国産PaaSを提供するHANAMII株式会社。沖縄県発のスタートアップで、2026年3月にはエンジェル投資家・経営者複数名からの資金調達を受けたことで大きな話題を呼びました。日本の開発環境の多くが海外製のクラウドサービスに依存しているのが現状です。海外のビッグテックが提供するPaaSが高いシェアを占める中、あえて今、国産PaaSを提供する意義はどこにあるのでしょうか。経営陣の熱い想いと、これからのAI時代を見据えた戦略に迫ります。

プロフィール

柴田啓祐氏(中央):HANAMII株式会社 代表取締役社長。株式会社HANATABA代表として「制限のない世界」をビジョンとしたシステム開発も手がける。

龍利典氏(左):HANAMII株式会社 取締役CTO。株式会社HANATABAのCTOも兼任する。

屋部辰朗氏(右):株式会社HANATABAおよびHANAMII株式会社所属、ソフトウェアエンジニア。小中学生向けプログラミングスクール講師等も行う。

目指すは「日本の空に咲くクラウドプラットフォーム」

-hanamiiは、どのような事業を展開されているのでしょうか。

柴田:僕たちは “日本の空に咲くクラウドプラットフォーム” をコンセプトに、国産のPaaS「hanamii」を作っています。一番の強みは、平均45秒で爆速デプロイができること!あとはバックエンドにさくらインターネットさんの「さくらのクラウド」を採用している点ですね。海外のビッグテックが市場をゴリゴリに独占している中で、「さくらさんの強固な国産インフラの上に、僕らが世界水準のイケてるUXを乗せちゃおう」っていう、ちょっと尖った戦略を取っています(笑)。

龍:「さくらのクラウド」が持つ信頼性と安全性は、僕らにとって本当に大きな武器ですね。現場のニーズって、セキュリティはガチガチに守りたいけど、PaaSならではの爆速な柔軟性も欲しいっていう、ワガママな2面性があるんですよ。僕らみたいなソフトウェアエンジニアがさくらインターネットさんとタッグを組むことで、そこを両立できる。ここにこの協業の面白さがあります。

AI時代に気づいた「国産PaaS」の空白

柴田:そもそも、普段AIを使ってアプリ開発をしてると、AIにおすすめされるのって絶対に海外のプラットフォームなんですよね。例えば米国の「Vercel」とか、面倒なセットアップもいらないしマジで便利だから僕もよく使うんです。でもそこで、「じゃあ、なんでこれくらいカンタンに使える国産PaaSがないの?」って気づいちゃって。そこから問題意識がスタートしています。

龍:ここ数年で生成AIがブワーッと普及して、誰でもプログラミングができる時代になりましたよね。でも、作ったアプリを世に出す「デプロイ」の作業だけは、今でも専門知識が必要で非エンジニアにはハードルが高すぎる。hanamiiは、そこを誰でもサクッとボタン一つでできるようにする、いわばソフトウェア開発の「ラストワンマイル」を埋めるサービスです。

-hanamiiは2025年11月に設立したスタートアップ。設立の経緯を教えてください。

柴田:創業のきっかけは、2025年10月に開催されたテック領域の交流会です。そこで共同代表の兼城駿一郎やさくらインターネットに会い、「日本には国産PaaSが必要ではないか」と熱く議論しました。皆が私と同じ問題意識を持っていることがわかり、どんどん事業の構想ができあがっていきました。さらに、さくらインターネット代表取締役社長の田中邦裕さんも沖縄で経営者コミュニティの代表理事を務められているご縁もありました。

HANAMIIは、兼城が手掛けている「株式会社みらいスタジオ」と、僕が経営している「株式会社HANATABA」という2社の合弁です。みらいスタジオはスタートアップの創出や支援を、HANATABAは行政や公共領域のDX支援、プロダクト開発をしてきた実績があり、お互いのノウハウをいい感じに補完しあっています。

屋部:社名は、HANATABAとみらいスタジオの頭文字を取って「HANAMII」としました。お花見は日本を象徴するワードの一つですし、「日本の空に桜を咲かせる」というHANAMIIのコンセプトにぴったり合っています。

日本のデジタル赤字は6兆円超!国産PaaSはその切り札となる

-今は「AWS」「Google Cloud」「Azure」といった海外製サービスが主流です。あえて国産のPaaSを提供する意義について教えてください。

柴田:やっぱり、国内でデータをちゃんと管理できて、しかも「円建て」で決済できるシステムって、いまめちゃくちゃ求められているんですよ。特に大企業だと、現場のエンジニアが「本当は別のPaaSを使いたい!」って言っても、上層部から「いや、よくわからないからAWSにして」って却下される事例が普通にある。僕がヒアリングしただけでも3社くらいありました(笑)。

