先日、ふと思い立って久しぶりに全力で走ってみた。ジョギングをしているので、それなりに走れるだろうと思っていたが甘かった。踏み込むたびに足にズシリと負荷がかかる。すぐにふくらはぎや膝の裏あたりから、「これ以上走り続けるとケガするよ」と言わんばかりの信号が脳に送られてくる。100mなんてとても走れない。ほんの少しダッシュしただけで、翌日筋肉痛になってしまった。20代の頃と気持ちは変わっていないのに、40代になった体は確実に衰えてきている。

睡眠についてもそうだ。20代の頃は朝までぐっすり眠れていたので、翌日はスッキリ目覚めていた。それが40代になると、夜中に1〜2度は目が覚め、朝になっても疲れがとれていない。これまで自然にできていたことが、できなくなってきている。認めたくないものだな。自分自身の老いというものを。

全力で走れなくても困ることはほぼないが、睡眠の質の低下は仕事のパフォーマンスに影響するのでなんとかしたい。そんなとき、書店で見つけたのが「働くあなたの快眠地図」だ。

本書には、年齢による睡眠の変化について、このように書かれている。

“50代になると平均で最適な睡眠時間が6時間といわれているのに、7時間しか寝れずに困っているとおっしゃる方がよくいらっしゃいます。(P68)”

えっ! 睡眠時間って8時間がベストじゃないんだ。

“ほとんどの人が年齢を重ねるごとにベストな睡眠時間やパターンが変化していきます。ところがその事実をほとんど知らず、自分の最適な睡眠時間はずっと同じだと考えている方が多いようです。(P57)”

たしかに、20代の頃と比べて、睡眠時間が短くなった実感がある。6〜7時間眠れば十分で、逆に7時間以上は眠れなくなってきた。それは、自然な変化だと知ってちょっと安心した。 

“個人差はありますが、おおよそ人は厄年と言われる年齢のあたりで、さまざまなホルモンの分泌が急激に低下したり、同じ生活をしていても活性酸素が多くできたりします。(中略)もちろん睡眠も例外ではなく、このタイミングで睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌量が半減しますので、睡眠に大きく影響します。「眠れなくなる」「寝ても疲れがとれにくくなった」など、今まで睡眠に問題を感じなかった方が初めて「睡眠が悪くなったかな」と感じ始めるタイミングでもあります。(P245)”

つまり、自然にできていた快眠が厄年を迎えた以降は、意識して行動しなければできなくなってくるというわけだ。ぐっすり眠れることは、もはやスキルと言っていい。では、どんなことに気をつければ、睡眠の質を保てるのだろうか?

“年齢並みの低下を維持するには、1日6000歩を超える運動が厚生労働省では推奨されています。さらに老化を遅らせるためには8000歩以上が理想です。(P246)”

“消化する力が低下するので、夜にヘビーな食事は睡眠の質を下げます。(P246)”

“アルコールは入眠しやすくなりますが、夜中に起きやすくなったり、睡眠が浅くなるなど、快眠になりにくいデメリットも多いのです。(P126)”

わたしの場合、運動面はクリアできているが、晩酌の影響が大きいようだ。快眠を妨げないようにお酒の量や飲む時間を工夫していこう。

本書では、人間が生きていく局面に応じて変化する「快眠スキル」を、朝・夜・1週間・季節・年齢ごとに紹介している。これまで、良いと思っていたことが、実はそうでもなかったという発見もあり、快眠を取り戻したい方に読んでほしい一冊だ。

著者の角谷リョウ氏は、市役所勤務時代に体づくりに目覚めトレーナーとして独立。主に企業向けに「運動」「食事」「睡眠」の改善サポートおこなってきた。そのなかで、食事や運動の改善とは比較にならないほど「睡眠の改善」がメンタルやコンディションの回復につながることに気づき、睡眠改善に特化した活動にシフト。これまでに、計120社、累計6万5000人の睡眠改善をサポートしてきた。

“睡眠は無料で頭の中のゴミを出し、記憶を整理し、メンタルや体を回復させてくれます。今の時代のビジネスに最も必要な要素を、睡眠はタダで毎日作り出してくれるのです。(P64)”

心と体を健康に保ち、健やかに生きていくために、快眠は欠かせないスキルだ。世は人生100年時代。わたしも快眠スキルを学んで、80歳ぐらいまでは元気に働き続けたいものだ。

(文:コクブサトシ

presented by paiza

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