経営者の大きな悩みの1つが「資金調達」です。とくに起業して間もない会社では、資金調達は会社を維持するための命綱ともいえます。
これまでに、6,000件以上の資金調達支援をおこなってきたのが株式会社SoLaboです。資金調達のプロフェッショナルとして、自社でも総額4億1千万円の融資を受けています。
SoLaboの代表取締役を務める田原 広一さんに、これまでのキャリアについてうかがいました。設立から8年が経過し、社員数も増え続けていて順調そうに見える田原さんですが、意外にも挫折を味わってきてコンプレックスの塊だと話します。
目次
学生時代に挫折を経験し、コンプレックスの塊
――はじめに、田原さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
田原:
学生時代に挫折を味わっていて、コンプレックスの塊です。はじめての大学受験に失敗し、浪人しても失敗してしまいました。
FP(ファイナンシャル・プランニング)技能検定の2級に19歳のときに合格し、その後に税理士を目指して専門学校に通ったのですが、そこでもうまくいきません。
友人が資格の専門予備校「TAC」をオススメしてくれて、TACに通いはじめるようになりました。税理士試験は全部で11科目あり、必須と選択の科目を合わせて5科目に合格する必要があります。受験1年目はすべての科目に落ちて、2年目以降にいくつかの科目に合格しました。税理士試験に合格したのは、29歳のときです。
24歳のときには税理士を目指しつつ、合格した科目を教える講師としてTACで働きはじめます。税理士講座の財務諸表論を担当し、トータルで5年間、講師を務めました。
ただ、TACで働く直前にも挫折を味わっています。
多くの友達が所属していた税理士事務所がありまして、フットサルや忘年会にも呼ばれるくらいの関係性でした。「採用面接受けなよ」と誘ってもらったので受けたのですが、最終面接で「うち、大卒以外採用したことないんだよね」と言われて落とされたんです……。
――そんなこと言われるんですか……。ショッキングなできごとですね。
田原:
ちょうどそのころにTACに声をかけてもらい、働きはじめました。
TACで講師をはじめて1年が経ったころに、副業として経理代行の仕事をしていました。
経理代行の仕事をはじめると「経理よりもお金の借り方を教えてほしい」と、経営者の方から融資の相談を受けるようになったんです。とくに起業してから1-2年目の方はお金に苦労している方が多くて、依頼が多かったですね。
ただ、知識はあったのですが、具体的にどうやって融資を受ければいいのかは知りませんでした。知り合いに金融機関の方を紹介いただき、やり取りを進めて依頼元の融資を成功させました。はじめて融資支援の実績を得られたんです。融資支援を4件くらい成功させたタイミングで、ある経営者の方から「田原君はいろいろできますって言うけど、融資支援に絞ったほうがいいよ」とアドバイスをいただき、融資支援に絞りました。そうしたら多くの融資支援案件をいただけるようになり、いまのSoLaboにつながります。
コンプレックスの塊でしたが、いろいろなことにチャレンジしていたら、いいご縁をいただけました。
税理士試験に合格するも税理士にならずに起業
――長年勉強をして税理士試験に合格したのに、税理士にはならずに起業の道を選んだのはなぜですか?
田原:
「一緒に税理士になって法人を作ろう」と約束していた方とうまくいかなかったからです。税理士が2人以上いれば税理士法人を作れるので、一緒にやろうと話していました。それを目標にしていたので、「この人と一緒に開業ができないなら、税理士法人の開業はやめよう」と思い、税理士として独立する道を捨ててSoLaboに注力すると決めました。
――思い切りましたね。現在は資金調達支援に加えて、デジタルマーケティング支援事業もされています。この事業をはじめるようになったきっかけを教えてください。
田原:
経理代行や融資の支援をしているうちに「収益をつくる側」の仕事もしたいと思ったからです。経理代行のなかに記帳代行の仕事がありました。毎月お金をもらって帳簿の作成をする仕事です。どれほど丁寧に仕事をしていても、どうしてもコストとみなされるんですよね。コストとみなされてしまう以上、不景気になると真っ先に契約が切られてしまうと思いました。
そう思っているときに、融資支援をしていた会社から「マーケティングの一環として相続関連のオウンドメディアを作ろうと思っている。やってみないか」と誘っていただいたんです。正直言って、そのときはマーケティングやオウンドメディアのことなんてほとんど分からなかったんですけど、すぐに「やります」と返事をしました。
当時は相続のメディアを運営しているところが少なかったのもありますが、記事を書きまくっていたらうまくいき、7-8か月目には月間60万PVまで伸びていました。
――資金調達支援やデジタルマーケティング支援など、お客さんへ提供するサービスについてどのような想いを持っていますか?
田原:
お客さんに対して、顧客満足度の高いサービスを提供したいと考えています。顧客満足度の高いサービスってなんだろうと考えると、「自分でも利用したいサービス」だと思うんです。利用したいかどうかは、自分が経験しないとわからないですよね。
なので、まずは自分たちが経験してみます。その経験をお客さんに提供することが多いです。資金調達支援として融資支援をしているので自分たちでも融資を受けていますし、補助金申請支援をしているので自分たちでも補助金を申請しています。
デジタルマーケティング支援事業でも同じです。自分たちでオウンドメディアを運営して、その経験を提供しています。
――競合先はどのような企業になるのでしょうか?
田原:
企業というよりは、税理士事務所が競合に近いです。サービスによりますね。融資の支援であれば、税理士事務所に加えて、行政書士事務所や中小企業診断士の方がサービス提供しているケースもあります。ただ、私たちくらい多くの案件を請け負っているところは多くないです。
私たちの強みは、一気通貫でできることです。融資や補助金申請支援ができるところはありますし、マーケティングができるところもあります。でも、一気通貫でできるところは多くありません。集客力がありますし、それぞれをトップクラスのクオリティで提供できます。
資金調達支援事業がメインの会社でエンジニアは、なにをしているのか?
――起業してから8期目となり、会社の規模も大きくなってきていますね。
田原:
社員数は70人を超えました。アルバイトを含めると5月には95人の規模になる予定です。今期中には100人を超える規模になると思います。
2023年度は、8人が新卒で入社してくれました。そのうちの3人がエンジニアです。
――エンジニアの方も新卒で入社されたんですね。御社は融資支援や補助金申請支援など、資金調達支援事業がメインだと思うのですが、エンジニアの方はどのような業務をおこなうのでしょうか?
田原:
資金調達支援事業がメインですが、最近はビジネス範囲が拡大しています。現在、補助金や融資に関するSaaSを自社で開発中です。くわしくはお話しできないのですが、無料のベータ版まで進んでいて毎月1000人ペースでユーザーが増えているんです。近々プレスリリースを出せると思います。エンジニアには、こうしたサービスに携わってもらいます。
他にもデジタルマーケティング支援事業の一環として、Webサイト制作やお客さんのサイトを管理する業務もあります。どちらかというと、フロントエンドのエンジニアが活躍してくれていますね。
今後はSaaS事業にも力を入れて、契約者数を増やしていきたいと考えています。
(取材/文:川崎博則)