まだまだ道半ば。志は変わらない。

人というもの、志高く、常に未来へ歩みを進めていけたら理想的だ。しかし、ときに壁に阻まれ諦めたくもなってしまう。

しかし、それでも諦めず志を変えずに歩みを進める人がいる。

国民民主党の代表である玉木雄一郎氏もその一人であることは間違いない。

本取材では3記事に渡り、玉木雄一郎氏に国民民主党の代表として考えている岸田政権のデジタル政策への本音や、昨今のテックトレンド、DX、デジタル人材の育成と活用などについて伺った。

本記事ではそのうちの岸田政権のデジタル政策への本音と、ChatGPTを含む昨今のテックトレンドについての考えに迫る。

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岸田政権のデジタル政策

まず、岸田政権のデジタル政策について。「対決より解決」を掲げている国民民主党として、賛否の一歩先の見解を示してくれると考えたからだ。

「大きな方向性としては間違っていないと思いますが、さらにスピードを上げてほしいというのが希望です。また、やり方が間違っていると思う部分もあります」

たしかにさまざまな意見こそあれ、進んでいる方向性として時代に逆行しているものとは思わない。この考えが正しく思える。

では、スピードを上げる必要性とは具体的に何なのだろうか。

「クリプトカレンシー(仮想通貨)もそうですが、急がないと人も企業も富もどんどん海外に流出してしまいます。そこはもう少し緊張感と危機感を持って、やるにしても早く決定してもらいたいですね」

スピード感についての延長で、国民の間でも話題となっているマイナンバーカードの話になった。これについても直面している課題に対してスピードが遅いと玉木氏は指摘する。

「私は『詫び石戦略でやれ』とずっと言っています。個人情報が正しく紐づけられているかどうかが一番わかるのは、本人です。せっかくだからみなさんマイナポータルに入ってみてください、そこで間違った情報を見つけたら、5,000ポイントとか1万ポイントをあげますとすれば、みんな血眼になって探すから一瞬で解決すると思うんですよ」

実際は行政や年金機構に任されているものであり、Excelを見て情報を突き合わせている。本人に探させて、見つけたらポイントをあげるほうがたしかに早い気がする。

「国民のリテラシーを上げていくには、一度マイナポータルに入ってもらって、スマートフォンから自分の健康保険や年金の情報がきちんと入っているかどうか、国民を巻き込んで総点検すべきだと思います。今のやり方ではいつまでも終わりません。

何かを実現しようとするときに、ミスやバグはつきものです。バグが出たときにそれをどう解決して、どう進めていくのかをディスクロージャー(情報公開)して、手順などを明らかにする。ミスがある前提で制度をつくって、修正プロセスも進める形にしたほうが、戦略としてはいいと思います」

最初から100%の精度を目指してもなかなかうまくはいかない。優秀な人材が結集してつくられるプロダクトであっても、何かしらのバグは付いてくるし、それを越えた先に精度の高いプロダクトが生まれるものである。

しかし、マイナンバーカードに関しては、その是非はともかくメリットを感じないという意見も一定量見受けられる。そういった意見にはどう向き合っていくべきだろうか。

「今はメリットも感じられないですよね。健康保険証の紐付けも、たとえばマイナンバーカードで受診した場合は病院での窓口負担が5%引き、10%引きなどとすれば、言われなくてもやりたい、となるでしょう。

電子処方箋で重複投薬などを防げたら、国にとっても本人にとってもメリットがありますよね。自宅に山のように飲まない薬があるのに、また同じような薬を出されることがあるじゃないですか。それはお互い不幸ですよね。電子処方箋自体がまだ4%ほどしか行き渡っていないので、そこを整えた上で、紙じゃなくてマイナンバーカードにしたほうが非常に便利になる。そういうことを先に見せるべきなんです」

デジタル分野でより推し進めていきたい政策

岸田政権のデジタル政策への考え方がわかったところで、国民民主党としてより推し進めていきたいデジタル政策は何かを問うた。

その答えは教育だ。

不登校が増えたりコロナ禍で学校に行けなかったりと、デジタル活用の必要度合いは増している。玉木氏は一つの例え話をされた。

「たとえば、『小学校5年生の理科を日本一上手に教えられる先生の甲子園』をするとしましょう。そこで優勝した人が学習指導要領に基づいて理科を教える動画を撮り、YouTubeにアップして文部科学省のWebサイトで公開する。

学校に行けなくてもいいから、それを見てくれたら学習指導要領に基づいた知識がきちんと身に付くようになっている。中には、とても学習が早い人もいますよね。ほかの人と一緒に聞いてもつまらなくて、それでいやになる人もいるから、早い人は先に進んだらいいんです。そうやって、一番上手に教えられる人の動画で学習してもらう。学習進度がずれてきたら、そこで先生が子ども一人ひとりにていねいに寄り添って、『この辺でつまずいたね』とアシストする役割に特化したほうがいい。

