※こちらの記事は「paiza開発日誌」に2021月6月4日に掲載した記事を加筆・修正したものです。

ITエンジニアの採用って、本当に難しいですよね。開発チームをもっと大きくしたいのに、なかなか採用活動がうまくいかず、苦労している方も多いかと思います。

エンジニアチームを大きくするために、採用に注力するのはもちろん重要です。

ただ「今いるエンジニアにい続けてもらうこと」については考えられているでしょうか?

わたしは7年以上の間、エンジニアの転職をサポートするpaizaで、転職を考えているエンジニアはもちろん、エンジニアを採用したい企業のみなさんのお話も聞いてきました。

この記事では、そんな中でわかった「エンジニアが転職を考える要因」についてお話しします。

エンジニアが辞めるのは悪いことではない! でも……


大前提として、エンジニアの転職は悪いことではありません。エンジニアに限らず、やりたい仕事や目指すキャリアは日々変化していきます。

「現職のままではやりたいことができないな」と思ったときに、「じゃあ転職しよう」と考えるのは当然でしょう。

とくに優秀なエンジニアの中には、常に自分のスキルアップやキャリアについて前向きに考えている人が多くいます。現職に不満がなくても、「あの会社のほうがおもしろそう」といった理由で転職を決めるケースも少なくありません。

またエンジニアに限った話ではありませんが、本人と企業の関係がどんなに良好でも、家庭の事情などで退職せざるをえない場合もあるでしょう。

企業側が永続的に、すべての社員の希望に寄り添い続けることは、現実的には不可能です。世界的な有名企業や大手企業でも、毎年何人もの人が退職をしています。

ただし「エンジニアをもっと増やしたい、開発チームを大きくしたい」というフェーズなのに、短期間で複数人に退職されてしまう状態なら、話は別です。おそらく、組織側に根本的な問題が隠れているのでしょう。

エンジニアに退職されてしまう企業の特徴


エンジニアの退職理由といわれて、どんなことが思い浮かびますか? たとえば、給料や人間関係、残業などの問題は、よくある理由としてすぐに思いつくでしょう。

ただ、そこで「給与はここまでしか上げられない」「人間関係はどうしても合う・合わないがある」「納期前はどうしても残業が発生する」だから「この会社ではしょうがないよね」で終わってしまっては、何の解決にもなりません。

そして採用だけに力を入れても、辞めていく人のほうが多かったり、苦労して採用した人に早期退職されたりしては意味がありません。

エンジニアに「転職したい」と思われてしまう組織の特徴を、さらに分解してみましょう。

エンジニアが顧客やほかの部署から無理を言われる


受託開発企業の場合、顧客の一言で大幅な変更が発生したり、仕様が固まらないままプロジェクトを開始せざるを得なかったりするケースがままあるのは、想像がつくかと思います。

ただ、ここで「受託開発にありがちなパターンだな」「うちは自社開発だから大丈夫」と思った方は要注意です。自社開発だからといって、こういったケースが起こらないわけではありません。

実際に、たとえば事業部サイドから無理な機能実装を依頼されたり、ビジネスを盾に極端なスケジュールで開発させられたりと、自社開発でも同様の問題を抱えている企業は少なくないのです。

また、優秀なエンジニアほど「あの人にお願いすればなんでも解決する」と思われて、仕事を押し付けられているケースもよくあります。いくら優秀な人でも、仕事が増えると残業時間や身体的な負担が増えるのはもちろん、組織への不満が募ってしまいます。

最終的に「もっとエンジニアが働きやすい企業に転職したい」という考えにいたってしまうのも、無理はないでしょう。

エンジニアが軽視され、意見が尊重されない


エンジニアが提案や意見をしても、「エンジニアは決められたものを納期通りにつくっていればよい」という組織では意味がありません。

意見が反映されない、何か言っても後回しにされて対応されないような組織では、エンジニアも「何か言っても無駄、やろうとしても無駄なら、もう何もしないでおこう」となってしまいます。

これが続くと、「自分たちは軽視されている」「正当に評価されていない」という気持ちになり、「もっとエンジニアが尊重されて大事にされる会社に転職したい」と転職に意識が向くようになるでしょう。

社内にロールモデルがいない


優秀なエンジニアほど常に現状に満足せず、「このままこの会社にいてもよいのか、これからどんなスキルを伸ばしていくか、どんなキャリアを目指すか」と、自身のキャリアやスキルに対して不安や向上心を抱いています。

またエンジニアは優秀であればあるほど、チームの中で立場が上がっていくほど、周りのエンジニアや業務を通して得られる新たな学びは減っていきます。学びや発見がない仕事は、エンジニアにとってはつまらないものです。

とくに自分よりスキルの高く、ロールモデルになりそうな先輩がいない組織に対しては、「ここにい続けても自分のスキルやキャリアは頭打ちだろうな」「もっと成長の機会を得られそうな企業に転職したい」と考えるようになるでしょう。

すぐに退職されないエンジニアチームをつくるには

評価や労働環境、待遇などの改善


エンジニアの仕事が評価されず、不満が挙がっている組織であれば、まずは評価制度そのものを見直す必要があります

とくにエンジニア組織において、評価制度は「永続的にこの評価基準に沿って評価すればOK」というものではありません。むしろ企業のフェーズや組織構造などにあわせて、そのつど見直して、変更していく必要があります。

また、最近はリモートワークなどを許可する企業が増えていますよね。こうした企業の多くは、単に働き方が自由なだけでなく、何を評価するかが明確で、「成果が出ていれば自由でよい」という風土があります

評価制度を見直すと、評価基準が固まるだけでなく、自由度を上げてよい部分もわかるはずです。

コミュニケーションについて


エンジニアが何か言っても改善されなかったり、軽視されたりする場面が続くと、どんなに優秀な人でもいずれは何も言わなくなってしまいます。エンジニアに限った話ではありませんが、誰かがそう感じる組織は、風通しが悪く、チームビルディングができていない状態だと言えます。

エンジニア・非エンジニアを問わず、社内での縦断・横断的なコミュニケーションの機会を増やし、意見の出しやすい組織にしていく必要があるでしょう。

組織を進化させ続けることが重要


前述の通り、企業が社員の希望に寄り添い続けるなんて現実的に不可能ですし、すべてをエンジニアに合わせることも難しいでしょう。

ただ反対に、何人ものエンジニアが退職を考えてしまう状態の組織で、「何ひとつ変えられない」こともないはずです。

近年のエンジニア求人は非常に数が多く、スキルや経験のあるエンジニアは、あらゆる企業から求められている存在です。現職への不満が高まれば、我慢してまでとどまってはくれないでしょう。

優秀なエンジニアチームをつくるには、彼らがその力を発揮できる組織づくりについて考え続け、組織を進化させ続けることが重要なのだと思います。

(文:谷口智香

presented by paiza

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