に効果がある時間術は、いまだにひとつも見つかっていないらしい。時間術のメリットを享受するためには、時間に関する自分の個体差を把握し、それに適した技法を選ぶ必要があるようだ。

私が原稿の執筆時間を見誤るのは、想起の内容が実態を反映しておらず、「タスクの完了に必要な時間の量」や「タスクの完了に必要な個人の能力」の確率を甘く見積もっているからと考えられる。このようなケースには、自分がどう時間を使ったのかを記録する「タイムログ」が有効なようだ。「何にどのくらいの時間がかかっているのか」事実を記録し、そのデータを参考にスケジュールを組むことで、誤差の改善が期待できる。

本書は、時間感覚のタイプを未来4つ、過去4つに分類。タイプ別に時間をうまく使うための具体的な技法や、時間術のポテンシャルを正しく引き出す方法を紹介している。また、現代人を悩ませる時間不足の原因について、根本的なところまで掘り下げている。

著者は、自身の“時間感覚”にもとづいて、日々の暮らしを組み直したことで、いままでは年に1冊の自著を書くのがせいぜいだったのが、近年は年間3〜4冊を出せるまでにスピードアップ。それと同時に、1日に平均で15本の論文を読みつつ、2万〜4万文字の原稿を書き、定期的に1回90分〜120分の動画配信をするなど、従来のルーチンも乱していない。だからといってプライベートを犠牲にするでもなく、睡眠や運動の時間は一切減らしていないし、趣味を楽しむための余裕も十分に確保できているという。

「いつも時間が足りず、何かに追われている」「もっと大切なことに使う時間を増やしたい」といった悩みを抱える人に読んでほしい一冊だ。心に余裕を生むためにも、時間とうまく付き合っていきたい。

(文:コクブサトシ

presented by paiza

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