アイドル、歌手、役者、タレント、YouTuberやTikToker、はたまたアニメキャラクターなど、応援したい対象を指して「推し」と表現する文化がある。それになぞらえて、推しを応援する活動全般は「推し活」と呼ばれる。

本記事では、某ダンスボーカルグループの推し活に励んでいる筆者が、推し活を始めてからというもの実感している「自己成長」について、「仕事」「健康」「性格」「趣味」の4分野から解説する。

推し活の時間を確保するため、仕事の生産性が向上

まず、推し活を始めると仕事の生産性が飛躍的に向上する。その理由を3つのポイントに絞って解説する。

Point1.推し活の時間を確保するため、時間管理が上手くなる

アーティストを推しているなら曲を聴いたりMV(ミュージックビデオ)を見たり、役者を推しているなら映画やドラマを観たり、アニメキャラを推しているならアニメや原作漫画に触れたりなど、推し活にはある程度のまとまった時間が要る。

しかし、社会人として勤労や納税の義務を果たさなければならない以上、1日8時間(週40時間)は仕事に割かなければならない(特殊な事情を除いて)。推し活にはげむ者にとって、休日出勤や残業などご法度。推し活に割り当てる時間をなるべく多く確保するため「いかに早く仕事を終わらせるか」に全神経を集中させるようになる。

とくに、筆者のようなフリーランスの場合は、自分の裁量によって仕事量を調整できるため、なおさらだ。かといって、推し活にばかり精を出していたら、推し活資金が枯渇するため本末転倒になってしまう。

仕事と推し活のバランスをうまく保つ術が、推し活をしていると自然と身に付く。身近に、仕事が早く、かつ毎日楽しそうにしている人がいたら、十中八九「推しがいる」と思って間違いないだろう。

Point2.必殺!ご褒美戦略が効果的に作用する

推し活をしていると、仕事をしている間の集中力も高まる。なぜなら、「この仕事を終わらせれば推しの新曲が聴ける」「今週を乗り越えれば週末には推しのライブに行ける」など、推し活をしていると定期的にご褒美の供給を受けられるからだ。

24時間365日、寝ても覚めても心に推しが住んでいるような状態になる。目の前の仕事を完遂させればご褒美が待っている、と思うと、仕事に対する意識もポジティブに変化する。一仕事終えたあとに観る推しのMVは格別だ。

しかし、このご褒美戦略には諸刃の剣と言えるような側面があるので注意。仮に、推しにスキャンダルが発覚した場合は、この戦略はまったくの逆効果となってしまう。何があってもいいように、推しは複数準備しておいてリスクヘッジを図ろう。

Point3.休日・有休を有効活用する意識が高まる

推す対象によっても変わってくるが、アイドルやダンスボーカルグループ、歌手などのアーティストを推していると、定期的に現場へ通う必要性が出てくる。この場合の「現場」とは、ライブやイベントなどを指すオタク用語。せっせと現場へ通うオタクは「現場オタク」と呼ばれる。ちなみに、自宅で曲を聴いたりMVを観たりするのが主流のオタクは「茶の間」と呼ばれることもある。

現場へ通うには、もちろん休日や有休をフルに有効活用しなければいけない。日本では「なかなか有休を取りにくい」「自分ばかり休んでいると、他のスタッフに迷惑がかかる」と思い悩み、働きすぎてしまう人が多いように思う。しかし、推し活において遠慮は無用。モタモタしていたら現場に行く機会を失ってしまう。

とくにアイドルやアーティストは一過性の側面も強く、「推せるうちに推しておけ」といった名言もあるほど。メンバーの脱退やグループ解散も珍しくない大戦国時代において、推す側にもタイミングが求められる。休みを有効活用して現場に通い、仕事の日はトップレベルの集中力&生産性で職場に還元しよう。

いつまでも健康に推し活するため、生活習慣が改善

推し活には体力が要る。とくに現場通いを余儀なくされるタイプの推し活は、CDリリース、雑誌発売、各タイアップ企画のたびに該当する店舗へ向かったり、ライブやイベントのたびに地方遠征をしたりなど、とにかく移動する機会が多い。イベントやライブそのものにも体力を使うため、日ごろからの健康管理が欠かせない。