海外のビッグテックが提供するサービスは使い勝手がいいというメリットがありますが、今の日本にとっては結構キツいデメリットが3つあるんです。1つ目が「デジタル赤字」。日本のデジタル関連の収支って、2025年時点で6兆円を超える大赤字なんです。DXだ、AIだ、と進めば進むほど、海外にお金が流れて赤字が膨らむ構造になっちゃっている。しかも、この歴史的な円安じゃないですか。ぶっちゃけ企業が払うクラウドのコストって、5〜6年前と比べて体感で4割くらい上がってる印象です。これ、相当ヤバいコスト増ですよね。

2つ目が「開発の遅れ」。日本の企業が海外のPaaSを使うときって、自社のセキュリティルールや日本の商習慣に合わせるためのすり合わせで、めちゃくちゃ時間を持っていかれるんです。結果的に開発スピードがガクンと落ちて、現場が求めるスピード感とズレちゃう。

最後が「セキュリティ(データ主権)」です。アメリカの「クラウド法(CLOUDAct)」という法律があります。そのため、今の日本ってただの「デジタル消費国」になっちゃってるので、早く「デジタル生産国」にシフトしないとマジでまずいな、と思っています。

コンパクトな組織だから、意思決定も開発も爆速

-そうして生まれたhanamii。現在の組織規模を教えてください。

柴田:今は経営陣とエンジニア、デザイナーを合わせても、全部で8名のめちゃくちゃコンパクトなチームです。でも、この人数だからこそ「これやろうぜ!」ってなってからの意思決定も合意形成も一瞬ですし、プロダクトの開発スピードを限界までブーストできています。もともと2社がガッチャンコしてできた会社なので、少数精鋭だけど、経営や開発に必要なプロフェッショナルは最初から全員揃っていましたね。

屋部:沖縄って、実は優秀なエンジニア志望の学生がたくさんいるんですよ。工学や技術を学べる高専や琉球大学があって、ポテンシャルの塊みたいな人材が育ちやすい環境なんです。県からの補助金や支援も手厚いですしね。ただ、悲しいことに学生の数に対して、彼らが輝ける最先端の「仕事」が圧倒的に足りていないのが現実で。せっかく優秀なのに、インターン先を探すのすら一苦労で、結局就職を機にみんな県外に流出しちゃうんです。

でも企業側からすると、沖縄って東京よりも圧倒的に採用しやすいし、みんな会社に愛着を持って長く働いてくれる。僕もそうだったんですけど、「ITをやるなら、やっぱり地元の沖縄に価値を還元したい!」っていう熱い想いを持った学生ってめちゃくちゃ多いんですよ。だからこそ、東京のイケてる仕事を沖縄で受け止める土台を僕たちがつくることには、ものすごい意義があるなと感じています。

-hanamiiは先日、著名なエンジェル投資家の方々から資金調達をしたそうですね。

柴田:はい! THE GUILDの深津(貴之)さんとは、さくらインターネットさんのイベント「SAKURA AI Conference」で知り合いました。深津さんはやっぱりプロダクトの核心であるUI/UXとか、システム構造に対する視点が超一流で、お話ししていて本当に刺激になります。

ほかにも、アルファドライブの麻生(要一)さん、公認会計士の松本(一哉)さん、フラーの渋谷(修太)さん、3Sunny創業者の志水(文人)さんと矢沢(慎之介)さんなど、そうそうたるメンバーが「hanamiiのビジョン、めちゃくちゃ面白いじゃん!」って賛同してくれて。これだけ多くのレジェンドたちに将来を期待してもらえているんだと思うと、身が引き締まるというか、もうやるしかないな!ってモチベーションが爆上がりしています。 

これからのエンジニアは「引き出す力」がないと生き残れない

-柴田さんはこれまで、エンジニアとしてキャリアを築いてこられました。hanamiiにつながる原体験について教えてください。

柴田:僕、めちゃくちゃニコニコ動画を見ていた世代なんですよ(笑)。昔から「ITってなんかカッコいいな!」っていう憧れがずっとありました。地元の電子情報の学校を中退してからは、eラーニングや本を片手に、完全に独学。好きなことを突き詰めるのが楽しすぎて、夜通しプログラミングに没頭する毎日でした。学生団体とサービスを立ち上げたりもして、あの頃の「モノづくりが好き」っていうワクワク感が、今のhanamiiにそのまま直結しています。