働き方改革で、今は先生の現場も深夜まで働いて大変だと言われているし、メンタルを病む人も増えていますよね。最適化と効率化を図り、双方がハッピーになるようにするべきです」

たしかに、生徒にとってメリットがあり、何よりも長時間労働が問題となっている教師側の働き方改革にもつながる。

また、学習速度の早い生徒もさまざまな悩みを抱えていることは事実であり、そういった生徒へ最適な学習を提供するきっかけにもなるだろう。

玉木氏はAI技術の活用にも言及した。

「AIに分析させて、カスタマイズできる教育がいいと思います。

たとえば、算数では分数の割り算で引っかかってつまづくケースなどがよくあります。そういった、多くの人が共通して引っかかってうまく乗り越えられないところを抽出して、乗り越えられた方法も収集して、それを教えて乗り越えていくとか。

AIを活用して、学習のあり方を根本的に変えられたらいいですね。

学校に行きたくない人は、カフェや図書館などで勉強して、最後の試験だけ通ればそれでいいよと言ってあげられるような、デジタル技術をフル活用した教育のあり方に変えていきたいです」

その後、玉木氏はご兄弟がプログラミング言語を習得したときのエピソードを話された。

「私の弟もそうですが、たとえばプログラミング言語は、ラーニングサービスを利用するにしても独学といいますか、自分で勉強する意思が大切です。動画を見ていろいろなプログラミング言語を学んでいる人が多いですよね。

だからこそ義務教育課程においても、動画をフル活用して、先生は生徒に向き合う肝心なところに特化したほうがいいですね。とくに教育の分野ではギガスクール構想でやっていますが、タブレットを渡せば済む話じゃなくてコンテンツなんですよね。その辺りの改革を徹底的にしたいです」

野党として政策をどう実現していくか

岸田政権のデジタル政策への考え方と、国民民主党として重要視していることについて伺ってきたが、率直な疑問が浮かんだ。

それは国民民主党が野党であるということだ。良い政策を立案したとて、それがそのまま岸田政権で実現するわけではないのだ。

かといって絵空事を並べているようにも思えない。国民民主党はどのように政策を実現させていこうとしているのだろうか。

「我々は『対決より解決』を掲げて、3年前に結党をして今日まで来ました。批判や反対ばかりで留まるのはやめようということでできた政党なんです。

もちろん、おかしいことがあればおかしいと言います。たとえば先日は、財務副大臣が税金を滞納していたので、辞めろと厳しく言いました。

一方で、あれがけしからんこれがけしからんとばかり言っていても、世の中はよくなりません。野党だからこそ、現実的で実現可能性のある政策を、先手先手で出すことをコアバリューにしようと取り組んできました」

「野党だとなかなか政策が実現しないと言われますが、 たとえばガソリンや電気代の値下げは、我々が2-3年前の早い段階から提言していました。国民民主党の政策にはあとから追いついてくるような政策が多いのです。

我々はきちんと公約にも掲げています。たとえば2年前の衆議院選挙の際に、ガソリン価格を引き下げよう、トリガー条項(※)を凍結解除して減税しようと公約に書いていたのは、うちだけです」

※トリガー条項 リッター53.8円のガソリン税のうち本来より上乗せされている25.1円を、ガソリン価格が高騰したときには一時的に免除する仕組み。2010年に導入されたが、2011年に東日本大震災の復興財源確保のために凍結され、一度も発動することなく現在に至っている。

「2022年2月以降はロシアのウクライナ侵攻があったので、どこの政党もガソリン代を下げよう、エネルギー価格を引き下げようと言い始めましたが、我々はそこからさかのぼること半年以上前に選挙の公約として掲げていました。

また、言うだけではなく自民党、公明党の与党と3党協議もしました。結果としては、残念ながら補助金という手法になってしまいましたが。ガソリンの値下げという国民に必要な政策に早くから目を付けて、与党も巻き込んで交渉して実現していくのが、私たち国民民主党のやり方です。政策本位で、与野党を超えて連携・協議していこうというのが基本的なスタンスで、これからも『対決より解決』で取り組んでいきたいと思います」

また前述のクリプトカレンシー(仮想通貨)の課税に関しても、早い段階から目を付けられていた。

「我々は早い段階から、期末時価評価の対象から除外し、収益が発生する時点で課税する方式にすべきだと言っていました。あるいは、今もまだ実現できていませんが、20%の分離課税にしていくことも早い時期から提案していました。

逆に言うと、海外の(税率が)安いところに行くと、日本人が結構クリプトカレンシーを持っているんですよね。それで日本に戻ってきて20%の分離課税を払ってくれるだけでも日本には多くの税金が落ちます。そういったことも、実は岸田総理に直接提案したり、国会で質問したりしています」

