日本酒の輸出量が過去最高を記録した2022年。いま、世界で日本酒がトレンドになっています。

日本の文化であり、国酒である日本酒についての知識は、会食や接待の際にビジネスパーソンが備えておきたい教養のひとつ。そこで本記事では、SAKE DIPLOMAの資格を持つ筆者が、酒席で話題に上がりそうな日本酒にまつわる話を紹介します。

純米酒と吟醸酒って、どんな違いがあるの?

純米酒と吟醸酒は、高級酒に位置づけられる「特定名称酒」に分類されています。細かい規定がいくつかあるのですが、ここでは原料と精米歩合にフォーカスして説明します。

純米酒の原料は、米、米麹、水のみ。一方で吟醸酒の原料は、米、米麹、水に醸造アルコールが加わります。醸造アルコールを添加する目的は、大きく2つ。

  1. 風味を調え、香り高くすっきりとした味わいを造り出すこと
  2. 香味を劣化させる菌の増殖を防ぐこと

醸造アルコール投入のタイミングや適量の見極めは、「杜氏の技ひとつ」といわれており、日本酒の味わいを決める重要な要素となっています。

そして、吟醸酒にはもう1つ大きな特徴があります。

それは、原料の精米歩合が60%以下(大吟醸は50%以下)であること。

どうして、そんなに精米するのでしょうか?

米の表層部にはタンパク質や脂肪などが多く含まれているのですが、これらの成分は多すぎると酒の香りや味を悪くするといわれています。そのため、これらの成分を精米で削り落とします。一般家庭で食べられている米は、精米歩合92%程度ですが、日本酒の原料米の多くは精米歩合75%以下です。

料理にあわせてお酒を選ぶときは、味の濃淡や風味が近いものを選ぶとよいでしょう。たとえば、魚介やチーズを使った濃厚な旨味のある料理には、ふくよかな味わいの純米酒。果物や野菜の風味豊かな料理には、華やかな香りの吟醸酒がおすすめです。

ちなみに「純米吟醸酒」は、醸造アルコールが添加されていない吟醸酒のこと。香りも味わいも豊潤なのが特徴です。

日本酒は、どのようにできているの?

しぼりたての新酒を飲んだとき、「シュワシュワしている」と感じたことはありませんか?

あれは発酵によって生まれた炭酸ガスです。お酒は、酵母が糖を食べてアルコールと炭酸ガスを生成する「アルコール発酵」によって造られます。

たとえばワインの場合、原料であるブドウの中には糖が含まれています。そして、ブドウの皮には酵母が住み着いているため、潰して適温で保管するだけで、アルコール発酵が始まります。これを「単発酵(たんはっこう)」といいます。

一方で日本酒の場合は、原料である米に糖が含まれていません。そこで、麹菌の力を借りて、米のデンプンを糖に分解する酵素を生成します。日本酒のもとになる醪(もろみ)の中では、麹菌が生み出した酵素による米の糖化と、酵母によるアルコール発酵が同時に起こっています。これを「並行複発酵(へいこうふくはっこう)」といいます。

これは世界の酒類の中でも数少ない発酵方法で、デリケートなコントロールが必要です。「日本酒造りは難しい」といわれるゆえんは、ここにあります。

生酛や山廃酛ってなに?

「生酛(きもと)」「山廃酛(やまはいもと)」は、日本酒ラベルでもよく見かける言葉です。「生酛ってなんですか?」と、わたしも居酒屋で聞いたことがあります。

これは製法の違いによるもの。一般的な日本酒造りでは、醪を雑菌から守るために乳酸を添加します。しかし、生酛造りでは乳酸を添加しません。代わりに乳酸菌を増殖させ、その乳酸菌が生成する乳酸によって雑菌汚染を防ぐのです。なんとこの製法は、江戸時代初期に基本が確立されており、5〜9℃の低温で仕込むことから「寒酛(かんもと)」と呼ばれていました。

生酛造りでは、伝統的に山卸(やまおろし)という工程があります。これは蒸米、麹、水を桶に入れ、2〜3人一組になって棒ですりつぶす工程です。この作業は、時間を空けながら3回行うのですが、作業手順から夜中に行うこともしばしば…。蔵の中はとても寒く、大変な重労働でした。この作業を廃止して、代わりに「水麹(麹の酵素をあらかじめ水に侵出させたもの)」を使って造る方法を山廃酛といいます。

生酛・山廃系の日本酒は、さまざまな微生物が関与するため、一般的に濃醇かつ深い味わいの酒になるといわれています。

お燗にすると、味はどのように変わるの?

冷酒だけでなく、お燗で楽しめるのも日本酒のおもしろいところ。いまは、精米歩合60%、50%といった高精米のお酒が当たり前のようにあります。しかし、精米技術が発達する以前のお酒は、いまよりもずっと酸やアミノ酸が多く、酸味、苦味、旨味が豊かでした。

そのため、苦味をマスキングしながらバランスのとれた味わいで飲める方法として、燗酒が好まれるようになったのではないかと推測されています。

日本酒の温度を上げると感覚的な甘味度合いが上がります。しかし、いつまでも続くわけではありません。ある時点からエチルアルコールの沸点78.3℃に近づくほど下がりはじめ、同時に苦味が強くなります。その時点とは、42〜45℃の間。このことから、ふくよかでバランスのとれた味わいを燗酒に求める場合は、45℃前後が理想的といえます。

興味のある方は、温度を少しずつ変えながら味わいにどんな変化があるのか、試してみてくだいね。

酒蔵の軒先に飾られている緑の玉はなに?

あの緑の玉は「新酒ができました」という合図で、「杉玉」と呼ばれています。発祥は、酒造りの神として崇められている奈良県の大神神社(おおみわじんじゃ)。三輪山全体をご神体とする大神神社では、その山の杉をご神体の一部として飾ってきました。その風習が全国の酒蔵に広がり、いまではさまざまな場所で杉玉が見られるようになったといわれています。

ちなみに、茶色の杉玉は「お酒が熟成しました」という合図。「ひやおろし」のシーズンが来たことを知らせています。春先にできた新酒を火入れしたうえで貯蔵し、ひと夏熟成してから2度目の火入れをせずに「冷や(常温)」のまま出荷(卸す)ことから、ひやおろしと呼ばれるようになりました。

杉玉の色は、春が緑、秋が茶。春秋の味覚に、新酒やひやおろしを合わせて季節を感じるのも、風情のある楽しみ方です。

日本酒をきっかけに、豊かなコミュニケーションを!

先日、居酒屋で初めてお会いした方と日本酒をきっかけに盛り上がり、名刺を交換したら、なんと同業種! 意気投合して2軒目までご一緒する、なんてことがありました。

徳利とお猪口で酒を酌み交わすと、心が解きほぐれて自然と会話も弾みます。

日本人の主食である米を原料とする日本酒は、わたしたちの生活に深く根ざし、独自の文化を形成してきました。日本酒をきっかけに、日本はもちろん世界の方々と、豊かなコミュニケーションを楽しんでください。

 

参考文献:一般社団法人日本ソムリエ協会編『J.S.A SAKE DIPLOMA教本〔Second Edition〕』

 

(文:コクブサトシ

― presented by paiza

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