役者やアイドルなどを推していると、その美しさやストイックさに人間としてのリスペクトも増す。推しが「ジムやサウナで健康管理している」などと発言しようものなら、すぐさまジムの会員登録を済ませ、サウナ通いを習慣化してしまうのがオタクの習性だ。自然と食生活にも気を遣うようになる。

推しに認知されるなんて万が一にもありえないことだけれど、いつだって最低限の身だしなみでいなければならない。メイクや服への意識も変わってくる。

早寝早起きし、定期的に運動をし、食事にも気を遣い、おまけに外見まで整ってくると、嫌でも自己肯定感が上がる。推し活にまい進していると、気づいたら自分に対する“推せるポイント”も増えてくるのだ。

推しに恥じない自分でいたい、合言葉は「徳を積む」

常に心には推しがいる。そんな状態になると、性格や態度にも変化があらわれる。推しをリスペクトするがあまり、「推しに恥じない自分でいたい」といった謎のマインドが生まれるのだ。徳を積めるタイミングがあれば、積極的に徳を積みにいくようになる。

たとえば満員電車に乗ったとき、他の乗客が出入りする邪魔にならないよう、自ら奥のほうに入ってスペースを考慮する。もちろんお年寄りや子どもがいたら席を譲る。常に「他人から自分がどう見えているのか」を意識し、公共のルールを守る。誰が見ていなくてもゴミを拾う。立場など関係なく誰とでも笑顔であいさつし、気さくに話をする。

特別に大きな功績を成し遂げようとしなくてもいい。日頃、疲れていたらスルーしてしまうような事柄に対し、少しだけ心を開けばいいのだ。なんとなく、こういうちょっとした徳をコツコツ積むほうが、神様に効くように思える。

それもこれも、推しに恥じない自分でいたいがため。そしてあわよくば、イベントやライブのチケット運が少しでも上がってくれさえすれば……。それが、推し活にまい進するファン全員の願いといってもいい。

自然と周囲から「あの人は優しい、話しやすい」といった印象を持ってもらえるため、友人が増えたり、よい仕事が回ってきたりする。そうやって得られた繋がりから、また新たな仕事がやってきて、それが推し活資金に繋がっていく。推し活は、よいスパイラルを生んでくれるのだ。

推し活が趣味に!自然と交友関係が広がる

推し活をするようになると、数珠繋ぎのように友人や知り合いがどんどん増えていく。普段は人見知りで、初対面の人とはまともに話せないタイプでも、共通点「推し」があることによって話題には困らない。定期的に供給がある推しなら、「今日発売の雑誌見た?」「今週から始まるドラマ楽しみだね!」など、会った瞬間に会話が止まらなくなる。

ごくたまに「同担拒否」(同じ推しを応援している人を避ける心理)や「解釈違い」(アニメや小説、キャラクターに対する解釈が違う)など、地雷を踏まないように気をつけなければならない状況も生まれてしまう。しかし、推し活を通してさまざまなタイプのオタクと交流していると、自分とは合わないタイプの人を察知する能力に長けてくる。推し活をしていると、コミュニケーション能力も研ぎ澄まされてくるのだ。

とくに、子育ても仕事も一段落つき、自分の時間が一気に増えた60代以上の方にとって、推し活から得られる交友関係は貴重である。仕事から離れると、一時的に社会的な繋がりが希薄になってしまうが、推し活をしていたらそんな心配もない。

推し活で自己成長を目指す

仕事、健康、性格、趣味。4つの分野における「推し活」の効果は、世代や性別を問わずあらわれる。日々、目の前の仕事に追われがちなビジネスパーソンにこそ、人生をまるっと好転させてくれる推し活を勧めたい。

当然のことだが、推し活をするためには、推しを見つけなければいけない。「見つけよう!」と思って見つけられるものではないかもしれないが、推しとの出会いはいつだって開かれている。少しでも興味がわいたり、心が反応したりする対象を見つけたら、好奇心のままに触れてみよう。そういった行動力、リサーチ力も、仕事やプライベートに生かせる大事な力になっていくはず。

(文:北村有

― presented by paiza

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