一方で、ただ正しいことを言い続けているだけではダメだとも玉木氏は言う。これはベンチャー企業で働く人々にも有効なスタンスだと考える。

「小さい政党なので、 大きい政党と同じタイミングで同じことを言ってもあまり意味がありません。ある種ベンチャーと同じですね。意思決定が早い分、早め早めに世界のトレンドをつかんで出していく。我々は『政策先導型』と言っていますが、まだ世の中に注目されていないころから必要な政策を公言して、政府の政策を導いていく役割は、これまでも果たしてきたと自負しています」

「最近は所得税の減税で賛否が分かれていますが、早いうちから、今の段階でやれと言ったのも、我々が最初です。ただ、今政府が検討している定額減税とは違います。むしろアメリカがやっているような所得税のインフレ調整、物価高に応じて基礎控除の額を引き上げていく形での所得税減税を提案していました。

もう少し我々の言うことをきちんと聞いてくれたら、もっとうまくいったのですが。いずれにしても先手先手で必要な政策を提案し、単に言うだけではなくて、ときには与党も巻き込みながら協議をして、実現につなげています。

政府与党も、国民民主党の政策はよく見てくれているし、聞いてくれますね。あまり的外れなことは言わないので」

AI活用の是非

では昨今のデジタルトレンドの一つである生成AIについてはどのように考えているのだろうか。日本の政治に関わる部分で言うと、「広島AIプロセス」などがある一方で、岸田総理をAI加工した悪質なフェイク動画が出回ってもいる。

玉木氏の回答は明快。徹底活用だ。

「私は徹底活用すべきとの立場です。

まず、国会の答弁のほとんどは生成AIやChatGPTでもいけるはずです。さきほどの動画による学習もそうですが、使ってはならないと言う人もいますが、不可能ですよね。最近は、ほとんどみんな使っていますから。

どのようなルールでやっていくか、一定のルールを決めた中で、むしろChatGPTなどを利用して何かを生み出していく。常にそばにある辞書代わりだというくらいの前提で、何かを生み出す能力を身につけられるように変えていくべきです」

「国会答弁のような定型的な答えを返すものなどは、十分対応できます。そうなると、人間の生産性も高まります。生成AIは去年くらいからトレンドになって、私も使っていますが、やはり大きく変わりましたよね。

教育課程の中にも、取り入れていくべきです。最近は、AIへの命令に励ましの言葉を加えるとより良い答えを返すという論文があって、おもしろいなと思いました。もちろん兵器などに使われると、そこは国際的な一定のルールが必要ですが。

頑張れと言って、エンカレッジすると良い答えを返してくるということも含めて、うまく使っていく必要があるのかなという気がします。今はどうやってうまく社会実装していくかを考えるのが、生産的な議論になるでしょうね」

では、玉木氏はAIなどデジタルトレンドの情報をどうやってアップデートしているのだろうか。これまた答えは明快。SNSをよく見ていると答えた。

「SNSをよく見ています。あとは海外のほうが情報は早いので、海外の専門家をフォローして、情報収集しています。

最近は、たまきチャンネルでも紹介したHeyGenという、私が多言語を喋っているように動画を変換できるプラットフォームなども使っています。英語しか話せなくても、ああいったものを使えば、さまざまな多言語での情報発信もできますね」

YouTube「たまきチャンネル」(チャンネル登録者18万人)で動画生成AIを取り上げた

「もちろんたどたどしさは残りますが、それでも今までとはまったく違ったコミュニケーションや情報発信ができる。多言語での情報発信には、より積極的に使っていきたいです」

このたどたどしさは残るが、という視点は大変重要と考える。AIにしろ何にしろ、新しい技術やプロダクトが出てくると「あれができない、これができない」という文句が必ず出る。画像生成AI、言語変換AIはまだ完璧ではないが、今までそれが一切できなかった人ができるきっかけをつくり出しているのは事実だ。こういったものにまず触れてみる、そのスタンスが未来へと歩みを進める社会人には必要なのかもしれない。

「昔と違って、SNSの投稿もボタン一つですべて翻訳できますから。翻訳能力が圧倒的に高まりましたよね。反対に、英語は英語のままさぼらずに読むように気を付けています。

あと、私はかなり初期の段階から音声入力を使ってきました。音声入力と変換は、AIの一番実務的なところですよね。その意味では音声入力と、その識別と翻訳能力が、AIの発展によってここ数年格段に上がっていますね。音声入力は毎日のように使っています」

取材後記

本記事冒頭の

「まだまだ道半ば。志は変わらない」

という言葉は、玉木雄一郎氏のWebサイト、プロフィール項目のヘッダーに記されている言葉だ。

こういう言葉を胸に私自身も未来へ歩みを進めていきたい。そう思える取材の現場であった。

次の記事では、玉木雄一郎氏に「DX」「デジタル人材の育成・活用」「日本の未来」について問う。

(取材/文:柳下修平、撮影:つるたま

― presented by paiza

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