最近はAIを使った開発の圧倒的なスピード感に、自分でやっていてビビってます(笑)。昔と比べたら体感10倍くらいの速さで、アイデアがどんどん形になる。もう、楽しくて仕方ないですね!自分自身がずっと手を動かしてきたからこそ、エンジニアの現場の課題がリアルにわかるんだと思います。

-今後活躍するのはどのようなエンジニアでしょうか。

龍:今って、AIを使えばぶっちゃけ誰でもそれっぽいプログラミングやシステム開発ができちゃう時代ですよね。でも、だからこそ「すべてAIの言う通りにコピペすればいいわ」っていうスタンスはマジで危険です。

AIが書いたコードの意味やアプリの構造を理解しないまま、盲信して開発していると、どこかで絶対に行き詰まります。特にセキュリティ面。AIって、サイバー攻撃を仕掛ける側に回るともの凄く強くて恐ろしい存在なんですよ。これからのエンジニアには、「このコードはこういう意味で、このシステム構造にはこういう意図がある」と、自分の言葉でちゃんと説明できるロジカルな力が不可欠です。バグが起きたときに「じゃあこう修正しよう」と、人間にしかできない舵取りができるかどうかが勝負ですね。

柴田:本当にそうですね。新しいアプリをサクッと作ってリリースしたところで、「このサービスでどんな価値観を実現したいか」「誰をどうハッピーにしたいか」っていう根本のパッションがないと、結局誰にも使われない。ベースにある「AIを使ってこんな面白いこと企んじゃおう!」っていうアイデア自体は、絶対にAIからは生まれてこないですから。 

あと、これからのエンジニアには対人スキル、特に「インタビュー力」や「ヒアリング力」がめちゃくちゃ求められると思います。非エンジニアの方って、頭の中に「こういう課題を解決したい」っていうモヤモヤした想いはあっても、それをどうアプリに落とし込めばいいか分からないんですよ。そこをエンジニア側が上手く聞き出して、「それなら、こういうプロダクトで解決できますよ!」ってソリューションを提示してあげる。そういうコミュニケーションができるジェネラルな人材が、これから重宝されるはずです。

だから僕も、メンバーには「エンジニアもパソコンの前に引きこもってないで、どんどん外に出て現場に行こう!」って常に言っています。

屋部:開発に限らず、上から指示されたタスクをただこなすだけの仕事と、自分のプロダクトに責任を持って主体的にゴリゴリ進める仕事とでは、同じ時間を使っていても成長スピードが全っ然違いますよね。

逆に言えば、「これ作りたい!」「これ学びたい!」っていう内発的なモチベーションがある人にとっては、今はAIのブーストもあって最高にイージーで楽しい時代です。方法論は後からいくらでもついてくるので、そういうオタク気質な欲求を素直に持てる人が、これからどんどん活躍していくんじゃないかと思います。

クリエイティブな「楽しい余白」を、人間の手に取り戻す

-hanamiiは今後、どんな世界を目指していきますか?

柴田:エンジニアだろうが非エンジニアだろうが、「モノづくりがしたい!」っていう熱量を持った人たちが、その意欲を100%形にできる世界にしたいです。開発からデプロイまでがストレスゼロでスルスル進んで、セキュリティも国産だからめちゃくちゃ強固。僕たちの国産PaaSがその起爆剤になって、日本のDXやAI活用がここから一気に大加速してくれたら最高ですね。

もっと社会全体に目を向けると、今後は僕たちの想像もつかないようなスピードで、凄まじい変化が連発すると思うんです。いわゆるシンギュラリティが来て、人間以外のAIが新しい研究や大発見を勝手にしちゃうかもしれない。一方で、今の日本は少子高齢化で人口がどんどん減っていますよね。これって見方によっては、時代の主役を人間からAIへと、日本が自らバトンタッチしているような状態のようにも思えます。

でも、そんな激動の時代だからこそ、人間が「人間っぽく、楽しくやれること」がなるべく多く残されていてほしいじゃないですか。物事の一番クリエイティブで、一番ワクワクする美味しい部分こそ、AIに丸投げするんじゃなくて、僕たち人間が楽しむための「余白」として残されていたら最高にハッピーだな、と思っています。

※Hanamii株式会社のHPはこちらからご覧いただけます。

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